第7話 正反対な女性
「〜〜〜、〜〜〜〜」
「〜〜〜〜〜〜!!」
「〜〜、〜〜〜〜!」
「.........ん........?」
ぼんやりとする意識の中、外で鳴り響く騒音を感じ取る。
(うるせぇ〜.....なんの音だよ.....?)
ゆっくりと目を開く。しばらく目を閉じていたからか、外の光がやけに眩しく感じられた。
明順応によって視界が戻り、周囲を確認する。そこにいたのは.....
「だ〜か〜ら〜!いっつも言ってるでしょ!アタシ、召喚制度反対してるって!」
一人の見知った美少女と、一人の知らない美女だった。
一人は、ピンク色の髪をフワフワと浮かせている少女。御織だ。
もう一人は.....
「お前の意思など聞いておらん。その男を寄越せ」
さっき見た男達と同じ軍服を着て、緑色の重そうなストレートの長髪を提げている女性だった。
身長は165くらいはありそうだった。御織と並ぶと体格差がよく分かる。胸も.....御織と比べるのは色々マズイ気がするが、大きかった。
顔つきはとてもキリッとしていた。全体的に顔のパーツが整っており、中でも青緑色の瞳がとても鋭く輝いている。
どこかあどけなさがある御織とはまた異なった美貌の持ち主だった。大人の女性という雰囲気をまとう彼女は、どこか近寄りづらさを感じた。
(.....で、これはどういう状況なんだ?)
寝起きの黎翔は、現状に大いに困惑していた。理由は簡単。
「い・や・だ!森先生こそ早く諦めてよ!」
「それは無理だ。召喚にかけた莫大なコストを回収するには彼を有効活用せねばならん」
「〜〜〜〜〜っ!!森先生のバカ!頑固者!!」
「なんとでも言えばいい。私の考えは変わらん」
件の美少女と美人が、めちゃくちゃ喧嘩していたからだ。しかも御織はかなり怒っている様子で。
(俺が寝てる間になにが.....つか、そもそも俺なんで寝てたんだっけ?)
なぜか首元がズキズキと痛む中、何があったのか思い出す。
(えっと、たしか御織が敵ボコボコにしたんだよな?で、尋問みたいなこと始めて、それで.....あっ、思い出した!後ろから殴られたんだ、俺)
ハッキリしてきた黎翔の意識が、忘れかけていた出来事を思い起こさせる。
思い出してるうちに身体に力が入るようになってきたため、ゆっくり身体を起こす。
「あっ、ボーイ!起きたんだね!」
御織はそれにすぐさま気づき、黎翔のもとへ駆け寄る。
「いやぁ、間に合ってよかったよ。危うく連れ去られちゃうとこだったんだぜ?このアタシに感謝しなさいな!」
尊大な態度で、胸を張ってそう言う。
が.....
(コイツ、さっきクソ焦ってたの知ってるんだよなぁ.....)
黎翔は、意識が戻ってからしばらくの間、ボーッと御織ともう一人の女性の口論を聞いていた。
だから、今はこんな威張った感じだが、内心とても心配してくれていたことを知っていた。
(コイツ、めっちゃ強いっぽいけど....意外と年相応の女の子なのかもな)
ちょっと可愛いかも?と思いつつ、黎翔はニコッと笑い、
「ありがとな。助かったよ、御織」
と心からの感謝を伝える。
「おぉっ!?お、おう!えへへ、まぁアタシにかかりゃ余裕さ!!」
と嬉しそうに笑っていた。
その態度が若干照れ隠しのように見えてしまったのは、黎翔だけの秘密にしようと思った。
「随分仲がいいようだな。御織」
そんな黎翔と御織のやり取りを黙って見ていた緑髪の女性が、二人に近づき話しかける。
「まぁね〜。黎翔はいい子だからね!」
ガシッ
御織は、黎翔の首に右手を回し、肩を組んで身体を近づける。仲の良さをアピールしたかったのだろう。だが.....
「ちょ、痛っ.....」
「あぁ、首か、殴られたの。すまんね」
御織の回した腕がちょうど黎翔がさっき殴られた場所に当たり、反射的に痛がる。それを見て即座に御織も腕を離した。
その瞬間.....黎翔の心拍数が一気に上がる。
(あぶねぇーーーーー!!また飛ぶかと思ったぁぁぁぁ!!)
蒼井黎翔は、女性耐性がない。
それゆえ、御織のような美少女に抱きつかれでもしたら、一秒もすれば意識が飛ぶ可能性があった。現に、一秒にも満たない時間密着しただけで、黎翔の心拍数は異常なほど速くなり、顔も真っ赤になっている。
首の痛みがなかったら、判断が遅れて死んでいただろう。内心でさっき首を殴った敵に感謝を伝えておいた。
「おい、少年」
「ひぁっ!?」
上がりきった心拍数を抑えるために深呼吸していたところ、緑髪の女性に話しかけられた。急に声をかけられたせいで思わず変な反応が漏れる。
目の前に立つ女性は、どこか高圧的だった。御織とは正反対な印象を受ける彼女から、何故に呼ばれたのかと若干身構えてしまう。
「お前に問おう。お前は、この国の平和の為に死ねるか?」
「......!?」
いきなりすぎるその質問は、黎翔を困らせるには十分すぎる威力を持っていた。




