第3話 外野の無知なる叫びがあまりにもうるさい
こうした先述の流れの中、SNSやらネットニュースのコメント欄やらで、実に騒々しくがなり立てる輩をよく見かけるようになった。
野菜の高騰で文句を言うのは分かる。
消費者側としては、安く手に入れたいと思うのは当然の心理だ。
しかし、以前の『令和の米騒動』の時もそうだったが、己の無知を曝け出し、不平不満を政府にぶつけるしかない者があまりにも多すぎる。
米騒動の時も、自分は物流上の問題で米価が高騰していると述べた。
コメの絶対量はそこまで逼迫していないが、流通を滞らせて一山当てようとしている不埒な業者がいると。
実際、そんなあくどい業者はたくさんいた。
なお、そんな業者も今は大ピンチ。
新米価格が古米価格を下回り、在庫の米が売れなくて頭抱えているそうな。
上手く売り抜けできなかった業者は、在庫の山に圧し潰される事だろう。
これについては「ざまぁwww」としか思わん。
主食である米を儲けの道具にして、それに失敗しただけなのだから。
しばらくは売れないだろうし、そもそも買う人もいないだろう。
せいぜい、寿司屋くらいか。
新米は含水率が高めなので、いつもの調子で米を炊くとベチャつくのだ。
新米の時期は炊飯器で炊く時も、水かさを減らして焚かねばならない。
なので、状態の良い古米であれば、寿司屋は買ってくれる。
シャリはベチャつくとダメなので、含水率の少なめな古米の方が握りやすい。
あとは加工品業者も買ってくれるだろうが、在庫余りの現状を知っているので、買い叩いてくるのは目に見えている。
ご愁傷様と、米の仲買業者に手を合わせておこうか。
そして、昨今のトレンドは、前述した“葉物野菜の高騰”だ。
値段の高騰に文句を言い、政府のせいだ、農協が悪だ、農家がぼろ儲けしている、中間業者が中抜きしているとか、ある事ない事コメント乱発している。
なので、こちらから言える事はただ一つ。
「まだそんなに時間も経ってないけど、9月の天候、忘れたのかい?」
全国規模での長雨と、それに伴う日照不足。
9月の天気図を眺めれば、すぐに察しはつくだろう。
まともな目と頭を持っていればだが。
そして、騒いでる連中ほど、それを見ていないか、忘れている。
今、秋晴れの日差しを浴びていようとも、ほんの一月前はお天道様の顔見せが全然なかった時期である。
その状態で、まともに作物が育つと思っているのか?
工場からポンと湧き出てくるわけではないのだぞ。
工場生産されて安定供給されてる野菜なんて、それこそ“モヤシ”だけだ。
あとは全部、露地栽培か、ハウス栽培かのいずれかだ。
がっつり天候に影響される。
種から育てて収穫できるまでに、一体どれほどの時間がかかると思っているのか。
そうした想像力が無い奴らが、高い高いと叫んでいる。
こっちも出したいけど、出せないんだよ、日照不足で発育悪くて!
品物が高い時は高いなりの、安い時には安いなりの、“理由”というものがある。
今回の野菜の高騰は、日照不足による発育不良と、それに伴う出荷量の低下が原因である。
あと、白菜がメチャクチャ高いのは、気温が高くて結球しにくいからだ。
気温が下がると白菜は玉になっていくのだが、気温が高いと玉にならず、葉が開いたままの状態になる。
天候不良で育ちが悪く、スーパーエルニーニョの影響で気温が高い日が続いており、白菜にとっては良くない環境が重なっている。
葉物野菜でも特に高騰が著しいのはそう言う事情があるからだ。
騒いでいる連中は、店先の値札にのみ視線をやり、その裏にある事情を決して読み取ろうとしない。
何度も言うが、価格の上下には必ず理由がある。
疑問に思ったら、まず調べるなり周囲に聞くなりしてほしい。
高い高いと騒ぐ前に、まず冷静にそうするべきだ。
米騒動の時となんら構図は変わっていない。
こっちも農家としてできる限り情報の発信はしている。
しかし、バカにでも分かるように説明しても、バカはそもそも説明を聞かない。
感情の赴くままに動き、そして、叫ぶ。
中でも質が悪いのは、政権批判の出汁にしてくる連中だ。
政権批判を否定するつもりはないし、好きにすればいいが、農家を出汁にして騒ぐのだけは止めて欲しいものだ。
何度も言うが、野菜の高騰は“天候不良”によるもので、政府の施策云々なんぞ一切関係ない。
農家は苦しんでいるぞ、政府は何をしている、とはよく聞くし、実際厳しい状況なのも間違いない。
そして、こう言う輩は“文句”は言っても、“感謝”は決してしないのだ。
脊髄反射的に他責に走り、政府を批判する。
天候不良は政府が悪いなどという輩までいる。
首相が【天候操作】のスキルでも持っているとでも思っているのか?
実におめでたい連中だ。
それを題材に、ノンフィクション(?)小説の一本でも書いておくべきだろう。
天候云々なんぞ、それこそ中華思想の発想だ。
王が徳を失うと世が乱れ、災害が頻発し、凶作が続くと。
だが、その逆はない。
好天が続き、作物が豊作で、値段が安定したとしても、王徳を讃える事はない。
結局は騒ぎたいだけ、不満のはけ口を求めているだけ。
高騰している時は高い高いを文句を言っても、価格が下がって安定しても感謝を言う者はいない。
政権批判に都合が良い時には利用して、喉元過ぎれば見向きもしない。
こういう輩が農家の一人として、一番腹立たしいと感じる。
葉物野菜は特に悪天候で影響が出やすく、すぐに乱高下してしまう。
農家や農業に関わる者を貶めたり、蔑んだりするのは止めて欲しいものだ。
食べ物は湧いて出てくるのではない。
どこかの誰かが田畑で生産し、それが店先まで運ばれてきている事をまず理解してほしい。
天気が悪ければ、値段が上がるのは当然。
てか、ニュースのコメント見ていて「天候に左右されるようなやり方で作ってるのが悪い!」とか見つけた日にゃ、びっくりしたわ。
じゃあ、お前がやってみろよと。
月の日照時間100時間以下!
連続35日降雨!
安定しない気温!
これで例年通りの収穫できる奴がいたら、間違いなく神だわ。
喜んで頭下げて教えを乞いに行くレベル。
でも、そんな奴、いないんですよ。
ネットで偉そうにご高説垂れてる連中こそ、1カ月でいいから農家で実地研修やらせるべきですわ。
1カ月後に同じセリフが吐けるかどうか。
てか、1週間待たずにギブアップすると思うぞ。
春の訪れと共に始まる過密スケジュール!
夏の炎天下での作業!
梅雨、秋雨での沼地と化した畑!
雪が降ろうがお構いなしの収穫&出荷!
どのシーズンでも過酷ぞ。
耐えられるとは思えないな。
ブルーカラー舐めんなよ。
数多の犠牲の上に農業が成り立っているという事を覚えておいてほしい。
そして、その犠牲を惜しみ、農業を辞めた瞬間に“餓死”という現実が横たわる。
あらゆる品は、自然に湧き出たりはしないのだ。




