エピソード10:新人が先輩方に馴染むにはどうしたらいいか / 5
ドキドキして、無言に拍車が掛かる柚木。そんな柚木に、真珠が言う。どこか幼さを感じさせる喋り方で。──あんた、遠慮し過ぎなのよ。無理やり聞こうとしなければ、きのきょのメンバーは自分のこと、話してくれると思う。あたしだって、最初は何にも知らなかったわ。……聞く。それも勇気が必要だ。でも、必要なことかもしれない。
そうすれば、聞ければ、もっと柚木はきのきょの先輩方に近付けるかもしれない。そもそも、真珠は何故、柚木がきのきょの先輩方に近付きたいと思っていることが分かったのだろう。それを真珠に尋ねると、今度は大人っぽい喋り方で言った。──あんたの行動、きのきょに馴染みきれなかった頃のあたしと一緒だから。……なる、ほど。
「……このあと、あんたを連れて行きたいところがあるんだけど」
「狩り?」
「違うわ。まだきのきょのメンバーの誰にも見せてない、あたしがデザインした新しいエリアがあるの」
「……今日、ゆみポさん、僕に優しいね」
いつもの真珠だったら、今頃は暴言を吐いて解散!な気がする。柚木の言葉をスルーして、真珠はエリア<鳥籠>を閉じた。ワープ先は、元の街のワープポイント。そのまま、柚木を連れて、自身の傑作であるエリアにワープしようとして、真珠はキャンセルした。その理由は、ワープエリアの片隅に座り込んだ、巳茶を見つけたから。
真珠は巳茶に近付き、文字でのチャットで巳茶に話しかけた。すると、真珠と柚木に、巳茶からボイスチャットの申請が来た。2人とも許可にした。
桜餅<やぁ、ゆみポちゃん、深雪君。これから狩り?>
ゆみポ<いえ、狩りからの帰りです。巳茶さんは、ここで何を?>
桜餅<あはは、感傷に浸ってた。ここ、hitoさんとkanapoさんに身の上話をした場所なんだ。夕焼けが、綺麗だった>
柚木は真珠の言葉を思い出す。──あんた、遠慮し過ぎなのよ。無理やり聞こうとしなければ、きのきょのメンバーは自分のこと、話してくれると思う。勇気を出せ。今、巳茶さんに話を聞いたら、僕も今夜、自分の話をする。変わりたい。先輩方に近付きたい。僕の居場所の1つ、それがきのきょとヴェロニクスだから。
柚木は切り出した。巳茶さんのこと、聞いてもいいですか……?僕も今夜、きのきょで話そうと思うんです。──巳茶は言った。可愛い後輩の頼みだから、いいよ、と。可愛い後輩。そんな言い方をされたのは、初めてだ。勿論、悪い気はしない。ただ、不思議な感じがした。柚木の現実には「先輩」はいないから。




