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校内No.1の清楚な副会長は、放課後だけ僕の足元に跪く。  作者: 毬藻 闇雪
第二章 境界線の欠落、放課後の戯れ
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目隠



 茜色のグラデーションが、宵闇へとなだれ込む直前の十分間。


 世界全体が息を呑むような薄暗がりの中で、彼女の発情した呼吸音だけが、教室を満たしていく。


 もう幾度、この濃密な時間を共有しただろう。

 数を重ねるごとに、吉野さんへの想いが募っていく……。

 


 目隠しによって視界を奪われた吉野さんは、自分の指先で手繰り寄せたスカートを、少しだけまくった。

 太ももの延長線上にある、白い下着まで見えている。


「……ちょっと見せてって言ったのに、そんなに見せてくれるの?」


「えっ……」

 吉野さんは、ためらいがちに首を傾げた。


「……ほとんど見えちゃってるよ」

  彼女の顔に、息が掛かるくらいの距離で囁く。


「……うそ」

 怯えた声で反応した吉野さんは、震える指先でスカートを掴んでいた。

 しかし、隠す素振りはない。


「本当だよ。……あすは本当にエッチだね」


 僕は吉野さんを明日香から取って『あす』、吉野さんは僕を浩臣から『ひろくん』と、呼ぶようになっていた。


 吉野さんの望むような、奴隷ネームは未だ付けていない。

 僕自身が、その必要性を感じていなかったからだ。



 吉野さんは、口の端で笑った。

 そして俯きながら、こくんと頷く。


「……そうなの。明日香……すごく、エッチなの……」


 目隠しの上から、上目遣いの吉野さんの表情が頭に浮かぶ。

 僕はその想像の表情だけで、全身に痺れるほどの電流を感じていた。


 女の子と付き合うことよりも、この背徳の時間が、僕の魂に抗うことのできない鎖を、結わえ付けられているようだった。

 拘束されてる訳でもないのに、僕は彼女に軟禁されていたのだ――。


 そして、彼女の望む快楽を提供し続けなければ、吉野さんは、たちまち僕の手の中から、するりと抜け出し、別の誰かの元に行ってしまう……。


 そんな気がしていた――。



 僕が吉野さんの膝に指先を当てると、彼女は大げさなくらい、びくんと、その身を跳ねさせた。


 神経が痛いくらい研ぎ澄まされ、極限まで敏感になった身体が、たった一つの刺激で快感へと導いているのだ。


「ここ……広げて」

「……でも」

「あすを……もっと見たい」


 吉野さんは、唇をぎゅっと噛み、小刻みに震えていた。


「……ひろくん。ちゃんと見てね」


 顔をそっと左に逸らし、頬を赤らめながら、素直にその膝を開いていく――。


 はぁっ、はぁ……。

 真っ赤な唇から漏れ出る熱い吐息。


 吉野さんの匂いを、僕は鼻腔で受け止める。

 肺の奥まで吸い込むと、下半身が次第に熱を帯びていった……。


「あす……よく見えるよ」

「……あんまり見ないでね」

「すごく興奮する」

「……恥ずかしい……。でも……うれしい」


 耳から拾い集める自身の声だけを頼りに、暗闇の中に放り出される。

 それがどれほど心細いものなのか、僕には知る由もない。


 僕を信頼してくれているのだろうか?


 ……不安はずっと拭えないままだ。


 僕なんかに彼女の考えなど理解できる筈もない。

 だが、少なくとも今は、その身を委ね、このま(・)ま(・)ご(・)と(・)ままごとのような遊戯(SM)を、楽しんでくれているようだった。


 音を立てず気配を消し、彼女を怖がらせれば、僕の欲求不満も、少しは解消できるのではないだろうか?


「あと十分もすれば、ここは完全に夜になるね」

 僕は、わざと低い声で語りかけた。


「ひろくん……置いて行かないでね?」

 吉野さんは、何かを察知したのか、震える声を出し、左右に顔を向けながら辺りの様子を伺い始めた。


 僕は一歩、彼女の座る椅子へと近づき、耳元に囁きかける。

「……その脚、君が思ってる以上に震えてるよ」


 僕が再び吉野さんから遠ざかると、床を歩く足音が教室に響いた。


「ひろくん……?」


 吉野さんの弱々しい声に、僕の全身がゾクゾクと身震いをする。


 きっと目隠しのせいで、自分がどんな目で、どんな所から、どんな風に見られているのかを想像しているはずだ。


 五感をフルに働かせ、空気のわずかな振動にすら過剰に反応している。


 まくりあげたスカートを握る手に、ぎゅっと力がこもるのを見た。


 精神的な支配の主導権は、命じる側にあるのか、それともその支配に深く身を委ね、相手の心を揺さぶる側にあるのか……。


 僕は、彼女の得体のしれない欲望の深淵に、未だ近付けてさえいないのを知っていた――。




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