63 真の言葉
よろしくお願いします。
エリオットがクノーと破岩術で妖魔共を消し去っていく間、城内では苦戦が続いている。
イズーによって切り取られた腕も既に再生し、元に戻っている。
「おのれポー、破邪の剣の力を存分に味合わせてやる」
ベディエが咆哮をあげながら剣を振り回す。
むやみやたらに振り回される剣、そこには既に剣術と呼べるような技はない。
「お兄様、落ち着いて」
ブランシュの叫びが王の間で虚しく響く。
イズー、そのやり取りを無視して赤い目を光らせながら両手を翳している。
破岩術、使うごとに威力を増している。
握り締めた拳でポーの動きが止まるが、その後の破岩の念が効かない。
否、効果はあるもののポーの再生能力もまた速度を増している。
何度かのイズーの破岩術の爆発の中、ベディエが絶叫しながら得意の突きを入れようとポーに向かって突進する。
然し、既に剣法を失っている切っ先、ポーにとっては思い通りに操れる子供の遊びのようなもの。
「闇を斬る音は無し」
パステルナークの念通力にベディエ、ハッとして走ることをやめて立ち止まる。
「お若いの? どうした?」
ポーが笑いながら言う。
その言葉を無視して再びパステルナークがベディエに語り掛ける。
「自分の力で無闇に剣を振ってはいけません。自然に任せなさい、自然とは森羅万象、それは神の力、神を味方につけたいのなら心眼を開きなさい。本当に神を見、力を借りようとするなら、心の中に神を見つけなさい」
それに答えてベディエ、
「闇を斬る音は無し」
ベディエの呼吸が静かになっている。
叫ぶことも走ることもしない。
「そうか、観念したか、ならば天の国へ送ってやるまで」
ポーがベディエに一歩踏み出す。
大刀は下段構え、使い手を前にしての余裕の構えである。
そして、ベディエが飛び込んで来たその時に、そのまま振り上げるつもりである。
パステルナークが静かに真の言葉を呟く。
既に時は熟していると判断したパステルナークの最後の願いにも似た真の言葉が、念通力と共に奔り出る。
「音」
その念通力に応じてベディエ、自然と言葉が溢れる。
「剣場也」
動きの止まったベディエを見て、ブランシュが何かを悟ったかのように、クノーを握り締めたまま口の中で囁く。
「有無場多」
その時、イズーの目が赤い色から金色に輝き出す。
そして破岩の構えのままで念じる。
「早破可」
その念の声と共に三人が一斉に動き出す。
ベディエの持った破邪の剣が、今までにないくらいの強さで白色に光り出し、ポーは眩しさのあまり目を逸らしてしまう。
そこへ、ブランシュの握りしめられた一本のクノーがポーの眉間に放たれる。
ベディエ、剣を地面と平行に直線の構えでポーの懐に飛び込むと、胸の剣状突起を骨ごと砕くように剣を差し込む。
白色に輝く破邪の剣が見事に突き刺ささっている。
ベディエは剣をポーの胸から抜き出すと共に後方へ飛び退く。
イズーの目が金色から白色光に変わり雷光のように輝いたか思うと同時に握りしめられた拳が勢いよく開かれた。
ポーの眉間に刺さったクノーが大きく膨張し出し、ベディエが砕いた胸の骨から順に音を立てて身体中の骨が破壊されていく。
イズー、もう一度、今度は大きな声で叫ぶ。
「早破可」
その叫びと共に、身体中の骨が砕けて床に倒れたポーの眉間が、城を揺るがすような音を立てて爆裂する。
ポー、もはや再生できるような肉が無い。
そこへ戦いを終えて戻ってきたエリオットが、王の間を見回して言う。
「終わった・・・、のか?」
ありがとうございました。




