『第八話:町を目指そう。……ところで紅、そのリュックはアイテムボックスなのか?』
本編
「よしっ! お腹もいっぱいになりましたし、サレットさんのお手入れもバッチリです! そろそろ近くの町を目指して出発しましょうかぁ!」
私はレジャーシートをパタパタと畳み、愛用のリュックサックへ仕舞い込んだ。
白ちゃんは大きすぎるTシャツの裾を握りしめ、「町! お店あるかなぁ?」と嬉しそうに私の隣でぴょんぴょん跳ねている。
サレットさんをしっかりと小脇に抱え、意気揚々と歩き出そうとした、その時だった。
『……おい、紅』
抱えられたサレットさんから、重厚で渋い声が投げかけられる。
「はいっ? なんでしょう、サレットさん」
『……前々から疑問に思っていたのだが、その背中の『りゅっく』とやらは、古代の遺物か何かか? もしくは高位の空間拡張魔法……いわゆる『アイテムボックス』の類なのか?』
「えっ……? いえいえ、ごく普通の、どこにでも売ってる高校生用のリュックですよぉ?」
『嘘をつけ!』
サレットさんがバイザーのすき間から紅い光をピカーッと明滅させた。
『先ほどから観察していたが、サレット(我が本体)、手入れ用のクロス、レジャーシート、巨大なお弁当箱、水筒、さらにはその白子蛇に着せたTシャツとブルマー……! 入る体積が明らかに物理法則を無視しておる!』
「あ……」
『それどころか、先ほどから中身がジワジワと増えておる気がするのだが……!?』
「あえへへ……実はですねぇ」
私は足を止め、照れくさそうに頭をかいた。
「自分でもよく分からないんですけど……『あったらいいなぁ』って思いながらリュックの中に手を入れると、たまに現代から持ってきたはずのない物や、新しいお手入れ道具が、スポッと手の中に収まってたりするんですよねぇ」
『無意識に時空を歪めておるのか貴様はーっ!?』
まさかの『自覚なし・自動補充型アイテムボックス』状態だったらしい。
サレットさんは『恐ろしい女だ……』と鉄の音を鳴らして戦慄している。
「あ! お姉ちゃん、何か出てくるの?」
興味津々な白ちゃんが、Tシャツの袖から小さな手を出してリュックの口を覗き込む。
「ふふ、じゃあ試しに……白ちゃんのおやつか、サレットさんを磨く新しいオイルでも出てこないか探してみましょうかぁ!」
私がリュックの中にガサゴソと手を突っ込むと、サレットさんは『頼むから変な爆弾とかを出すなよ……』と不安そうに呟くのだった。
【第八話・完】




