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校内No.1の清楚な副会長は、放課後だけ僕の足元に跪く。  作者: 毬藻 闇雪
第二章 境界線の欠落、放課後の戯れ
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吐息



 夕闇の迫る教室。


 僕は彼女の、いちばん敏感になった部分に息を吹きかける。

 こんな微かな吐息にさえ、過剰に反応している姿を見るだけで、僕自身も血液が逆流する感覚に囚われた。


 ドーパミンが前シナプスから開口放出され、受容体に結合する。その奇跡的な伝達の流れに、抗うことなくただこの身を任せる。

 それは自然の摂理と同じ。

 上から下へ流れる水のように、吉野さんから僕へと受け継がれる能動的な連鎖反応。


 吉野さんの、荒い息づかい。

 全身の震え。

 頬を伝う汗。

 彼女の身体から立ち昇る、倒錯的な匂い……。


 それらを総合して、僕は愉悦に浸る。


 自らの欲望の、捌け口としての概念。

 吉野さんをその依り代として、静かに落としていく……。


 僕は、彼女の反応を見て、腹から湧き上がる興奮に、ただ流される。

 川中に揺れる葦の茎のように身を任せ、意思なく無心に棚引いているだけ……。

 逆らうことなど、最初から、許されていないのだ。

 

 彼女の声や息遣い、表情や火照り具合などを細かに観察していくことは、重要なファクターだ。

 そうして反応の良かったもの、悪かったものを取捨選択し、次回のプレイに活かす。


 そうして積み上げてきたデータを分析し、細分化したプレイの流れを1つずつファイリングしていく。

 その作業は、常に僕の頭の中で行われている。


 僕は彼女の望むものを、彼女の望む形で与え続けたいと思うようになっていた――。



「……ひろくん、そこにいる? 一人にしないでね……」


 視界を遮られているせいで、わずかな空気の揺れや肌に伝わる温度を手掛かりにして、僕の居場所を探ろうとしているようだった。


「ねぇ。……お願い、返事をして!」

「……」

 消え入りそうな声で、僕に呼び掛ける。


「……こわい……ひろくん……」


「……」

「ねぇ……こっちに来て。私を抱きしめて……お願い」

 猫なで声で、こちらの機嫌を取っているつもりなのだろうが、僕は微動だにせず、吉野さんを至近距離から見下ろしていた。


「んん……っ」

 吉野さんは身体をよじり、声を荒げる。


「ひろくん……触ってよ。熱い……」

 開かれた脚が、だんだん閉じられそうになる。


 しかし、再び元の位置に戻すと、下着を見せつけるように大きく脚を広げた。


 下着の内部が、ひくひくと動いている気がした。

 それを見ながら僕はつい、自分のモノに触れそうになる。


「ひろくん……?」


 心細いのだろう。

 だが、その声を聞いた僕は、彼女をもっと虐めたくなる……。


 上履きを静かに脱ぎ、それを教室の少し遠くへ向かって投げ捨てた。


 キュッと小さくゴムが擦れる音に続き、コトコトッ、と床を転がる音が響いた。


「……はっ」


 吉野さんの身体が硬直した。


 誰かの気配を錯覚し、スカートを握っていた手を弾かれるように下ろし、慌てて下腹部を隠した。

 淫靡な教室で、あられもない姿の自分を、見られるかもしれない恐怖――。


 信頼の元で行われた行為ならば、それもまた魅惑的なスパイスになる。


 吉野さんは、目隠しされた状態で、出入り口の方を向く。

 そして、ようやく声を絞り出した。


「ひろくん……? 誰か、来たの……?」


 僕は身動き一つせず、息を殺して吉野さんの狼狽(うろた)えた姿を見ていた。


「ねぇ、返事して……! ひろくん!?」


 心細さから、指先が惨めに震えている。


 だが、『目隠しを外すな』という僕の命令を守るため、その手を目隠しに伸ばす素振(そぶ)りを繰り返すだけで、決してそれに触れることはなかった。


 ゴクリ、と生唾を飲み込む吉野さんの首筋に、脂汗が滲んでいる。


 僕は忍び足で近寄ると、そっと顔を近付けた。


 濃密な色香に眩(くら)みながらも、ゆっくりと舌先を伸ばし、その汗をじっくりと舐めとった――。


「はぁっ……ん!」


 極限まで張り詰めていた緊張の糸が途切れた吉野さんは、甘く艶めかしい声で啼いた。

 その甘美な声が、僕の脳髄を貫く。


 それは少し塩っぱいような、甘いような……。

 言葉には表せない、官能的な味がした――。



 目隠しを解くと、そこには溶けたように、うつろな瞳があった。


 その表情を見ると、僕の内側から抑えきれない熱が一気に溢れ出す。


「もう。……ひろくんがいなくなったのかと思った……」


 吉野さんは泣きそうな顔で、しがみつくように僕へ抱きついた。


「……目隠し、外さなかったね」

「……うん」

「偉いな、あすは」


 背中を抱き返し、耳元で囁く。

「……ご褒美をあげなきゃね」


 僕は彼女の下着の中央の、真っ直ぐ筋になったところに指を落とし、そしてそのまま爪先で、焦らしながら引っ掻いた――。


 たったそれだけの刺激だったのに……。


「……あ……っ!」


 極限まで張り詰めた緊張と恐怖。


 それらから解放された直後の身体は、あまりにも敏感だった。

 背中を大きく反らせると、息を詰まらせ、一瞬で果ててしまった――。



 荒い息を繰り返し、僕の胸元に顔を埋める。

 そのうち、少しずつ呼吸が整い始めると、上目遣いに僕を見つめてきた。


「ねぇ。……ひろくん」

「……ん?」

「私。……良かった?」

 不安そうに僕の反応をうかがう。


「最高だったよ」


 僕は、吉野さんの耳元に唇を近付け、キスをした。


「ひろくんにお返しをしても、いい?」

 唇をわずかに突き出し、甘えるように言った。


 僕はさっきまで、吉野さんの目隠しに使っていたネクタイを自分の首に締め直すと、首を振った。


「いらないよ。あすのこんな姿を見て、何度もイッてるからね」

「どうやって?」

「脳内射精」

「私が触りたいのに……?」


「ダーメ。……今日は、これをおかずにするからね」


「……っ! もう。……ひろくんの意地悪……」


 顔を真っ赤に染め、照れたように笑った。


 すっかり夜の闇に包まれた教室。

 僕たちは互いの温もりを感じながら、甘い余韻の中に深く沈んでいった。






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