密室
「明日香、俺にどうして欲しいの?」
濡れそぼった吉野さんの目が、切なそうに僕を見上げている。
二週間ぶりに二人きりになれた同好会の部室内で、内側から鍵を掛けて、二人で籠城していた。
もう我慢できない吉野さんは、しきりにもぞもぞと下半身をくねらせ、本気で僕を挑発している……。
吉野さんの血が滲んだような艶かしい唇から、甘い吐息が漏れる。
「ひろくんの、好きにして……」
「だめだよ、恥ずかしいからって、逃げてるね。
ちゃんと言葉にしなきゃ。
明日香、言って。
ほら、どうして欲しいの?」
「……いっぱい……触ってほしい」
「ん。ちゃんと言えたね。じゃ、まずは……」
僕はシュルッ……と、ネクタイを外すと、吉野さんに目隠しをした。
わざと少しだけずらして、僕の姿を見えるようにして。
それから壁に掛けてあった、フェイクファーの手錠で椅子の四方に吉野さんの手足を拘束した。
吉野さんは小さく息を吐きながら、既に小刻みに揺れていた。
――期待しているの?
じゃあ、それをいっぱい、裏切らなきゃね。
僕は口の端で笑って、吉野さんの足元に跪いた。
下の制服をたくし上げ、開脚された脚の間に手を差し入れる。
――あっ……はんっ!
不意に、吉野さんの大きな声が漏れた。
「どうしたの。まだ触ってもいないのに……すごいことになってるね」
滴りそうなほど、じゅくじゅくに濡れた下着にふーっと息を吹きかける。
「あっ……」
それだけでブルブルと身震いをした。
「……昨日は、したの?」
「……えっ?」
「毎晩、俺で抜いてるんでしょ。昨日は何回俺で抜いたのかな?」
「……いちどだけ」
「ホントに? 嘘ついても分かるよ。ちゃんと正直に言ってみて」
「ホント!」
爪先で、下着の上からカリカリと擦る。
「やっ! ひろくんっ……そこ、ダメ……っ!」
「あれ。ダメなんて言っていいの? やめちゃうけど」
僕は指を動かさず、ただそこを強く押した。
「んー」
「ここ? 触るのやめる?」
「やだっ……やめないで」
頭を左右に振りながら、下唇を噛んでいる。
思わず吸い付きたくなる。
「フッ。わがままだね……どっち? 続けるの、それとも……」
「……いじわるしないで。お願い……」
「……昨日は、何回オナったの?」
再び、カリカリと爪先で上下にストロークさせながら、左手の指先で太腿を弄った。
「ああっ!」
そしてすぐに手を止める。
「……えっ」
「嘘ついたでしょ」
「嘘じゃない……」
「本当のこと言って。2回?」
「う……ん」
「あれ? 明日香は……きっと2回じゃ足りないよね……3回?」
「よんかい!……です」
答え終わる前に、吉野さんの一番敏感な花芯を、親指と人差し指で強く、摘んだ――。
「んあ……っ、はあ……っ!」
吉野さんは両脚を硬直させ、ギューっと全身に力を込め、激しく身体を震わせると、下着の中に大量の水を迸らせた――。
「声、大きすぎない? 外に聞こえちゃったかも!」
吉野さんはビクンビクンと脚を震わせていた。
「だ、だって……こんなの……!」
二人の熱気が部室の空気を重く湿らせ、理性などとっくに溶け落ちていた。
その時——。
ガンッ!
ガンガンガンガンッ!!
「おい、二人とも中にいるんだろー! 部室の鍵が開かないぞ!」
「開けろよ! 何隠れてんだよー!」
「無駄な抵抗はやめろ!」
「お前たちは完全に包囲されている!」
扉の向こうから、ガタガタと乱暴に揺らす音が響く。
神坂たちが集まってきたらしい。
「っ……、無視しよ……?」
吉野さんが潤んだ目で僕を見つめ、恥ずかしそうに頷く。
「うん……聞こえないふりしよう」
僕たちは外界の喧騒を遮断するように、さらに深く絡み合っていった。
ドンッ!
ドンドンドン!
ドンドンドン!
ドンドンドンドンドンドンドンッ!!
「おい、返事しろっ! 中で何をしておる!」
「もしかしてヤッてんのか!?」
「うらやまけしからん——じゃなくて風紀違反だぞー!」
外からの激しいノックと騒ぎ声はどんどん大きくなり、扉が壊れそうな勢いだ。
しかし、内側で高まる背徳感と熱量は、僕たちの理性を完全に麻痺させていた。
「ひろくん……もっと……強くして……っ!」
「明日香……っ」
外で誰が叫ぼうが、もうどうでもよかった。
僕たちは互いの体温と吐息だけに溺れ、まさにクライマックスを迎えようとしていた。
そのとき——。
「あれー? 入れないのー?」
霧山の声が、背後から降ってきた。
「へ? ……えっ?」
僕たちが驚いて弾かれたように振り返ると、換気用につけられた、小窓から、ヒョイと顔を出した霧山が首を傾げていた。
「鍵が開かないから、こっちから入ったよ!」
「「……はっ!?」」
拘束された吉野さんと僕が固まっていると、霧山は、「お邪魔しまーす」と言いながら、その小さな窓から、器用に室内に上半身をねじ込んできた。
「わあ、すごい熱気! 二人とも汗だくじゃん。何の儀式?」
「き、霧山ぁぁぁーーっ!! 見るな! 入ってくるな!!」
「えっ、なに、僕なにか邪魔しちゃった?」
外の扉を叩く音と、雑技団並の霧山のせいで、濃厚だったはずのエロティックな空気は、一瞬で崩壊したのだった――。




