第65話 いざ、ボス戦へ!
「おい黎翔ォ、テメェ本気で言ッてンのかよォ?」
「いくらなんでも私たちだけでB級のボスは苦しいと思うけど……」
紀章と妃の2人は、黎翔を訝しむように見つめながら愚痴る。
「いーや、行けるね。九割九分九厘。俺の直感がそう言ってる」
「これまた大きく出たね……」
対して黎翔は、自信満々な態度を崩すことなく言い切った。
その不敵な笑みと余裕ある態度に、紀章と妃は少しだけ勇気を貰えた気がした。理屈は分からないが、何故か少し前向きになれた。
「ま、黎翔がそこまで言うンなら行けるかァ!」
「だね。私も行ける気がしてきたよ」
笑顔と余裕を取り戻し、黎翔と3人で顔を見合せて笑った。
その3人より更に余裕そうな声が、輪の中に入り込んできた。
「にははっ!話はまとまったみたいだね〜!」
「あぁ。まぁな」
黎翔の後ろで立っていた御織が、いつも通り明るく笑いながら黎翔に声をかけた。
「御織、俺たち3人で『ボス』を殺す。だからお前は……」
「うん、分かってるよ!街の方は任せな!」
「頼んだぜェ、御織ォ」
「なるべく早く終わらせるよ」
「んーにゃ、アタシの心配はご無用!3人は自分が死なないことだけ考えて戦えばいーの!アタシは何時間でも耐えるからね〜!にははっ!」
相も変わらず余裕そうなその少女は、この中で最年少とは思えなかった。最強故の余裕だろうか。
……だからこそ、黎翔は少し気になった。
「御織……お前、大丈夫か?」
「………?大丈夫だよ?」
「そう………か。ならいいんだ」
黎翔の不安気な質問に対し、御織はキョトンとした表情で答えた。
(答える気は無い、か。まぁ……今気にしても仕方ないことではあるしな)
感じた違和感を胸に仕舞い、この話題を終わらせることにした。
「ところで『ボス』ってどこにいるんだ?」
「んーと……マナの流れ的に多分屋上だね。エレベーターは止まってるから、途中までは吹き抜けから行くといいよ。でも20階より上は避難所になってるから、そこからは階段使うしかないね」
「シェルターか……分かった」
そこまで話すと、話を聞いていた紀章と妃が黎翔を呼んできた。
「黎翔ォ、早速行くぞォ」
「準備はいい?」
既に準備万端といった様子の2人を見て、黎翔は笑みを浮かべながら答えた。
「あぁ。当然だ」
その言葉に、紀章と妃も笑みを返す。そして……
「「「さぁ……行くぜ/行くよ/行くぞォ !!!」」」
3人揃って、吹き抜けへと駆け出した。
「黎翔、気をつけてね!無茶しちゃダメだからね〜っ!」
と同時に、御織も黎翔に声をかけた。黎翔は振り返って返答する。
「あぁ!御織も頑張ってくれよ!」
「とーぜん!」
その場に残った御織に軽く手を振り、その場で別れた。
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吹き抜けの前に着くと同時に、3人は足を止めた。
「さァて、どうやッて登るかァ……」
「壁キックでいいだろ?」
「俺とお前はなァ。魔法使いの虹崎の身体能力じゃァ厳しいだろォ」
「うーん、さすがに登り切る自信は無いかな……」
そう悩む2人を見て、黎翔はキョトンとしながら答えた。
「いや、紀章が抱っこして飛べばいいだけだろ」
「は……ッ、はァ!?!?」
何言ってんだ?と言わんばかりの態度を示す黎翔の言葉に、紀章は過剰に驚いていた。
「ばっ、か、おめェー!危ねェーだろォが!落としたらどうすンだァ!?それにィ……」
「それに?」
そこまで言って、紀章は固まった。顔を真っ赤にして、プルプル震えながら。
それを見て、黎翔はすぐに察した。
「はは〜ん、そゆことね。思春期男子か?」
「だッ、黙れェ!!」
ろくに反論出来ない紀章を見て、ニヤニヤと煽る。更に、
「じゃあ俺が抱えて飛んでやろうか?」
と追加で煽る。
「ッ!?それはァ……!!」
「俺の方が『POW』高いし、その方が安全かもな。本当は紀章にやってほしいんだけど、お前がどーしても嫌って言うなら仕方ねぇなぁ〜〜〜」
「くっ……そ、てめェ……!!」
そこまで煽ると、流石に紀章も吹っ切れたようで、
「だァー!!わァッたよォ、俺が虹崎を抱えていってやらァ!!」
「ふふっ、ありがとう、紀章くん」
「それでいいんだよ、それで」
諦めて妃を抱えることに決定した。
「い、行くぞ虹崎……」
「うん。大事に抱えてね?」
「当たり前だァ!」
ぎこちない動作で妃をお姫様抱っこする紀章を横目に、黎翔は吹き抜けから上を見上げた。
(20階……流石に遠いな。その上には25階までシェルターがあって、多分上層にいた人達が避難してるんだろう。で、更にその上───屋上に、『ボス』がいるのか)
無機質な天井を見つめ、黎翔は両腕に力を入れた。
(勝つ。俺たちで、必ず!)
強い決意を抱き、吹き抜けのガラス柵の上に飛び乗った。そして、つま先で厚さ10mm程のガラスの上に立ち、平然とバランスを取る。
「黎翔ォ、準備出来たぜェ」
「了解」
すると、すぐに妃を抱えた紀章もガラス柵の上に乗ってきた。
準備は整ったようだ。
「行くぞォ!」
「あぁ!」
そう叫ぶと同時に、両膝を曲げてつま先に力を込める。そして───
跳躍する。
足元で鳴ったバキンという音を置き去りにして、2人は一気に13階程の高さまで跳んだ。
13階の床部分までたどり着くと同時に、今度は身体の向きを反転させる。そして、床部分を両足で蹴ることで再び跳躍した。
某ゲームの壁キックのように、壁を蹴っては高度を上げ、蹴っては高度を上げていく。一度も止まることなく、流れるように。
1階飛ばしで跳躍した黎翔は、その勢いを崩すことなく軽やかに跳ぶ。それも、手を使うことなく。
紀章も、同様に1階飛ばしで2階分ずつ跳んでいた。のだが、その動きは黎翔ほど精彩ではなかった。
「……っ!すまねェ黎翔ォ、俺はちょっと速度落とすぜェ!」
「OK、先行ってる」
紀章は、妃を抱えたまま今まで跳んでいた。その事実が到底理解し難い所業なのだが……
流石に途中で限界が来たらしく、17階の壁を蹴る力を少し弱めた。1階ずつ登るつもりのようだ。
紀章が勢いを落とした隙に、黎翔はそのまま17階の壁を思いきり蹴った。そして……
一気に、20階まで登りきってしまった。
(ふぅ……俺の身体、どんどん人間離れしてるなぁ……)
自分でも不思議な感覚を味わいつつ、辺りを見渡す。
20階はどうやら飲食店街だったらしく、和洋折衷様々な店舗が並んでいた。
だが、そこに活気は無かった。人の気配は無く、明かりも落ち、待機用と思しき椅子もバラバラに倒れ、買い物袋が散乱していた。
(急いで逃げたからか?或いは───)
そこまで考えていた時、
「黎翔ォ!ちょっとだけ待ッてろォ!」
という声が下の階から聞こえた。
吹き抜けから身を乗り出して下を見ると、紀章が妃をおんぶしていた。お姫様抱っこは流石に不便だったらしい。
さっきより身軽そうな紀章は、17階から1階ずつ跳んだ。その動きはやはり軽快だった。
(あっちも大丈夫そうだな。さて、上に向かう階段でも探しますかね)
ぐいっと背伸びしつつ、次の行動を始めようとした。
───その瞬間だった。
「ッ!?黎翔くん、後ろ!!」
下にいた妃から、逼迫した声が聞こえた。
「え───」
反射的に振り返ろうとする直前、黎翔はようやく気づいた。
自身の後ろから、巨大な影が迫っていること。
その影の一部は、ゴツゴツしていて大きいこと。
凶悪なる剛腕が───振り下ろされんとしていること。
「『魔力弾』ォ!!」
パシュッ、と静かに放たれた一条の光線が、黎翔の頭上を通り抜けた。
そして───後ろから黎翔を殺そうとしていたモンスターを、射抜いた。
「ギッ……」
短い悲鳴を上げながら、モンスターは後ろに倒れた。まさに一撃必殺である。
「大丈夫、黎翔くん!?」
「あっ、あぁ。悪ぃ」
紀章に背負われて20階まで来た妃は、黎翔のもとに駆け寄ってきた。心配そうにしていたが、黎翔の無傷を確認してほっと一息ついていた。
「ッたく、油断すんじゃねェーよォ。背中の傷は戦士の恥だぜェ?」
対して紀章は、ニヤリと笑いながらそう言った。その様子は、少しだけ得意気だった。
「その名言、1000年も生きてんのか……助かったよ、ありがとう」
「クククッ、いいッてことよォ!」
「だから笑い方統一し……え、次もしかして『コココ』?」
「なんの話か知らないけど、行くよ2人とも」
くだらない会話をしている2人を置いて、妃は上の階へ繋がる非常階段の扉を開けた。
「あ、おう。そうだな」
「んじゃァ行くかァ」
妃に続いて、2人も非常階段へと向かった。
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蒼井黎翔 ID: 137438691328
Lv.21
POW:1757+50 DEX:1532 DEF:1168
INT:0 MP:0 RES:0 Total:4458
武器:猟刃……マナ属性 特殊効果なし
職業:狩猟者 階級:特異
スキル:『狩人の心得』パッシブ
『狩猟者の勘』アクティブ化 2517s
『野性』パッシブ
『獣殺一閃』発動可能
ステータス補正:物理特化
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