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64 収束と別れ 

よろしくお願いします。



 パステルナークが元の王妃の姿に戻っている。

人の姿に戻ったパステルナークと子供達三人が、この国の神殿の森に向かって歩いている。


「ねぇ、お母さん、どうしてエリオットが居ないの?」


 パステルナーク、優しい言葉でイズーに答える。


「エリオットは必ず戻ってきますよ」


 四人はゆっくりと目指すべき森へと、目指すべき故国へと歩いている。


 神殿の森の近くまで来ると、四人の者達が森の前で平伏している姿が見える。

モロア、オルダン、カエルダン、そして三人の前で片膝をついて頭を垂れている者、エリオットである。


 パステルナーク達が近づくと、エリオットが更に頭を深く下げ、目の前まで来るのを待つ。


「エリオット、どうしたのだ?」


 パステルナークが笑いながら尋ねる。


「はい」


「構わぬ、言ってみよ」


「はい、この国に残りたく思います」


 パステルナークは笑みを浮かべながら、次の言葉を待っている。


「それでは」


 暫く間を置いてエリオットが続ける。


「この国の風の者達の術があまりにも未熟」


「それは、廃村になった風の村を再建し、自ら風の者達を育てようということか?」


 パステルナークは尚も笑みを崩さず、優しく問いかけている。


「はい・・・。それに神聖なる白い鹿を育てたく思っております」


「白い鹿に神聖なる力を復活させようと?」


「いいえ、神聖なる力は完全に消えたわけではありません」


「どういうことか?」


「白い鹿の牧場に一頭、まだ力を残している鹿を見つけました。そしてその鹿にマヤコフを感じました」


「それは真か?」


「はい、確かにマヤコフの血を感じました」


 パステルナークは思わず吹き出してしまう。

エリオット、不思議な顔つきをしてパステルナークを見上げる。


「可笑しい。師匠のアラゴンにそっくりだ」


「お許しを」


「何を言っている、許すも許さぬもない。今まで良く働いてくれた。感謝している」


「パステルナーク様」


「言うな。いつも助けてくれた。これからは自分の為に、風の者達を育てながら生きて欲しい」


 エリオットが深く、額が地に着くくらいまで頭を下げる。


「もう良い」


 そして、後方の三人に向かって言う、


「モロア、オルダン、カエルダン。エリオットを頼んだぞ」


 ネルーダの風の者達、何も喋れずに唯、頭を下げることしかできないでいる。


「では、行きましょう。ベディエ、ブランシュ、イズー。エリオットがこの国に留まってくれるなら安心です。心置きなく国へ戻れます。行きますよ」


 カロッサの王妃、王子、王女が森へ入って行く姿をエリオットを含めたネルーダの風の者達が、頭を下げながら最後まで見届けている。

先を行く四人は、振り返らない。

いや、イズーだけは振り返って、エリオットに手を振ったが身動きひとつしないエリオットを見て、諦めるように皆に追いつこうと走り去って行った。


 エリオットはイズーが手を振っていたことを知っている。

が、顔を上げようとはしない。

ただ一言だけ、


「私は忘れない」


そっとエリオットが呟く。


 森の中で先頭を歩いている王妃は笑みを浮かべているが、目が潤んでいる。


「エリオット、お別れだな、今までの事、どんなに感謝してもしきれない」

ありがとうございました。

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