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番外編①、兄と姉の密談

(注意)番外編には「かつて天才と呼ばれた男と男に拾われた少年の話」のネタバレ含みます。

 ルースって何者? と思った人はぜひこの番外編をご覧ください。


 この番外編に出てくる登場人物ミニまとめ

 アエラス・クレアティオ:公爵、救国者。

 アリア・ノーティカ:グロリアの姉。騎士科。

 ルース・クレアティオ:アエラスの養子。

 フィニス・テンペスタス:国王、アエラスの幼馴染。

 シレンテ・フルヴィウス:学生時代ソムヌスの友人だった。アエラスに懐いていたが、学生時代に絶縁。ソムヌスとも疎遠になる。アエラスとの今の関係は回復。魔法科。

 エリー・フローレス(結婚後はエリー・パラドクスム):アエラス、フィニスの幼馴染。アエラスの初恋の相手。アリアの尊敬する人。

 マラキア・パラドクスム:スペス国の隣国、コスモ国王。エリーの結婚相手。


 61話の密談と、その次の日のお話。


 アエラスは、アリアの指示により、周囲の音を遮断する。

 アリアが恐る恐るといった様子で、口を開いた。


「音を遮断、できていますか?」

「これでできました。それで?」

「グロリアの姉だからって、わざわざ敬語を話さなくてもいいですよ」

「それじゃあ、遠慮無く。さっさと本題に入ってくれる?」


 敬語をすぐにやめたアエラスは、アリアを急かす。頷いた彼女は、真っ直ぐにアエラスを見つめながら口を開いた。


「アエラス先輩。あなたが以前、息子さんと城に来ているところを見ました」

「……それで?」


 自分の息子の話。アエラスは、警戒を強めた。


「あの子って、()()()()()()()()、ですよね」


 なぜ、それを。


 エリー。アエラスの初恋相手。アエラスと国王フィニスの幼なじみであり、()()()()、マラキア・パラドクスムと結婚をした。


 アエラスは是非を言わずに、アリアを見つめた。

 

「君は自分が何を言っているか分かってる?」

「え? あなたの息子の出自を知っていますってことを伝えているのですが」

「それで?」

「これは交渉です。私の頼みをきいてほしいのですが」


 あまりにもあっさりとしている。アエラスは頭を抱えたくなった。

 

「アリア嬢。君は自分のしていることを分かっている? 知らない振りをしていれば良かったのに」

「どういうことです?」


 全く分かっていなさそうなアリアに、アエラスは説明をする。


「いい? 君はその情報を手にしたことで脅す側だと思っているかもしれないけれど、それは違う。それを君が知った。それを私に言った時点で、私は君が秘密を漏らしたくならないように、『その情報を誰かに伝えたい』という気持ちを消すこともできる」


 それくらいの気持ちなんて、アエラスの特殊魔法を使えば、簡単に消すことができる。


「君は脅す側じゃなくなる。むしろ、誰にもその情報を漏らせなくなる。君がもし誰かに伝えていたとしても、同じこと。知っている人間を全員調べ上げて、全員に同様の対処をする」


 アリアが誰かに先に伝えて置くという入念なことをしていたとしても。全員の口を塞いでしまえば、なかったも同然だ。


「君だけがその情報を持っていたとしても、誰にもバラせないとしたら、その価値は全くなくなる」


 誰にも伝える気持ちがわかなければ。その秘密を握っていたとしても、全て無駄となる。


「私を脅すとはそういうことだ」


 いとも簡単に。脅す側はこちらとなる。

 そう言ったアエラスに、アリアはきょとんとした顔を向けた。


「この程度の情報でも、交渉の材料にしては駄目なのですか?」

「……は?」


 頭が真っ白になりかけたアエラスは、瞬きを繰り返した後で、息を吐いた。


「……君は、その情報の重みをどれだけ理解している?」

「え? 重みですか?」

「え、嘘でしょう? この情報の価値を知っているから、これで脅したんじゃないの?」

「脅した、ってさっきからアエラス先輩言っていますけれど、ただ隠しているみたいだから使えるかなーみたいな気持ちですよ」


 アエラスの頭に疑問符が広がる。何か、絶望的にかみ合っていない気がする。なんというか、こんなに認知の差があるものなのか?


「君は、これが戦争の火種になることを、分かっている?」

「なんで、戦争ですか?」


 呆然としたアエラスであったが、息を吐いた。アリア自身がどう認識していたにしろ、情報が漏れていたのは事実。


「まあ、いい。情報が漏れたことを教えてくれた見返りだ。君が私に何をしてほしいか、聞こう」

「本当ですか?」


 対価としては安いくらい。アリアが手にしている情報の価値は重い。国を揺るがしかねないほどには。


「うん。その代わり、遮断は解除させてもらうよ。人に聞かれたくないことを私に頼むわけじゃないでしょう?」

「はい。構いません」


 アエラスはため息をついた。

 ルースの情報がどこから漏れたのか。アエラス、ルース、国王フィニス、シレンテ以外に知っている人がいただろうか。絶対に漏れないはずなのに。誰かに盗み聞きをされた? しかし、人の気配はなかったはず。


 ルースがエリーの息子。その情報は、ルースが12歳になったときくらいまでは伏せておく予定の情報だ。そうしないと、いろいろ計画が狂う。


 仮にアリア以外にも漏れていた場合も考慮し、変更の計画まで作っておくのが無難だろう。今日は徹夜か、と遠い目になりながら、アエラスは魔法を解除した。


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