表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/77

第24話:荷馬車の走行テスト

 拾ってきた廃棄馬車を修理して、“ハルク式荷馬車(チャリオット)”が完成。

 ドワーフの老鍛冶師ドルトンと一緒に、走行テストすることにした。


 二人でやってきたのは、ハメルーンの街の城壁の外側。

 城壁の上や周囲には、人影はない静かな場所だ。


「それじゃ、出しますね……【収納】!」


 草原の真ん中に“ハルク式荷馬車(チャリオット)”を取り出す。

 車体が陽の光を浴びて、虹色に輝いている。


 うん……我ながらカッコいいぞ。


「それじゃ、御者台に乗ってください、ドルトンさん」


「ああ。だが馬もなく、本当に動くのか?」


 半信半疑なドルトンさんと、ボクは先頭の御者台に乗り込む。

 後ろに荷台には荷物や人を乗せるので、運転手は御者台で操作するのだ。


「ん? その丸い輪っかとレバーは、何かの装置か? 見た感じ、下のタイヤを曲げるような感じじゃが」


 おお、さすがは腕利き鍛冶師のドルトンさん。

 ハンドルやシフトレバーの機能を、ひと目で理解してくれた。これは話が早い。


「はい、そうなんです。このハンドルで左右に曲がります。あと、こっちのシフトレバーで歯車の……ギアの変更をします!」


「なるほど、そういうことか。ところで馬に変わる、肝心の動力は何なのじゃ? もしかしたら風の力か? 砂漠の民が使う“風船”のような感じか?」


「いえ、違います。動力は“ミスリル・モーター”で、エネルギーは魔石です!」


「ミスリル・モーター? 魔石をエネルギーに? どういう意味じゃ?」


 ドルトンさんは首を傾げている。

 ボクも説明は得意ではない。実際に走らせながら説明した方が、理解が早いだろう。


「それは走りながら説明しますね。しっかり掴まってください! モーター起動!」


 魔石とモーターを連結するレバーを回す。


 キュイーーーーーン!


 魔石のエネルギーを受けて、ミスリル・モーターが高速回転。

 不思議な金属音を発生させる。


「な、何じゃ、この足元から聞こえてくる金属音は⁉」


「心配しなくても大丈夫です。ミスリル・モーターのコイルが回転しているだけなので。では発進しますね!」


 ボクはシフトを発進のギアに繋げて、右足のアクセルを踏み込む。


 ギュィイイン……


 モーターの回転を車輪の軸に受けて、“ハルク式荷馬車(チャリオット)”はゆっくりと前進していく。

 おお、動いたぞ。

 ボクは様子を見ながら、更にアクセルを踏み込んでいく。


 ギュィイイン――――!


 更にミスリル・モーターが高速回転。

 いくつものギアを経て、荷馬車の後輪の軸を回転。

 特殊な樹脂とミスリルの混合タイヤが、草原の大地をしっかりと蹴り出していく。


 “ハルク式荷馬車(チャリオット)”は一気に速度を上げる。


「な、な、なんじゃ⁉ この異常なスピードは⁉ 目の前に景色が飛んでいくぞ! 風が台風のように、ぶつかってくるぞ!」


 予想以上の速度が出ていたのだろう。

 ドルトンさんは手すりに掴まりながら、絶叫している。


 でも確かに速度が上がってきたら、この風が厄介だな。

 目にゴミとか虫が入りそうだ。


 あっ、そうだ。

 前にもフードと付けていたんだ。下げよう。


「あら、よっと。これで風は大丈夫ですよ、ドルトンさん」


 ボクは運転しながら、目の前に透明なフードを降ろす。

 先ほどまでのボクたちぶつかってきた風が、急に無くなる。


「た、たしかに……ん? この透明のなんじゃ⁉ ガラスではないよな?」


「はい、これはミスリル金属と水晶で作った、ミスリルガラスです。薄くて頑丈です」


 ミスリルガラスは便利な代物。

 ミスリルの強度を保ちながら、ガラスのように透明。

 鉱山時代に作って収納しておいたのを、念のため車体の上に設置しておいたのだ。


「な、ミスリルのガラスじゃと⁉ そんなモノが作れるのか、オヌシは⁉」


「え? 何か言いましたか? それじゃ、もう少しスピードアップしますね!」


 ドルトンさんは何か叫んでいるが、走行音がうるさくて聞こえ辛い。

 後で聞くことにして、今はスピードの限界に挑戦してみる。


「な、これ以上、更にスピードが上がるのか⁉」


「はい、今は“ギア1”でした。次は“ギア2”にいきます。全部で“ギア10”まで作ったので、限界まで挑戦してみましょう! 鍛冶師として!」


「な、な、んじゃと⁉」


 ドルトンさんは何かを叫んでいるけど、とりあえずギア2にシフトアップ。

 アクセルを踏み込んでいく。


 ギュィイイン――――!


 ミスリル・モーターは更に高回転の金属音を発する。

 比例するように“ハルク式荷馬車(チャリオット)”は加速していく。


「おお、すごい! では次はギア3に挑戦だ!」


 ギュィイイイイン!


 そこから先は速度と、ぶつかる風との戦いだった。

 ミスリル・モーターは、まだ限界に達していない。

 だが正面からぶつかる風が強すぎて、車体がなかなか安定しないのだ。


「うーん、これは困ったぞ。あまり速度が速いと、風が邪魔になるのか。今後の改造の課題だな」


 走行テストをしながら、課題を見つけていく。


 隣ではドルトンさんが静かにしている。

 もしかしたら高速移動を、静かに楽しんでいるのかな。

 少し白目をむいているような気がするが、あまり気にしないでおこう。


 ギュィイイイイン!


 更に高速移動の限界に挑戦していく。

 今のところ衝撃吸収装置によって、高速移動でも車体は安定している。


「ん? でも車体が浮いてくるな? これも今後の改造の課題だな」


 速度が出すぎた弊害だろうか。車体が浮いてしまう時があるのだ。

 今のところはハンドル操作で、何とかカバーしている。

 これも何か対策を講じていかないとな。


 ――――そんな時だった。


 ピキッ、ドーーーン!


 車体が何かにぶっかってしまった……ような気がした。

 でも“ハルク式荷馬車(チャリオット)”は何事もなかったかのように、直進している。



「あれ? 今のは魔物図鑑で見た……“地走竜(アース・ドラゴン)”に似ていたけど……気のせいか。やっぱり」


 地走竜(アース・ドラゴン)”に似た何かに、正面衝突したような気がした。

 でも今はどこにもいない。

 とにかく次からは、前をよく見て気をつけよう。


「ん? あれは?」


 気がつくと、見覚えがある場所に到達していた。

 見えてきたのは、隣国ミカエル王国の王都の城壁。


 走行テストに夢中になって、いつの間にかミカエル王国の国土に入り込んでいたのだ。


「これはマズイな、引き返そう!」


 何しろ今のボクは、ミカエル王国から国外追放された身。

 本当は足を踏み入れてはいけないのだ。


「あら、よっと!」


 ハンドルを左にきって、タイヤを滑らせながら車体をUターンさせる。

 その反動で衝撃波が飛んでいった……ような気がする。


 あくまで気がしただけなのでの、後ろは気にしないでおく。


「よし、戻るか」


 “ハルク式荷馬車(チャリオット)”の問題は何個か見つかった。

 走行テストを終えて、ボクはハメルーンの街に帰還するのであった。


 ◇


 ◇


 ◇


 この日、ハメルーン国とミカエル王国の間の土地で、多くの事件が起きていた。


 ――――『ギュィイイイイン!』という鳴き声の、奇怪な虹色の魔物が、超高速で駆け抜けていた! という謎の目撃情報が多数!


 ――――その魔物が走り去った後には、大地を裂くような(わだち)が残された、という謎の痕跡が!


 ――――“地走竜(アース・ドラゴン)”を含む、無数の危険な魔物の爆散した死骸が、各地で見つかった奇怪な事件が発生!


 ――――ミカエル王国の城壁が“強力な衝撃波”のようなモノによって、切断破壊されていた事件!


 とにかく常識では解決できない、多くの事件が起きていたのだ。


 ◇


「ふう、戻ってきたぞ。ドルトンさん、着きましたよー。ん? 車酔いかな?」


 ハメルーン近郊に戻ってきても、ドルトンさんは白目をむいて瞑想したままだった。

 仕方がないので、前にサラの店で買った《怪我治療ポーション《小》》を飲ませてみる。


 おっ、意識を回復したぞ。良かった。

 あとは少し時間が経てば、ドルトンさんも元気になるだろう。


「ふう……それにしても楽しかったな。改善点を直せたら、またドライブに挑戦してみよう!」


 こうしてボクの休日の趣味に、荷馬車での長距離ドライブが加わるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いやーまさかのネタバレ回とは前回の後書きで完成にオチまでバラしてますやん  ――――そしてドルトンも知らなかった。自分がこれから地獄のジェットコースターを体験することを! ホント敬服します…
[良い点] す、すげぇ 斬新なアイデア前回の後書きで今回作のネタ全部書いてるよこの作者様  ――――そしてドルトンも知らなかった。自分がこれから地獄のジェットコースターを体験することを! [一言]…
[気になる点]  ミスリル・モーターは、まだ限界に達していない。  だが正面からぶつかる風が強すぎて、「車体がなかなか安定しない」のだ。 ・・・  更に高速移動の限界に挑戦していく。  今のところ衝撃…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ