13 【後日譚】お子ちゃまは元気です 1
私たちは結婚後、田舎暮らしをしながら3人の子どもにも恵まれ幸せに暮らしていたのだけれど、ちょっとした問題が持ち上がっていた。
一番上の娘が10歳になった時、デュークの部下から報告が上がってきたのだ。
「異界の化け物?」
「左様です、我が君。」
「詳しく報告してくれ。」
玉座に座る彼の隣に座る私は、3番目の子どもを膝に抱きながら、眉をひそめた。
この大陸の北端。人の住まない場所に異様な魔力が溜まっている事に気づいた巡察隊が現地に向かってみると、そこに魔力が丸く固まっている壁のようなものが出来ていたという。すぐに私には分かった。それってゲートだ。
でもこの世界はファンタジー、ゲートはSF。ジャンルが違う。どういう事だろう?
「魔力の壁か。」
「はい。その魔力が徐々に高まっており、凄く嫌な感じがします。」
「あなた……」
なんて説明したら良いんだろう。危険だってだけじゃないわ。何が出てくるか分からない。それこそこの世界の危機だ。
世界の危機。私はハッとした。この世界は危機に襲われるはずだった。でもデュークのおかげで、全て回避出来た。爵位は譲ったと言うものの、今でも元気なおじいちゃんは、昨日から魔王城に曾孫と遊びに来ている。矍鑠としたものだ。
その歪みが今回のゲートを創り出したのでは?
そう思うと怖くなる。どうしたらいいんだろう。
「私に任せて!」
元気いっぱいに飛び込んできたのは長女のアメーリアだ。私の魔力を受け継ぎながらも、デュークの力も受け継いだ、ちょっと怖いぐらい強い可愛い娘。
まだ10歳だと言うのに、ヤヌスが毎日彼女に求婚している。ヤヌスにはやんわりと窘めたんだけど、アメーリアは構わないと笑っている。
「年齢差があり過ぎるでしょう?」
「魔族の寿命は300年よ、お母さん。それこそ100年だって問題ないわ。」
「ま、まあ、そうね。」
デュークの血を飲んだ私も今では魔族並みの寿命なのだが、どうしても年齢認識は中々変わらない。
その娘がヤヌスを後ろに従えながら、満面の笑みで任せろと言う。ちょっと嫌な予感しかしない。
「アメーリア。人が住んでいないと言っても、大陸を壊してはいけないのよ。」
「そこまではしないわ。」
「でもね、ゲートから何が出てくるかは分からないわ。あなたでも敵わないかもしれないの。」
「ゲート?」
その場にいた全員の目が私に向く。しまった。言ってしまった。
「マリア、ゲートとは何だ?」
「あ、それは……」
「教えてよ。お母さん。」
私は仕方がないと諦めてゲートの説明をした。
異世界の恐怖。それが皆に伝わるといい。
話を聞いたと言うのに、娘は楽しそうに目を煌めかせた。後ろにいるヤヌスと微笑み合うと、やはり行くと言うのだ。
「危険なの。やめて欲しいわ。」
「面白そうじゃない。最近は力が増えてきたのに、本気でやりあえる相手がいなくて欲求不満になってたの。」
なんだろう。舌なめずりするようなこの子は。
「ヤヌスと一緒に行ってみろ。だがアメーリア、無理は駄目だ。不味いと思ったら、直ぐに俺を呼べ。良いな?」
「はい。お父さん。」
デュークは私の手を握って落ち着かせると、大丈夫だと繰り返した。
「じゃあ、行ってきます。」
それでも心配な私は、2人が姿を消した後も、ずっとそこを見つめ続けていた。
ーーー
不気味な色の魔力渦は、お母さんの言う通り異界と繋がる扉なのだろう。
「ねぇ、ヤヌス。」
私とヤヌスは空中に浮かんでゲートを睨んでいる。さっきから少し雰囲気が変わってきた。ついに何かが出てくるのかもしれない。
「何だ?」
「ドキドキしてる?私はしてる。」
「俺はワクワクだな。」
「ヤヌスらしい。」
私たちはクスクスと笑いあった。私たちは強いものが好き。大好き。多分、今一番強いのはお母さんだ。次がお父さん。でももう少ししたら、私がきっと一番になる。その為にも力を磨きたい。
「出てきたぞ。」
その言葉にゲートを見下ろす。魔族にもいないような醜悪な姿。
「俺が先に行く。様子を見てみよう。」
「うん。」
ヤヌスが軽く魔法を放つ。先頭の化け物が木っ端微塵になった。弱い。ヤヌスは地表に降りて、出てくる化け物を次々に魔法で砕いて行った。
すると、少し間が空いて、今度は一気に大量な化け物が飛び出してきた。おまけに今までのより頑丈だ。
ヤヌスが魔法を強くして応戦するが打ち漏れが出始めた。
私も空中から応戦するが、まだ手応えは物足りない。
「お前たちは何者だ。」
どこから聞こえるのか分からない声が誰何してきた。これがあの化け物の声なのだろうか?




