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第三話 サブタイトル 『第三話:異世界の荒野でピクニック。お母さんのお弁当は世界一ですっ……!』


「……はふぅ。何だか……お腹が減ってしまいましたっ……」

 無惨に転がる泥棒さんたちと、すっかり綺麗に磨き上げられたサレットさんを交互に見つめながら、私はぽつり、と呟いた。

 極限の集中状態で中世甲冑剣術(二刀流仕様)を叩き込んだせいか、急激に胃袋が悲鳴を上げ始めている。

 そういえば、と私は背負っていたリュックサックを思い出した。

 ガサゴソと中を探ってみると、博物館へ行く前に、お母さんが持たせてくれたお弁当がそのまま残っているのを見つけた。

「あ、ありました……! お母さんのお弁当と水筒ですっ!」

 私は嬉しくなって、リュックの底から丁寧に折りたたまれたレジャーシートを取り出した。

 異世界の、ついさっきまで戦場だったはずの荒野の真ん中に、ぽつんと広げられる緑色のレジャーシート。その上に、私はお行儀よくちょこんと膝を揃えて座る。ブレザーのミニスカートを少しだけ整えて、大好きなサレットさんを自分のすぐ隣に、まるで一緒にピクニックに来たお友達のようにそっと置いた。

 パカッ、とお弁当箱のフタを開ける。

「わぁ〜! 私の大好きな卵焼きと、赤いウインナーだぁっ!」

 ふんわりと香る、優しくて甘い卵の匂い。そして、綺麗にタコさんの形に飾り切りされた、鮮やかな赤いウインナー。

 異世界という見知らぬ土地に放り出されて、少しだけ細くなっていた心が、そのお弁当を見た瞬間にじんわりと温かいもので満たされていく。

 水筒のキャップを開けてコップに注ぐと、中身はこれまた大好物の、ひんやりとしたレモンティーだった。爽やかな柑橘の香りが鼻腔をくすぐる。

「お母さん、ありがとう❤️」

 遠い日本の空に向かって(届くかは分からないけれど)小さく手を合わせてから、私はお箸を手にした。

 まずは大本命の卵焼きをパクリ。お母さんの味だ。甘くて、とっても美味しい。

「んぅ〜、美味しいですぅ……。サレットさん、見てください。私の大好きな赤いウインナーですよぉ。サレットさんも、お直し(戦闘)の後は、お腹が空きませんかぁ……?」

 私はタコさんウインナーを一つお箸でつまみ、隣に静かに佇む黒鉄の兜のバイザー(面頬)の隙間に、ちょんちょんと近づけてみる。

 当然、サレットさんはまだ喋らないし、ウインナーを食べることもできないけれど、木漏れ日を浴びた鈍色のボディが、なんだか少しだけ「呆れている」かのように見えて愛おしい。

 お弁当をもぐもぐと幸せそうに食べる制服姿の私。

 そのすぐ横には、静かに転がる3人の盗賊。

 さらにその遠くの茂みからは、特級暗殺魔導師(勘違い)のあまりにも優雅で奇妙なピクニック風景を前に、完全に声を失ってガタガタと震えている行商人の姿があった。

「やっぱり、お母さんのご飯を食べると元気が湧いてきますねぇ」

 冷たいレモンティーをゴクリと飲み干し、私はふにゃりと微笑んだ。

 お腹もいっぱいになったことだし、サレットさんと私の異世界旅は、ここから本格的に動き出す。

【第三話・完】

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