第32話 痛恨の一撃
注:今話はグロ要素が含まれています。苦手な方と15歳未満の方はそっとお閉じ下さい。
「いっっっっっっっ.........てええぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜っ!!」
モンスターの顎に渾身のアッパーを撃ち込んだ瞬間、黎翔の左腕に強烈な衝撃が走る。
モンスターを殴った瞬間の感覚は、最悪そのものだった。
硬い皮膚はザラザラしており、爬虫類のようだった。鉄かと思うほど硬く.....それでいて脆かった。貫いた瞬間、その破片がいくつも手に突き刺さる感触があった。
弱点とはいえかなりの硬度を誇る顎を素手で殴ったせいで、指の皮膚は全部破けて肉が見えていた。そこに砕けた破片がいくつも突き刺さり、ボタボタと血が滴っている。
更に、その衝撃は腕全体に及び、骨の方まで痛みがきていた。指の骨に関しては、折れているかもしれない。
また、表皮は硬い割に中身はそこまで硬くなく、鱗のような皮膚を突破した途端、虫を潰したかのような『プチッ』という感覚と同時に、そのまま頭全部が潰れていた。気色悪いの一言に尽きる感覚だった。
その上、頭が砕け散ったモンスターの首から、大量の紫色の液体が吹き出し黎翔にかかった。
生温かいそれは、恐らく血液のようなものだろうと推察できた。触ってもなんの害も無いようだったが、気分は最悪の一言に尽きた。
(クッソ痛ぇし気持ち悪ぃ.....けど.....!!)
素手で、しかも一撃でモンスターを屠ることが出来た───その事実に、黎翔は希望を抱く。
魔法が無くても意外といけるんじゃ───と。
そうして、黎翔はふと油断してしまった。
「グギャアアァァァッ!!」
まだもう一匹、すぐ側にモンスターがいるのに。
「っ!?あ、しまっ───」
黎翔が気づいた時には、既にモンスターの腕は目の前に迫っていた。間もなく、強力な一撃が黎翔を粉々に消し飛ばすであろう、と推察できた。
刹那───
「っ!!」
黎翔は、完全に反射で右腕を目の前に伸ばした。
そこには、明確な攻撃の意志も、攻撃を防御するつもりもない。本当に何も考えず、ただ反射で伸ばしただけだった。
なのに、その右拳は───
グシャッ!!
「グギャッ!?」
「え??」
まっすぐに、モンスターの腹を貫いてしまった。
モンスターは口から紫色の液体を吐き出し、そのままだらんと脱力する。
(え、え?なんで???)
あまりにも呆気なく突き刺さった右腕を、呆然と眺める。自分でも何が起こったのか分からないまま。
(よく分からんけど.....倒した、んだよな?てか気持ち悪っ!串刺しじゃん!!)
冷静になってはじめて、自分の腕に生物が突き刺さっている異様な光景にドン引きした。そのまま無理やり引き抜く。
ドサッ、と音を立てて地面に落下する。これまた完全に死んでいるようだった。
その死体を見ると、黎翔が貫いた腹の周辺が赤くなっていることに気づいた。
それは血ではない。なぜなら、モンスターの血液(かどうかも分からないが)は紫色のようだからだ。
つまり、この赤い部分は───このモンスターの弱点のようだった。
(つまり、偶然弱点を貫いたってことか?ラッキーすぎるな、俺.....)
若干の呆れを感じるほどの幸運に救われ、なんとも言えない気分になった。
(腹は結構柔らかかったな。右手は無事っぽい)
腹を貫く感覚は、さっきより遥かにマシだった。人間より少し分厚い程度の皮膚を貫き、内臓を潰す感覚は最悪だったが、顔より遥かにマシだった。
(うぇ、ベトベト.....)
顔に飛び散った紫色の液体を腕で拭う。
(さて.....と。残るは.....)
黎翔は、少し離れた場所に立っている、残った一匹のモンスター───さっき人を喰っていた個体の方を見る。
「ギャギャ.....」
そのモンスターは、今のを見てなお笑っているようだった。涎を垂らしながら、馬鹿にするような目でこちらを見ている。
(.....なんだ、アイツ?今の2匹より不気味な感じがする......)
直感的に、目の前のモンスターに対して恐怖に近い感情を覚える。
明らかに今の2体より強い。それは、疑う余地がなかった。
なぜなら.....
(.....アイツだけ、ステータスが見える)
目の前のモンスターの頭の上に、紫色のパネルが浮いているのが見えた。
それは黎翔の『ステータスウィンドウ』に近しい見た目だが、青ではなく禍々しい紫。書いてある内容も、IDや職業は無く、ステータスの数値のみが記されていた。
モンスターのだからか?と黎翔は考察しつつ、ステータスの数値を見る。
そのモンスターのステータスは.....
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POW:2412 DEX:1258 DEF:1765
HP:2006 RES:-2806 INT:0 total.4635
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軒並み、黎翔よりも高かった。
(めちゃくちゃ格上.....!『狩人の心得』の10倍効果はとりあえずナシか。弱点は.....)
敵の身体を、くまなく観察する。すると.....
(.....目、か?)
目の部分が、僅かに赤くなっているように見えた。
が、かなり小さい上色も薄い。今までより狙うのが難しく、効果もあまり期待できそうになかった。
(でも、今までの感じからして当てれば勝てそうだよな)
そう考え、黎翔はその場で構える。
「...............っ」
今回も、相手の出方を待つことにした。向こうが攻めてくるところをカウンターで返すつもりだ。
だが......
「グギャギャッ!」
モンスターは、笑うだけで攻めてこない。それどころか.....
「グギギ......」
右手を前に突き出し、『かかってこい』と言わんばかりに挑発してきた。
(知能無いんじゃないのか.....?)
と疑問に思いつつも、
(どのみち待ってても攻めてきてはくれなさそうだな)
とすぐに思考を切替える。そして.....
「行くぞォ!」
何も考えず、モンスターの方へ走り出す。
(距離詰めて、目潰して.....一撃で殺せば何も怖くねぇ!)
モンスターとの距離は50mほど。その間向こうの攻撃に気をつければ勝てる。
そう確信し、黎翔は一気にモンスターに突っ込んだ。
(───ん?なんか足早くね?俺)
その時、なんとなく普段より速く走っている感覚があった。が、
(今は後回しだ。とにかくヤツに全神経を注ぐ!)
すぐに思考を切り替える。
驚くほどの速度で走った黎翔は、50mを2秒もかからず詰めてしまう。そして.....
「オラアアァァァァッ!!」
全力で、無事な右腕を右目に向け振り下ろす。
「ギャギャッ!!」
モンスターは完全に舐めているようで、攻撃が当たる寸前になっても笑ったまま突っ立っていた。
(勝った!)
そう確信した瞬間だった。
バキィ!!
黎翔の渾身の右拳は、モンスターの右目に直撃し───
「っぐああぁぁぁぁっ!?」
殴った黎翔の右手の方が、とてつもない音と共に破壊された。
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蒼井黎翔 ID: 137438691328
Lv.7
POW:757 DEX:632 DEF:468
INT:0 MP:0 RES:0 Total:1858
職業:狩猟者 階級:特異
スキル:『狩人の心得』パッシブ
『狩猟者の勘』アクティブ化 3210s
ステータス補正:物理特化
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