22.薔薇
ミラ・ブランシェにおいて、薔薇はメガミの娘アディラの花だ。
薔薇を手にこの世界にやって来た彼女は、その色と香りと共に世界に秩序をもたらし、最後に後の夫となる男と共にその種をミラ・ブランシェの国土となる大地に埋めた。
故に薔薇は、祝福の花とされる。
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次男の目を盗んで街に出たら、知らない店があった。
住宅街の端でこじんまりとして可愛らしい、砂糖菓子のお店。
扉にかけられていた看板は色硝子でできていたけれど、店名とかは書いていなかった。
次はいつ街に出られるかわからないし、次男にお土産を買おうとお店に入ったら、銀雪姫が店主らしき女の子とお茶をしていた。
女の子の赤みがかった銀髪は初めて見た。でもその背丈とエプロンは薔薇の砂糖菓子をくれた子と全く同じだったから、すぐに誰かわかった。
砂糖硝子の魔女は、今日は休店日だと言っていた。
色硝子の看板のことを言ったら、魔法で見えなくしていたみたい。道理でラウラが本当に入っていいのかと確認してくると思った。
何をしていたのかと思ったら、新しい服の話をしていたらしい。精霊も魔女も、そんな人間みたいな会話をするのね。
でもどちらも年を取らないから、どういう機会で新調するのかと話していたのだそう。
いつ見ても銀雪姫の服が素朴だと思ったら、彼女が自分で布を買って、自分で縫って仕立てていたのですって。てっきり、魔法で作っているのかと思っていた。
人間だったら流行や成長で職人を呼ぶものだと言ったら、それは王族か貴族か相当裕福な商人だけだと魔女に言われた。
平民は古着を買うか、それに自分で刺繍や飾り布を誂えるくらいなのだとか。一から仕立てるのは、真っ新でなくてはならない白の衣装くらいだなんて、初めて知った。
言われてみれば、城でも新品なのはお父様かわたくしか制服くらい。
帰り際に、魔女はまた薔薇の砂糖菓子をくれた。
前の分と同じで、周囲からの祝福を増幅してくれる効果があると言ってた。
以前は誰がわたくしたちに祝福をかけてくれていたのかと聞いてみたら、魔女は応えなかったけれど銀雪姫があからさまに目を逸らしていた。
今度ドレス職人が来た時に、ついでに銀雪姫の普段着も仕立てて貰おう。
街に出るための服なんて、何百年も生きる彼女にいくらあってもいい。
注文の際、薔薇の刺繍を入れて貰うのも、忘れないようにしないと。




