エピソード10:新人が先輩方に馴染むにはどうしたらいいか / 4
エリア<鳥籠>に、以前はなかったアイテムが置かれていた。オルゴール。しっかりと音色はエリア内に響いていた。真珠は鳥籠の中に入り、腰を下ろす。オルゴールは鳥籠の中に置かれていた。真珠のキャラクター、ゆみポのアバターが心なしか悲しげに見える。柚木は少し躊躇って、真珠の隣りに座った。
真珠の声は、聴いたことがないほど、弱っていた。さっきまでの威勢は何処へ。疲れ切ったような、普段は隠している、真珠の傷付いた心が柚木という、恐らく、いやきっと、自分を傷付けることはないと分かっている存在に助けを求めていた。塗り薬でもいい、貼り薬でもいい、慰めでもいい。今はただ、真珠は柚木に語りたかった。
ゆみポ<この前さ。あたしが母親を脅したことあったでしょ>
深雪<あった、ね。あの時、大丈夫だったの?>
ゆみポ<全く。母親が父親にチクって精神科に強制連行。強制入院寸前、主治医が適当言って、適当に薬……まぁ、正体はお菓子なんだけど、それ、増やしておしまい>
深雪<災難、だったね……>
柚木は、そんなことしか言えない自分が少し嫌になった。しかし、こうして、真珠が自分のことを話してくれるのは嬉しかった。そして、真珠は再び、語り出した。あたしの親は毒親でさ、と。毒親、か。柚木にも少しだけ縁がある言葉だった。柚木の両親は健在だが、柚木の傍にいることを選ばなかった親だ。その親代わりが、祖母だ。
ゆみポ<放任かと思えば束縛、束縛かと思いきや放任。あたしの人生も、きっとあんたの人生も、めちゃくちゃなんだわ>
深雪<頼れる人、いないの?>
ゆみポ<あたしの居場所は、ネットの中にしかないの。生まれてこの方、頼れるかも、と思ったのは……精神科の主治医だけよ>
悲しい話だ。じゃあ、僕が君の支えになる、なんて言えない。そんな力、柚木には無い。無力感に襲われ、どうしようもない気持ちになる。でも、真珠は言った。──あんたもきのきょのメンバーなんだから、たまには話したらどう?自分のこと。……そんな勇気が出るだろうか。でも、きのきょのメンバーのほとんどは、柚木の「訳」を知らない。
話してみるよ。柚木はそれだけ言って、黙った。そんな柚木のアバターに、真珠のアバターが寄りかかってくる。ゲーム内とはいえ、ドキドキしてしまった。




