↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/77

第45話:王都の屋敷

 王女マリエルを影ながら護衛するため、ミカエル王都に到着。

 住まいを探すために、王都の屋敷街にやってきた。


「おい! そこのお前たち、そんな所で何をしている⁉」


 そんな時、武装した人たちが、こちらに駆けてくる。ミカエル軍の正規の衛兵だ。

 屋敷の前でウロウロしていたボクたち三人を、不審者だと思ったのだろう。


「すみません。実は昔、“ある人”からこの屋敷を褒美として貰って、まだ有効なのか念のために確認にきました」


 逃げたら罪が重くなりそう。逃げ出さず正直に話すことにした。

 万が一に捕まった時は、その時に考えることにする。


「なんだと⁉ この屋敷を褒美に貰っただと⁉」

「この屋敷を管理しているのは、どなた様だと心得ているんだ⁉」

「もしや帝国のスパイか⁉」


 褒美に貰ったと聞いて、門番たちは激怒。槍先を向けてくる。

 帝国はミカエル王国の敵対国。スパイだと思われてしまう。


 これはマズイ。誤解を解かないと。


「スパイではないです。これは当時、褒美に貰った時の書類なんですが」


 先々代の国王から直接貰った書類を、慌てて門番に見せる。

 たぶんボクが追放されたことで、有効は切れているのだろう。

 でもボクの名前も書いてあるので、帝国のスパイじゃないことを証明する。


「なんだ、その書類は……?」

「おい、見てみろ。あの印は……まさか、先々代様の王印じゃないか⁉」


 書類を見て門番たちの態度が急変。誰もが目を見開き驚いている。


「それにコイツの……この者の名前を見てみろ……『親愛なるハルク殿』と書いてあるぞ!」

「ま、まさか、この者は先々代様がいつも言っていた、“あのハルク殿”なのか⁉」


 書類とボクの顔を交互に見比べて、なにか話し合いをしていた。どう対応すればいいか明らかに困っている。


 いったいどうしたんだろう?


 ――――そんな時だった。


「どうした。何かあったのだ?」


 更に別の集団がやってくる。

 隣の屋敷から向かってくるのは、初老の貴族っぽい男性を先頭にした人たち。

 もめていたボクたちのことを、うるさいと注意しにきたのであろうか?


「あれ? ルインズ様?」


 やってきた初老の男性の顔に、ボクは見覚えがあった。数年ぶりに見る人だ。

 でも向こうはボクのことを覚えているかな?


「ん? その声……その顔は、まさかハルクか⁉」


「はい、そうです。ご無沙汰しています、ルインズ様!」


 よかった。向こうもボクのことを覚えている。

 ルインズ様は嬉しそうな表情で、こちらに駆けてきた。


「ハルク君、あの人と知り合いですか?」


「どう見ても貴族じゃが、大丈夫か、小僧?」


 後ろでサラとドルトンさんが心配してくれていた。

 今のボクは追放された身。顔見知りに会うのは、危険だと思っているのだろう。


「たぶん大丈夫です。あの人はルインズ様……先々代のミカエル国王。悪意はないはずです」


「えっ、ハルク君、先々代のミカエル国王と、顔見知りだったんですか⁉」


「うん、そうだよ。ボクがお世話になった人で、父親みたいな存在かな?」


 生まれの里から五歳の時に、ボクはミカエル王城にやってきた。

 当時から採掘と鍛冶仕事は出来ていたけど、精神的には幼い五歳児。

 そのため当時国王だったルインズ様が、ボクのことを父親のように可愛がってくれたのだ。


「なんと、まあ……ミカエル城の地下で採掘していたのは聞いていたが、まさか当時の国王と親密だったとは。相変わらずじゃのう、オヌシは」


「説明足らずで申し訳ないです。あっ、そうだ。褒美のことを聞いてみます」


 ルインズ様が近くまでやってきた。

 周囲の門番たちは、直立不動の姿勢になる。


 ボクはルインズ様と向き合う。まずは挨拶をしてから、褒美の話を聞いてみることにする。


「おお、ハルクよ! 大きくなったのう……」


 ボクたちが前に会ったのは数年前。

 ルインズ様が持病を理由に、王座を引退した時。それ以来は顔を会わせていない。


「はい、お陰様で。ルインズ様もお元気そうで」


「引退はしたが、まだ耄碌(もうろく)する訳には、いかないからな。そういえばハルク、先日は大変辛い想いをさせてしまったな。私の愚息ダラクの愚行のせいで、そなたを追放などさせてしまって……」


 ダラクは先代の国王で、ルインズ様の実の息子だ。

 ボクが追放されたことを親として、先々代として謝罪してくる。


「顔を上げてください、ルインズ様。ボクが追放されたのも、鍛冶師として高いパフォーマンスを発揮できなかったからです。それにダラク様のことも……ご愁傷さまです」


「愚息のことは気にするな。私利私欲に走ったあげく、邪悪な竜を刺激。天罰と思うしかないのだ」


 世間的に先代のミカエル国王ダラクは、邪竜バルドスを激怒させ、焼き殺されたことになっていた。


「おっと、暗い話になってしまったな。ところでハルクは、王都にまた住むことにしたのか?」


「いえ。実は一ヶ月だけ、王都に滞在する用事があって、それで仮の住まいを探そうとおもって、この褒美の書類を思い出したんです」


 ルインズ様に今回の件を説明する。マリエルのことは言わずに、あくまで個人的な理由としておく。


「なるほど、そうか。それならこの屋敷は使うがよい。何しろ名義上は、ハルクの所有物だからのう」


「えっ、すでに名義がボクに⁉ 実はこんな大きな屋敷だと思ってなかったので、何も準備もしていないんです」


 本で見た知識だと、貴族の屋敷に住むには、色々と準備とお金が必要になる。

 一番大変なのは、屋敷を維持するための専属人。

 執事やメイド、庭師、料理人、門番など多くの使用人を雇い、維持する必要があるという。


「はっはっは……その点は心配するな。この屋敷は元私の離れ屋敷。今までの維持と警備は、私の方で行ってきたから、人員は全て私の方で用意しておこう。ハルクは短期滞在の気分で、ここに住むがよい。もちろん名義はハルクのままで大丈夫だ」


「本当ですか⁉ それは助かります!」


 有り難い提案だった。

 屋敷を褒美として貰っても、駆け出し冒険者のボクには、維持費を払う甲斐性はない。


 でも短期滞在で間借りする感じなら、気兼ねなく住むことが出来るのだ。

 名義のことは王都を去る前に、ルインズ様に返還しておこう。こんな大きな屋敷は身分不相応だからね。


「という訳だ、セバス。王都滞在中のハルクの面倒は、オヌシに任せたぞ」

「はい、ご主人様!」


 ルインズ様の背後から、一人の執事が姿を現す。

 二十代半ばくらいのオールバックの青年で、かなり仕事ができる雰囲気だ。


 ルインズ様の説明によると、この執事セバスさんが中心となって、ボクの世話をしてくれるという。

 何から何まで、本当に有り難い配慮だ。


「それではハルク様。屋敷内にご案内いたします」


「ありがとうございます、セバスさん」


 セバスさんの先導で、ボクたち三人は正門をくぐっていく。


 こうして短期間という形だけど、ボクは立派な屋敷に住むことになった。


 ◇


 でも、この時のハルクは知らなかった。

 ルインズ様からセバスさんへ密かな命令が出ていたことを。


「セバスよ。ハルクは絶対にミカエル王国に必要な逸材。この屋敷と王都に永住してもらう策を、講じるのだぞ!」


「はっ、お任せください!」


 ――――ルインズ様が策士の顔で、ハルクのことを逃がさないようにしていたのだ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。