『第七話:まさかの展開。サレットさん、喋るっ……!?』
「サレットさんも、二人とも大切な仲間ですからねっ!」
私がサレットさんを両手で愛おしく抱きかかえ、頬ずりをしていた、その時だった。
『……おい。あまりベタベタ触るな、人間』
「……ふぇ?」
低く、どこか格式高い重厚な重低音が、静かな荒野に響き渡った。
声の出どころは――私の両腕の中に収まっている、漆黒のサレットさんそのものだった。
「ひゃあぁぁぁっ!? サ、サレットさんが……喋りましたぁぁぁっ!?」
あまりの衝撃に、私は思わずサレットさんを落としそうになり、慌てて両手でしっかりと抱き留めた。
「お姉ちゃん、黒いあたま喋った! すごいすごい!」
白ちゃんは大きすぎるTシャツの袖をパタパタさせながら、目を輝かせてサレットさんを指差している。
当のサレットさんは、バイザーのすき間からチラリと紅い光を漏らし、やれやれと言いたげな重厚な溜息(鉄が擦れるような音)を吐き出した。
『……言葉くらい発する。我が主となった貴様があまりに無防備で、しかも我が表面を磨くことばかりに没頭するゆえ、業を煮やして喋るしかなかったのだ』
「え、えへへ……サレットさんの声、渋くて格好いいですぅ……! あ、でも主だなんて、私なんてただの甲冑オタクで……」
『オタクかどうかは知らんが、貴様のその狂気的な手入れと、我が力を引き出す中世剣術の腕前は認めておる。……だがな』
サレットさんのバイザーの光が、チラッと私の隣にいる白ちゃんへと向けられた。
『我を差し置いて、その白子蛇ばかり愛でるのは解せぬ。我が表面を磨く手が止まっておるぞ』
「……サレットさん? それって、もしかして……ヤキモチ、ですかぁ?」
『戯言を! 装備としてのメンテナンス要求だ! さっさとそのネル生地の布で磨くのだ!』
「ふふっ、サレットさん、ツンデレさんですねぇ」
「サレットさん、ボクとお姉ちゃんとなかよくしようね!」
白ちゃんが小さな手でトントンと撫でると、サレットさんは『ぬぅ……』と低い唸り声を上げつつも、決して拒絶はしなかった。
ついに意志を持って喋り始めた『呪いの兜』サレットさん。
そして、半袖ブルマー姿の元・白蛇の少女、白ちゃん。
私の異世界甲冑世直し旅は、なんだか一気に賑やか(賑やかすぎる?)になってきたみたいです!
【第七話・完】、




