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知識チートで推理無双?!~特殊捜査室事案対応ファイル~  作者: 高岩 唯丑
悪魔のささやき、あるいは女神の……
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09

 僕は少ししてから、店を出て、寄宿舎に向かった。なんとなくジョマと顔を合わせづらくて、時間をずらしたのだ。

「月も普通かぁ」

 歩きながら空を見上げて、月を眺める。僕の記憶にある、日本で見た月と変わらないと思う。二つあったり、色が違ったりしていない。昼には太陽もちゃんとあった。これも、僕の記憶と差はなかった。

「ほぼ日本と同じかな」

 差があるとすれば、魔法がある事と、中世っぽい時代という事と、日本に比べて、湿気が少ないという事。今はたぶん夏の少し手前だけど、嫌な暑さではない。

「カラッとした暑さなのは助かるな」

 エアコンなんて存在しないこの世界で、ジメジメした暑さだったら、挫けてしまう。暑いのは苦手だったから。でもこの感じの暑さなら、なんとなく大丈夫な気がした。

 いろいろ考えながら歩いている間に、寄宿舎までたどりついた。自分の部屋の前に立つと、開かなかったらどうしようかと思いつつ、少し緊張して、ドアノブ付近に魔力を込めた手をかざす。かちゃりという音。ちゃんと開錠されたらしい。

「良かった」

 僕は中に入ると、ドアを閉めて、もう一度、魔力を込めた手をかざす。また鍵の音がして、施錠される。一応、ドアノブを一度回してみて、開かないか確認した。

「よし」

 施錠されている事に安心した僕は、部屋の中に進み入る。間取りはジョマの部屋と同じ。生活に必要な家具も、ちゃんと置いてある。

「あっ……着替え」

 僕は自分の制服に目をやって、着替えた時の事を思い出した。そういえば、もともと着ていた服が、事務所の着替えた部屋に置きっぱなしだった。色々ありすぎて、放置してしまっている。

「まぁいいか」

 本当は良くないけど、ベッドを目の前にして、疲れと眠気が突然、顔を出し始める。もう抗えそうにない。僕は制服のまま、ベッドに倒れ込む。

「今日はもういいや……色々な事は明日に後回し」

 僕は息を大きく吐く。やっと一息つけた。異世界に転生して、ジョマに会って、徹夜して、事件が起こって。

「明日はどうしようか」

 僕はふと捜査の方針を考える。ちょっと忘れていたけど、事件の捜査は全く進んでいない。聞き込みを終えただけ。まだ初動段階。手掛かりも何もない状態だ。殺人なのか事故なのか、それさえ分かっていない。

「燃えた原因って何だろう」

 出来るだけ早く、殺人なのか、事故なのかをハッキリさせたい。人海戦術が使えない以上、両面の捜査は難しい。

「魔法以外に火をつける手段はない、なのに魔力紋がない……どうやって」

 考えがまとまらなくなってきた。意識が遠のいていく。

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