55 僅かな希望
よろしくお願いします。
次に王となる王子は、喪に服するために城から離れた別館で過ごしている。
王子の生活に必要な食事や着替えは、全て側女達が行なっている。
今、城中にはポー、ブランジャン、そして側近達と僅かな兵しか居ない。
側近達には、鱗が生え始めている。
以前は人であった者達、欲が身を滅ぼし、硬い鱗に変化し、妖魔として生まれ変わろうとしている。
イズーが感じた小さな妖力とは、このことであった。
全てが妖魔によって支配され、欲にまみれた者達は、その手先となり、更に下層階級の者達を支配する。
そんな階級世界が、この国を支配し始めた。
近衛兵や親衛隊も王の命令には逆らえない。
妖魔に操られたお飾りの王であっても逆らえない。
忠誠心ではない、逆らえば我が身がどうなるかを、他の兵士達の無惨な死に方を、充分に見てきた。
人では到底敵わない妖魔の力を嫌と言うほど見て来た。
城外の兵士達には見えない醜い姿となった側近達。
そして、ブランジャンという妖魔そのものを間近で見てきている。
城内に囚われ、手足のようにこき使われている近衛兵と親衛隊の兵士達は、妖魔そのものを間近で見てきたのだ。
民達は変わり果てた王に期待などしていなかった。
それよりも次なる国政がどのような方向に向かうかを心配している。
心配してもしょうがない、ただ今日を生きるのみ、既に生きる望みを無くした者達もいる。
城内の廊下では兵士の囁きが聞こえた。
「風の者達がやって来た」
と、
誰も剣は抜かない。
風の者、それは王だけに仕えて来た者達、誰もその姿を見た事もない。
すれ違っても、ただの人でしかない。
更に言えば、この四人は時代を超えてやって来た者達、知る由もない。
然し、城内の兵士達はすぐに分かった。
今となっては特別な用がない限り渡れない桟橋を渡り、城中へ何事もなく入ってきた。
風の者が再びやって来た、それだけは分かる。
パステルナークと四人は廊下を王の間へと少数の近衛兵に見守られながら進んで行く。
ありがとうございました。




