04
風が吹いていた。全身にその感触が流れていく。背中には草の感触。僕は目を開いた。まずは見えたのは青い空。太陽も、視界の端に見えている。
「異世界……なのかな?」
僕は上半身を起こしながら、呟く。日本とそれほど、変わりなさそうな気がした。気候も少し湿気が少ないくらいで、同じような感じ。
「草原……少なくともコンクリートジャングルじゃないよね」
確かめる様に、僕は口を開く。トラックの前に飛び出してしまい、病院に運ばれたとして、治った、もしくは何ともなかったから、こんな所に放り出す、というのはありえない。あとの可能性は、夢という事だけど、それも否定できるくらい、色々な感触がリアルだった。
僕は視線を下げて、自分の格好を見てみる。簡素な素材だけど、服を着ている。明らかに、日本で着ていた物とは違う。古い感じのする服装だった。
「異世界転生……本当にしたのかな」
少なくとも否定できる材料が、今のところない。モリアテと出会った時の事もはっきりと覚えていて、何となく、夢を見たという感じではなかった。
「とりあえず、歩き回ってみるか」
ここで、ずっと座っていても仕方がない。僕は立ち上がる。
「あれ?」
とてもすんなりと、立ち上がる事ができた。体が軽いと言うか、動きやすいと言うか。運動神経は悪い方ではなかったけど、ここまでよかった訳でもない。僕は一歩踏み出してみると、余計に動きやすさを自覚する。体が軽い。運動神経が向上しているらしかった。
「魔法の才能もくれるとか言ってたよね」
魔法という言葉に、少し気恥ずかしさを覚えつつ、どう試せばいいか思案する。そうしていると魔法の使い方を、なぜか僕は知っていた。昔から知っていた様に、度忘れしていた事を不意に思い出す様に、魔法の使い方を思い出した。
「使ってみるか」
僕がそう思っていると、何かが動くのが見える。半透明な何か。僕はそれに近づいてみる。
「スライムだ」
モンスターの知識も、ちゃんと頭の中にあった。生きていくうえで必要な基礎知識は、ちゃんとあるらしい。モリアテとしては、つまらない死に方は、してほしくないのだろう。
「とりあえず、あれに向かって魔法を使ってみよう」
僕は、右手をスライムの方にかざして、念じる。ただそれだけの事だったのに、手のひらから、細長い弓矢にも見える形をした光が飛び出して、スライムに向かって飛んでいった。スライムは移動をしていたせいで、そのまま真っすぐ飛んでいくと、外れる。そう思うと、光の矢をコントロールする事ができた。スライムに光の矢が当たる。スライムは形を保てなくなったのか、崩壊してしまった。
「やった」
僕はつい声をあげてしまった。なんだかワクワクしてきてしまう。顔がついニヤけてしまった。




