契約
「吉野さん、どうしたの?」
爽やかにグラウンドの中央から、駆け寄ってくる霧山の声が響いた。
心臓が跳ね上がり、全身の血が引いていく。
吉野さんは慌てて顔を伏せた。
顔面蒼白になり、恐怖に満ちた目線だけを俺に向けている。
(やばい……。バレたら本当に終わる……)
俺は脳内で警報が鳴り響く中、咄嗟に制服の上着を脱ぎ捨て、吉野さんの下半身へ覆いかぶせた。
そして、オ○ニーで濡れた脚と足元を隠すように、彼女を抱え込む。
その瞬間——吉野さんの身体が、ビクッと大きく跳ねた。
彼女に触れてる俺の指先に、吉野さんの手が添えられ、力強く握りしめられる。
「……す、すみません。吉野さんがそこの金網にスカートを引っ掛けたらしくて……」
俺が取り繕って言うと、伏せられた彼女の瞳から、ポロポロと大きな涙がこぼれ落ちていく。
(……そんなに、見られるのが怖かったのか?)
俺は怯える彼女を庇うように、一層、強く抱きかかえた。
自分の指先が僅かに震えている。
「あの。……霧山くん、見ないでやってもらえますか? ほら、他の部員も注目しだしてます。……彼女に、恥をかかせないでやってください!」
それを補強するように、吉野さんは弱々しく付け加える。
「甲斐くん。私を……保健室へ連れて行ってください……」
霧山は真剣な顔で頷き、後ろを振り返ると部員たちに向かって叫んだ。
「立ちくらみだそうだ! 救護をお願いした! さぁ、練習再開!」
グラウンドへ向かって大声で指示を出した霧山は、改めてこちらに向き直り、深く頭を下げた。
「甲斐くん、吉野さんを頼みます」
「……わかりました」
俺はこくんと頷き、吉野さんの身体を支えながら立ち上がらせた。
「大丈夫だよ、吉野さん。俺に捕まって……」
「あ……ありがとう、甲斐くん。……霧山くんも……」
霧山は右手を挙げて爽やかに笑うと、グラウンドへと戻っていった。
吉野さんの身体は、俺の腕のなかで小刻みに震えている。
俺は、上着で彼女の濡れた下半身を隠しながら、サッカー部員たちの視線を尻目にゆっくりと歩き出した。
靴箱のある昇降口に入ると、彼女は片腕を靴箱についた。
そして、途端に膝の力を失い、その場に崩れ落ちる。
「吉野さん! 大丈夫!?」
慌てて彼女の目の前に膝をついた。
人目のない暗がりの中、上着の隙間から彼女の体温と、甘く生温かい匂いが立ち上る。
吉野さんは伏せていた顔をゆっくりと上げた。
その瞳には、じわりと涙が浮かんでいる。
「……甲斐くん。ありがとう。……とても良かったわ」
「えっ……?」
震える声で囁かれた言葉に、俺は息を呑んだ。
吉野さんはうっとりとした虚ろな瞳で俺を見つめ、濡れた唇を微かに震わせる。
「私、あなたをトップと認めるわ……だからあなたも、……私をボトムとして愛してください」
彼女は俺の制服の胸元を強く掴み、自らの身体を押し付けてきた――。
ここまでいかがでしょうか?
楽しんでいただけてたら幸いです。
感想や評価などお寄せいただくと、作者の励みになります。
よろしくお願いいたします♡




