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06

 僕は不覚にも手を握られて、顔が近くなっただけで、ドキリとしてしまった。この子の可愛さに、心が揺れ動いてしまう。僕は少し視線を外して、考える。この強引さに少し、違和感は感じるものの、生きていくために、どこかの組織に所属するのは、良い手なのではと思う。

「少し考える時間を……」

「でしたら、とりあえず、ここではなんですし、王都へ向かいましょう」

 女の子は、両手で握っていたのを、片手だけ放して、歩き始める。手をつないで、僕が少し引っ張られて歩いている形だ。女の子と手をつないで歩くなんて。そんな事を思いながら、僕がもじもじとしながら歩いていると、女の子が笑顔をこちらに向ける。

「そういえば、自己紹介をしていませんでしたね」

「あぁ、そうだね」

「私は、ジョマ・レナソンです」

「僕は峰武屋 緑」

 僕の名前を聞いて、ジョマは不思議そうな顔をする。そういえば日本風の言い方では、わかり辛いかもしれない。

「ごめん、今のは無し……ロク・ホウムヤだよ」

「……ロクですか」

 まだ少し不思議そうな表情のジョマ。最初の名乗りが、聞き慣れていなかったからだろう。それでも大したことではないと思ったのか、すぐに表情は戻る。

「ところでジョマは、王国騎士団の人だよね?」

 さすがにこれで騎士団の人間ではなかったら、おかしな話である。僕の問いかけにジョマは頷く。

「はい、騎士団の人間ですよ」

 制服の様に見えた服装は、王国騎士団の制服。そうなってくると、スライムを倒せなかった事に、やっぱり違和感を感じざる負えない。

「ジョマは……事務的な役職?」

 それなら、スライムが倒せなかった事にも、納得がいく。演技のように見えた事の説明にはならないけど、それはとりあえず置いておくとして。僕はジョマの言葉を待つ。

「事務的? ち、違いますかねぇ……どどど、どういえばいいか、ははは」

 明らかに動揺している。僕は少し探りを入れるべく、問いかける。

「そうなんだ……ところで、騎士団に入るべきって言ったけど、そんな簡単に入れるものなの?」

 話が変わったという事に安心したのか、ジョマの表情から動揺の色が消えた。

「……実はですね、私の部署に空きが出来てしまって、急募中です」

「急募だからといって、すぐ入れるの? テストとかもなく?」

 騎士団という物が、どういう物かわからないけど、口約束程度で入れるような組織なんだろうか。

「すぐ入れますよ! 面倒なテストなんて受けずに!」

 組織として大丈夫なのかな、騎士団って。今のところ、スライムを倒しただけの人間が大活躍できて、入れてくださいと言えば入れる組織だけど。

「そう……なんだ」

 俄然不安を感じてきた。僕はさり気なく、手を離そうとしてみる。でもジョマの手は、がっちりと僕の手を握り締めていた。

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