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知識チートで推理無双?!~特殊捜査室事案対応ファイル~  作者: 高岩 唯丑
悪魔のささやき、あるいは女神の……
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08

「話がそれましたね」

 申し訳なさそうにするレストルア。たぶんすごく真面目なんだろうな、と思う。いつも真剣なんだ。その真剣さを自覚していて、それが怖いのかもと、レストルアは、いつも悩んでいるのかもしれない。僕がそんな事を思っていると、レストルアが巻物を取り出して、中をこちらにかざす。

「それは?」

 巻物には、魔法陣が描かれている。僕の疑問に、レストルアは口を開いた。

「これが、給金と寄宿舎の使用権利を付与する魔法陣です……手を当ててください、それですべて完了します」

 なるほど、それは便利だ。いろいろな物にサインして、ハンコを押す、というのが無いらしい。僕は魔法陣に手をかざした。すると、魔法陣が少し光って、すぐに収まる。とりあえず、部屋が二番という情報が、頭の中に流れ込んできただけだ。

「……これだけ?」

 簡単すぎて、拍子抜け。まぁ、面倒はないけど、面倒が無さすぎて、逆に大丈夫か不安になる。僕の様子を見て、レストルアが「これだけです」と少し笑う。

「簡単すぎて、逆に不安になるね」

「そうかもしれませんね」

 書類をしまいながら、レストルアが、心当たりがある様に微笑む。

「私も同じことを、初めての時は思いました」

「……そうなんだ」

 なんだかおかしくなって、僕が笑うと、レストルアも同じように笑った。同じような性格なのかもしれない。

「ロクにぃ、色目ぇ、使わないでぇ、くださいぃ」

 突然、声がして、僕とレストルアはそちらに顔を向ける。突っ伏していたはずのジョマが、顔をあげてこちらを睨んでいた。

「い、色目なんてっ」

 レストルアが顔を赤くして立ち上がり、僕から少し距離をとる。地味に傷つく行動。

「そうだよ、ジョマ、レストルアは仕事できただけで」

「はっ、どうだかっ」

 僕の援護射撃も効果が無さそうに、そう言ったジョマがやさぐれた様子で、お酒をあおる。

「仕事です、もう必要な手続きは終わったので」

 レストルアは、まだ少し顔を赤くしたまま、真面目な顔をして、続ける。

「鍵は、魔力紋を識別して開きます、ドアノブ付近に魔力を込めた手を近づければ、開きます」

 生体認証の様な物らしい。便利なうえに、セキュリティも高い。

「それでは」

 いう事はすべて言い終わったという感じで、レストルアが体を反転させて、歩き出す。僕は「ありがとう」と早口で伝えた。それに対してレストルアは振り向きもせず「仕事ですので」と言い残して、早足で行ってしまった。

「はんっ、発情期の犬が」

 そう乱暴に言葉を零すと、ジョマがお酒をあおりながら、レストルアの背中を見送る。

「そういうのじゃないでしょ、ちょっと雑談しただけで」

 その言葉に反応したジョマが、僕を睨みつける。何か言おうとしたのか、口を少し開けて、すぐ閉じると、鼻を鳴らして、机にお金を乱暴に置くと立ち上がった。

「もう帰ります」

 ジョマはフラフラとした足取りで、店を出て行ってしまった。怒っているのだろうか。よくわからない。

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