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 むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

 おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。




「よいしょっと」


 山に入る道の途中で、おじいさんは道の脇の茂みから、昨日のうちに用意しておいた、今日刈り取っていくノルマ分の枝の束を出し、背負子(しょいこ)(くく)り付けると近くの木の根元に立てかけました。


「ふんっ!ふんっ!」


 両肩を回し、腰の得物を確かめると、背負子をそのままに山へ入っていきます。一歩、また一歩と登っていきます。およそ六百メートルをほぼ一直線に力強く。

 やがて頂上にたどり着くと、着ているものの袖をたくし上げてタスキでまとめ、動きやすいように整え、大きく深呼吸。


「今日こそは!」


 おじいさんが立ったそこは切り立った崖の上。下を見下ろし、もう一度深く呼吸をすると腰の得物を抜く。先日、街まで行って買ってきた大太刀だ。念のために握り具合を確かめる。問題ない。今日こそは!


「とぉっ!」


 かけ声と共に倒れるかのようにして飛び降りる。頭から真っ逆さまに。時間にして僅かに数秒で、それ(・・)の姿が見えてきた。


「フン!」


 気合いを込めて右手を振り上げ、斬る!斬る!斬る!


「グゥアオォォォォ……」


 三つの目を持つ巨人が痛みに苦悶の声を上げ、その巨大な腕で握り潰そうとするが、どうにか刀で弾き返し……そこまで。崖の中腹に居座るそれはそこから動かないため、落下していく彼をそれ以上追うことはない。


「くっ……ダメか」


 しかし、手応えはあった。

 刀を鞘に収め、身構えると、ドボンと川にその身が沈む。


「ぶはあっ」


 しばらく流れて緩やかなところで川から上がり、服を乾かしがてら家までの道を歩いて行く。途中で背負子を拾っていけば、ただの柴刈りというアリバイも問題ない。


「必ず……狩る」


 あの山の向こう側が崖になり、あの巨人が棲み着いて五十年。




 あんなものが里に下りてきたら大変なことになると、挑み続けた五十年。




 明日もおじいさんのシヴァ狩りは続く。




 いつか倒す、その日まで。

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