第23話:荷馬車の完成
拾ってきた廃棄馬車を、ドルトン工房で修理することにした。
ミスリル金属で無事に修理は完成
でも肝心の馬は高価で買えないので、ボクは動力源を作ることにした。
今回作るのはミスリル金属で作った、“回転式電動機ミスリル・モーター”だ。
「昔は小さいモーターだったけど、今回は大きめのを作るか」
ミスリル・モーターの原理は、それほど難しくない。
長いミスリスの針金を軸にひたすら巻いていき、その周りに強力な磁石を置く。
あとは針金に“魔石”のエネルギーを流すと、針金を巻いた軸が回転するのだ。
作るコツとして、ミスリス金属自体は磁石に反応しない。
だから他の金属も針金に混合しておく。
こうすると魔石エネルギーの伝導率と磁石の反応力が、何倍にも膨れ上がるのだ。
「ミスリル・モーターのオモチャか。子どもの頃を思い出すな」
この原理は子どもころに、鉱山で仕事しながら発見した。
鉱山で採掘される磁石と金属、あと“害虫”を駆除して採取した魔石。
この三つを組みわせて、小さな自走式のミスリル・モーターのオモチャを製造。
一人で鉱山の中で遊んでいたのだ。
今回、作るのはそれの実用版。
荷馬車の大きさと重量を計算して、適切なミスリル・モーターを作り上げる。
「よし、モーターは出来たぞ。あとは歯車で加速度と、減速を調整できるようにして……よし、できた!」
ミスリル・モーターを内蔵した“ハルク式荷馬車”が完成した。
モーターと動力魔石、稼働器具は、荷台の下に設置。見た目は普通の荷馬車だ。
「まだ、動力や機能で、改造したい部分はあるけど、とりあえず走行試験にしようかな」
でも、街中で荷馬車をテストするのは危ない。
あっ、そうだ。
街路の外に持っていって、試走テストを行うかな。
まだ午後二時くらいだし、時間的にも余裕がある。
そんな時、工房の奥からドルトンさんがやってきた。
「おい、ハルク。昼飯も食わずに大丈夫か……って、何じゃ、こりゃ⁉」
“ハルク式荷馬車”を目にして、ドルトンさんは目を丸くしていた。
ちゃんと説明をしてあげないと。
「これは先ほどの廃棄荷馬車を修理したものです」
「修理じゃと⁉ これは“修理”というよりは、ほとんど新規作成じゃろうが⁉」
「えっ? でも、ちゃんと前の部品は使っていますよ、ここに」
前の荷馬車の部品は、ちゃんと再利用している。
エンブレムを一個、移し替えていたのだ。
「ここに……って、たった、それだけだろう。まぁ、いい。とにかく今度は総ミスリル製の荷馬車を作ったのか。相変わらず、とんでもない加工技術じゃのう。ん? この幌の部分も、まさか⁉」
「はい、ミスリル製です。薄くして布状にしました!」
幌の部分は、今回の修理の中でも、かなりの自信作。
パッと見は普通の布にしか見えない。でも強度はちゃんとミスリルしているのだ。
「ふう。まったく何をどう加工すれば、あの固い金属が、こんな布のようになびくのじゃ……ワシはもう訳が分からんぞ」
「あっはっはっは……面目ないです」
怒られているのか、褒められているのか分からないので、とりあえず笑って誤魔化す。
でもドルトンさんは少年のように目を輝かせながら、“ハルク式荷馬車”を確認している。
きっと同じ鍛冶職人として、こういう金属製の品は好きなのだろう。
あっ、そうだ!
「ドルトンさん。これから少し時間はありますか? 三時間くらい?」
「これからか? ああ、今日の仕事は、もう終わったから大丈夫じゃ。それがどうした?」
「それなら、この“ハルク式荷馬車”の走行テストに付き合ってください!」
「試走テストじゃと? 馬でも借りて、走らせるつもりか? ワシの知り合いに頼めば、二頭くらいなら借りることは出来るぞ?」
「いえ、馬はいりません。とりあえず街の外の草原に行きましょう!」
「馬がいらない⁉ どういうことじゃ⁉ おい、そんな引っ張るな!」
“ハルク式荷馬車”を【収納】の中にしまう。
こうしてボクはドルトンさんと“ハルク式荷馬車”の走行テストをすることにした。
上手くいくかな。
遅いスピードでもいいから、前進してくれたらいいな。
◇
◇
――――だが、この時のハルクは知らなかった。ミスリル・モーターはとんでもない高性能であること!
――――“ハルク式荷馬車”は荒地すら踏破する、とんでもない走行性能を有していることを!
――――そしてドルトンも知らなかった。自分がこれから地獄のジェットコースターを体験することを!




