30 噴水広場で
よろしくお願いします。
ブランシュは再びクノーを頭上に放つ。
「イズー、後ろよ」
とブランシュが叫ぶと、上空へ飛んだ筈のクノーがブランシュとイズーの背後に居た妖魔に突き刺さる。
否、妖魔の体を貫通して妖魔の後ろにある石の壁に突き刺さって、やっと動きを止める。
振り返ってブランシュが呟くように言う。
「どう言うこと?」
「クノーにもっと強い念動力を加えてみたの」
「え?」
「やっぱり爆裂は難しいのね」
ブランシュとイズーの会話をよそに頭上から妖魔が落ちてくる。
「ブランシュ!」
とイズーが叫ぶが、
「大丈夫、あの妖魔は死んでるわ」
とブランシュが答える。
イズーの真横に大きな音を立てて妖魔が落ちる。
動きを失った妖魔がイズーの顔を見るような形で横たわっている。
イズーは両目と口を大きく開けて、両手で口を覆いながら
「やめて、気持ち悪い」
更に、その横にほとんど音もないように妖魔を仕留めたエリオットが着地する。
そしてブランシュとエリオットの首根っこを掴み、大地を蹴ってそこから離れる。
エリオットに首根っこを掴まれたままで引きずられるように移動する二人は、エリオットの背後から見る形でエリオットによって落とされた妖魔を見ている。
そして、落とされた妖魔の胸が膨らんでいくと同時に爆裂する。
ブランシュとイズー、エリオットのおかげで爆裂風と血飛沫を受けずに済んだような形だ。
エリオットはベディエの横に二人を下ろすと、少しの間もおかずに、更に前方にいる妖魔へと向かって走る。
その姿は人の目では追い付かない。
念動力を使って走っている。
ベディエの目の前で対峙していた妖魔がエリオットによってまたもや爆裂する。
エリオットのクノーによって爆裂した妖魔の血飛沫の中から、後方にいた妖魔がベディエに襲いかかって来るのが見える。
妖魔達の戦術は殆ど変わっていなかった。
更にはベディエの念通力、実戦を経験するごとに念の力が少しづつではあるが強くなってきている。
血飛沫を越えて飛び込んでくる妖魔は間違いなくベディエを狙っての行動である事を感じる。
ベディエは剣を平衡に保ち、体の状態を下げて、目前の妖魔の脚を狙う。
妖魔の放った大きな鎌のような爪が風を斬る音を立てて空を彷徨う。
その隙を狙ったベディエは、おかげで妖魔の懐近くにまで詰め寄れる。
妖魔の脚を狙って潜り込んだ剣先が上を向くと。
刹那、剣は既に妖魔の顎を捉え、後頭部から剣の先が貫通して切っ先が姿を現している。
そしてベディエは直ぐに後ろを振り返り、今度も剣を水平に保ち、後ろから襲い掛かってきた妖魔に対して平衡に剣を振るが空を斬る。
一歩下がってベディエの剣を避けた妖魔は下から掬い上げるように爪を出す。
剣にベディエの腕の長さを足しても、妖魔の腕とその先の手に付いている大きな爪の方が遥かに長い。
ベディエは堪らず腹部のあたりで、妖魔の爪を剣で受け止める。
そこへブランシュの放ったクノーが妖魔の頭に当たるが刺さらない。
咄嗟の出来事にイズーは念動力を加えられなかったからだ。
妖魔は力の無いクノーに傷ひとつ付いていない、が、気を奪われたようだ。
その虚の時を突いてベディエは剣を大上段に構えなすと、一気に振り下ろす。
キラリと光った剣が小さな虹を描くように妖魔の頭上に落ちると、妖魔は頭から腰にかけて二つに分かれる。
「お母さん、綺麗」
とイズーが言うと、
「何を呑気なこと言ってるのよ!」
と念通力で妖魔が襲いかかって来る気配を感じたブランシュが、クノーを放つ間もなくイズーを抱き締める。
風に靡いたブランシュの髪を掠めるように飛んで来たエリオットのクノーは、ほんの少しブランシュの髪を切っただけで、その向こう側にいる妖魔に突き刺さる。
「血飛沫はもう嫌よ!」
それだけ言って、片手にクノーの入った袋を、もう一方の手はイズーと繋がれ、そのまま妖魔と反対側に走り去る。
クノーの刺さった妖魔の体が膨らみ出し爆裂する。
二人の走った距離は、それほど遠くには行けなかった。
ブランシュとイズーは、またしても妖魔の飛び散った血と肉を浴びてしまう。
クノーを放ったエリオットは、すでにそこから離れ、別の妖魔と対峙している。
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