『第五話:服がないのは困りましたねっ……。そうだ、私の半袖Tシャツとブルマーを着てくださいっ』
「あらあらっ……男の子……じゃなくて、女の子、でしたかぁ……。それはちょっと、さらに困りましたねっ……」
お弁当箱とお箸を抱えたまま、私はうろうろと視線を泳がせる。
目の前にいるのは、真っ白な髪に、吸い込まれそうなほど綺麗なおめめをした可愛い子。
男の子だと思ってよくよく見てみたら、小さく膨らんだ胸に、綺麗にフラットなお股――ちっちゃくて愛らしい女の子だったのだ。一糸まとわぬすっぽんぽん状態なのは変わらないけれど、同性となればなおさら…。
「そうだっ。リュックの中にっ……」
私はレジャーシートの上にしゃがみ込み、再びおもちゃ箱のような愛用のリュックをガサゴソと漁り始めた。
すると、奥の方から綺麗に畳まれた、懐かしい紺色と白の布地が顔を出した。
「ありましたっ。学校の半袖Tシャツと、ブルマーですぅ。取り敢えず、これを着てください……」
お掃除や部活の着替え用にと、たまたまリュックに入れっぱなしにしていた学校指定の運動着。
私はそれを広げて、女の子の前にそっと差し出した。
女の子は不思議そうに小首を傾げながら、私が手伝ってあげた紺色のブルマーへと恐る恐る小さな足を通していく。そして、白い半袖Tシャツの袖に腕を通すと――。
「わぁ……! 白くて細いお手てと腕が覗いて、とっても可愛いですぅ……!」
女子高生サイズの大きなTシャツなので、裾はすっぽりとブルマーを覆い隠してまるでミニワンピースのような状態。そこから伸びる華奢でちっちゃな白い腕と足の愛くるしさに、私は胸が「キュンッ」とときめいてしまった。
「……? なんだか、おっきい。でも、あったかいや」
女の子はワンピースみたいになったTシャツの裾をきゅっと握りしめ、嬉しそうに白いお顔をほころばせる。
「えへへ、すっごくよく似合ってますよぉ。……あ、自由度の高いスポーツウェアの構造も素晴らしいですけど、やっぱりこの子に15世紀の『子供用ミニチュア儀礼甲冑』を着せたら、一体どれほど芸術的な天使が爆誕してしまうんでしょうかぁ……!」
おっとりモードから、一瞬だけ甲冑オタクの危険な妄想の片鱗が漏れ出す。
その瞬間、レジャーシートの端っこでじっとこちらを睨んでいた漆黒のサレットさんが、ゴトッ……と風もないのに不機嫌そうに一センチほど揺れた。
「ひゃうっ!? ご、ごめんなさいサレットさん、浮気じゃないですよぉ! 私の本命はサレットさんですからね、キュッキュッ」
慌ててサレットさんを拾い上げ、本日何度目か分からないウエスでの磨き上げを開始する私。
それを、大きなTシャツワンピ姿の女の子はぽかんとした目で見つめていた。
「ねぇ、お姉ちゃん。そのおっきくて黒い頭……だれ?」
ついに、女の子の小さな指が、サレットさんを指差した。
【第五話・完】




