第27話:同志
ハメルーンの第三王女マリエルから、冒険者ギルドを介して手紙を貰った。
指定された時間になったので、ハメルーン城に向かう。
手紙があれば城の中に入れるらしい。
前も通った城の正門に向かう。
「ん?」
正門の近くで不審な人がいた。
ショートカットの青い髪の女の子。
歳はボクと同じくらいで、魔術師のローブを着ている。
「あれ、サラ?」
「えっ⁉ ハ、ハルクさん⁉」
「あっ、やっぱり!」
不審人物は駆け出しの魔術師の少女サラ。
ボクが最近、回復ポーションを買いに行く《マーズナル魔術屋》の孫娘だ。
「あれ? でも、サラ、家から?」
最初の話では彼女は修行中のため、あまり家から出られない身。
外で見かけたのは初めてだった。
「はい、先日、お婆様から許可が出て、最近はたまにポーションの配達の手伝いもしているんです」
「そうだったのか。それは良かったね!」
サラは家の外の世界を見てみたと、最初に言っていた。ようやく夢が叶って、なんかボクまで嬉しくなってしまう。
「今日はもしかして、城に配達を? いかないの?」
「はい、そうなんですけど……緊張して、ここから先に進めなくて、困っていたんです」
「そうだなん。それなら一緒に中に行こうか? ボクも城の中に用事があるんだ」
「えっ? はい、助かります」
旅は道連れ世は情け、という言葉を本で見たことがある。
ボクはサラと一緒に正門で、手紙と許可証を見せ、城の中に入っていく。
「サラはどこに配達? ボクは王宮に行くけど?」
「はい、私も王宮です。美容系のポーションの配達です」
目的地は一緒だった。二人でハメルーン城の敷地内を歩いていく。
「うわぁ……ここがお城の中……」
敷地内を歩きながら、サラは感動していた。
今までは家の二階の窓から、このハメルーン城の外観は見ていたという。
こうして中を歩くことに、彼女は幼い時から憧れていたのだ。
「ハメルーン城は大陸の中だと、そんなに大きくない方かな? 《冒険王リック》っていう本には、もっと大きい城のことが載っているんだ」
「えっ、ハルクさん、《冒険王リック》を読んでいるんですか⁉ 私も大好きなんです!」
「えっ、サラも⁉」
まさかの同じ愛読者に会って、思わず嬉しくなる。
「はい。幼い時から読んで、外の世界に憧れていました……」
サラも家庭の事情で、家から出ることが難しかった。ボクもミスリル鉱山にいたから、外の世界に行けなかった。
こうして考えてみると同じような閉鎖された環境にいたから、《冒険王リック》を愛読していたのかもしれない。
「良かったら今度、《冒険王リック》の“話し会”をしない、サラ?」
「話し会ですか?」
「そう。自分の好きな場面を交互に言ったり、《冒険王リック》の続きを考察したり。ボクはいつも一人でしていたけど、二人の方が、なんか、楽しそうじゃない?」
ボクは幼い時から基本的に一人だった。だから本の内容を話すのは、自分自身しかいなかった。
だから愛読者の仲間を見つけたら、一度は誰かと話し会をしたかったのだ。
「楽しそうですね。はい、もちろんです、ハルクさん」
「それじゃ、決まりだね。あっ、あと、『さん』付けじゃなくてもいいよ。外ではお客さんじゃないから、ボクは」
「分かりました。それなら……ハルク君……」
何故か頬をピンクに染めながら、サラはボクの名前を呼んできた。
きっと家族とお客さん以外の人と、話は機会がなかったから恥ずかしいのであろう。
そんな雑談をしながら歩いている時だった。
「ハルク様!」
ボクの名を呼ぶ少女の声が、前から聞こえてきた。
「あっ、マリエル?」
こっちに向かって駆けてくるのは、銀髪で色白の女の子。
ハメルーンの第三王女のマリエルだ。
王宮の前からボクの姿を発見したのであろう。
満面の笑みて近づいてきた。
「ハルク様、お久しぶりです! 会いたかったです!」
目の前までやってきたマリエルは、やけにテンションが高い。
一度会っただけボクに対して、やけに明るい笑顔を向けてくる。
「む? ハルク様……そちらの青い髪の子は、どちら様ですか?」
だがサラを見て、急に頬を膨らませてしまう。
一体どうしたんだろうか。




