↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/77

第28話:お誘い

 駆け出し魔術師の青髪の少女サラと、ハメルーン城内の王宮にやってきた。

 そんな時、第三王女マリエルがやってくる。


「む? ハルク様……そちらの青い髪の子は、どちら様ですか?」


 ボクの隣にいたサラを見て、マリエルは急に頬を膨らませてしまう。

 どうしたのだろう?


 あっ、そうか。

 もしかしたら城に潜入した不審人物と、サラのことを勘違いしているのかもしれない。


「えーと、この子はサラ。ボクが最近、回復ポーションを買いに行く《マーズナル魔術屋》の孫娘さんだよ」


「えっ……《マーズナル魔術屋》のサラ? もしかして、貴女、“あの”《美容ポーションの匠サラ=ラジュアル》なの⁉」


 サラの名前を聞いて、マリエルはかなり驚いている。

 《美容ポーションの匠サラ=ラジュアル》というのは、どういう意味なんだろう?


「あっ、ハルク様。見苦しいところを見せて、申し訳ありません。実はハメルーンの街で最近、とても話題の魔術師がいるのです。それが《マーズナル魔術屋》のサラ=ラジュアルという名。彼女が作る美容ポーションは、ハメルーンの街の女性を美しくしている!、と、王宮内でも話題なんです!」


 かなり興奮した様子で、マリエルは説明してきた。

 美容のことは分からないけど、この様子だとかなり話題になっているのだろう。


 とりあえずサラ本人に確認をしてみよう。


「もしかしてサラのことなの?」


「はい、ハルク君。私の名前はサラ=ラジュアルですが、そんなことになっているとは、知りませんでした……」


 サラは基本的に自分の店と、裏の家から外出しない。

 美容ポーションの販売も、仲介する商人と祖母の仕事。

 だから街で話題になっていることを、当人のサラは知らなったという。


「そう事情だったの。でも話題になっているということは、やっぱりサラは凄い魔術師だったんだね!」


 最初に彼女がポーションを作っている姿を見て、ボクは感じていた。


 サラ本人は駆け出し魔術師を名乗っているけど、大人の魔術師と同じくらいの能力があることを。

 少なくともミカエル王国の近年のダメな宮廷魔術よりは、よっぽど魔術をしっかり鍛錬してきた少女なのだ。


「い、いえ、ハルク君、誤解です。私は普通の駆け出し魔術師です。美容ポーションが話題になっているのも、たぶん“ハルク君のお蔭”です」


「えっ、ボク? ボク、なんかしたってけ?」


 いきなり名指しされたので、思わず聞き返してしまう。

 自分とサラの接点は、たまに回復ポーションを買いにいくくらい。

 あと最初の時に、ポーション抽出の魔道具を修理したくらいだ。

 特に何もしていないはず。


「やっぱり、自覚がないんですね。実はハルク君が修理してくれた後から、私のポーション抽出器が異常なまでに、高性能なポーションを作り出すようになったんです」


「えっ、あの後から⁉ でも、ボクは何もしていないよ? 普通に修理しただけだよ?」


「はい、たしかにそうです。あの後に私とお婆様でも、抽出器の中を確認してみました。でも外見的な変化や、魔術的な付与の痕跡は、特に発見できませんでした。お婆様が発見できなかったので、それは間違いないと思います」


 サラのお婆ちゃんはハメルーンの街でも、かなりの高位の魔術師だという。

 彼女が見つけられない痕跡は、それほど多くはないらしい。


「それならボクは、やっぱり関係がないようだけど?」


「ここだけの話は、私、小さい時から“見える”んです。ハルク君の修理した抽出器には、“何か”が宿っていました。上手くは説明できませんが……」


「なるほど、そういう力もあるんだね、サラには」


 そういえば老鍛冶師のドルトンさんも、最初に何か言っていたような気がする。鍛冶の“加護”とか、何とか言っていていような。

 もしかしたらサラの見えた“何か”と加護は、関係があるのかもしれない。


「あのー、二人で盛り上がっているところ、恐縮なのですが、ハルク様?」


「あっ、マリエル⁉ ごめんごめん! えーと、手紙をくれたんだよね?」


 王女であるマリエルを、会話の外に置いたままにしていた。

 急いで謝って、話を聞くことにする。


「はい。実は王宮の入り口の、この扉の調子が悪くて、ハルク様に手紙を出したのです!」


「ん? これ? たしかに、蝶番の部分が、摩耗しているね……よし、直ったよ!」


 扉の不調は簡単に修理できた。

 部品を変えるまでもなく、修理器具だけ直せた。


 でも、不思議だ。

 こんな簡単な修理は城の職人さんでも、修理できるはず。

 どうしてマリエルは手紙を出してまで、ボクを呼びだしたのだろう?

 ふと、疑問に思う。


「ありがとうございます。ハルク様! あと、時間があるなら、良かったら私とお茶をしませんか? あっ、《美容ポーションの匠サラ=ラジュアル》もぜひ一緒に! 納品の品の説明も聞きたいです!」


 そんな疑問に答えるかのように、マリエルは強引にお茶会に誘ってきた。


「えっ、お茶会? まぁ、ボクは大丈夫だけど……サラはどうする?」


「お、お茶会……本に書いてあった、あの夢の……はい、喜んでお受けします、マリエル様!」


 お茶会と聞いて、サラの顔が急に明るくなる。

 もしかしたら女子にとって、お茶会は特別な存在なのかもしれない。


「では、こちらの中庭へどうぞ」


 マリエルの案内で王宮の中庭に向かう。

 綺麗な花が沢山ある、優雅な庭園だ。

 白いテーブルと椅子もあり、マリエルのお気に入りの場所だという。


 三人で椅子に座ると、侍女たちがお茶とお菓子を持ってくる。まるで最初から準備していた流れだ。


「それではお茶会を始めましょう、ハルク様、サラ!」


「べつにいいけど、何をすればいいのかな、ボクは?」


「ハルク様の話を聞かせてください! その様子では冒険者として日々を!」


「それ私も聞きたいです、ハルク君!」


「話を? それぐらいなら、別にいいけど。えーと、まずは……」


 それからボクは自分の話を、二人にむかってする。

 冒険者ギルドでのことや、鍛冶工房のことなど。

 あと休日の過ごし方など、なんの変哲もないことを。


「それは凄いですね、ハルク様!」

「ハルク君、それから、どうなったの⁉」


 でも二人とも目を輝かせながら、話を聞いてくれた。

 彼女たちは今まで、自由に外に出かけられなかった身。

 だからボクの何の変哲もない採取の話でも、こうして楽しそうに聞いてくれるのだ。


「それじゃ、次はマリエルとサラの話も、聞かせてよ?」


 ボクの話だけと単調なので、二人話も聞きてみることにした。

 マリエルの王女としての日々の暮らしの話。

 サラの幼い時から魔術師としての、不思議な日々の修行の話。


 互いに別世界の住人だったので、三人で興味津々に話をしていく。


 そんな感じで、あっという間に時間が経っていく。


「マリエル様、そろそろ、お時間です」


 侍女が声をかけてきた。

 王女であるマリエルは、習い事の時間になったのだ。

 今日のお茶会は、ここで解散になる。


「それでは城の正門まで見送りいたします、ハルク様。サラ!」


「あっ、そういえばマリエル様!」


 サラとマリエルは、いつの間にか仲良くなっていた。

 同世代であり、互いに狭い世界で生きてきた似た境遇。

 親近感から、一気に距離が縮まったのだろう。


 三人で話をしながら、城の正門まで歩いていく。


「それではサラ、またお茶会の誘いの手紙を、店に出しますね。ハルク様も修理の依頼を、またギルドに出します」


「うん、分かった」


 もしかしたら今回の修理の依頼も、お茶会に誘う口実だったのかもしれない。

 まぁ、ボクも楽しかったから、あまり深く考えないようにしよう。


 さて。

 マリエルに見送られながら、サラと街に戻るとするか。


 ――――そんな時だった。正門の所が、何やら騒がしい。


「ん? 不審者かな?」


 正門で騒いでいるのは一人の女性と、門番たち。

 女性が何やら騒いでいて、門番に止められている。


 ボクも念のために警戒しながら、正門を通り過ぎていこうとする。


「ん? あの人は?」


 だが不審者の顔を見て、ボクは思わず足を止める。

 何故なら見覚えがある顔だったのだ。


「ララエルさん?」


 揉めていたのは、ミカエル王国の女騎士ララエル。

 先代の時からの忠臣の騎士。

 現国王からボクのことを庇ってくれていた、数少ない優しい一人だ。


 でも今は騎士時代とは、別人のような格好。冒険者のように旅人の服を着ていた。


「なっ⁉ ハ、ハルク⁉ どうして、ここに⁉」


 ボクを見て向こうからも反応もあった。間違いなく本人だ。

 暴れるのを止めて、門番から離れて、こっちに駆けてきた。


「えーと、実は色々あって、ハメルーンに引っ越してきて、今は冒険者をしています。今日は城でお姫様とお茶会をしていて」


「そうだったのか……キミも色々あったのだな。ん? お姫様とお茶会をしていた、だと⁉ それならハメルーン城の者に伝えてくれないか! ミカエル国王が、この国に向かって出兵していると! ミスリル武具の恐ろしい騎士団が、この国を滅ぼそうとしているのだ! 門番に伝えても話を聞いてくれないのだ!」


「えっ……あの国王が、このハメルーンに進軍を⁉」


 こうして国同士の問題に、ボクは巻き込まれることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 蝶番のオチがないのが残念。悪意のあるひとには開けられないとかあったらよかったですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。