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黒流星のハンター〜魔法がありふれた世界で、召喚者は石を投げる〜  作者: 鮫野鯨
第一章 召喚、異世界最初の日
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第3話 天国と地獄

「いや〜、たまにやってんだよね、あのタヌキ共。別世界からの召喚」

「あぁ、そうなんですか.....」

「そうそう!前の人は確か〜───」


 絶望の底に叩き落とされて上の空の黎翔(れいと)に対し、御織(みお)はペラペラと一人で喋りつづける。


(1000年後の世界.....奴隷.....ハ、ハハ.....)


 口をパクパクさせながら呆然とする黎翔の姿に御織が気づいたのは、結局それから2分程話し続けた後だった。


「キミぃ、なんでそんな変な顔してるの?魚?」

「魚じゃないですよ、奴隷ですよ。魚以下です、ハハハ」

「ちょ、どうしたの?なんか怖いんだけど」


 座り込んで呆然と呟く黎翔にドン引きした御織は、思わず少し距離を取った。

 が、その後自身の過ちにようやく気づく。


「あぁ!そういや言い忘れてたけど、キミはもう奴隷じゃないよ。隷属契約外したから」

「ハハ───はいぃ!?」


 上の空だった黎翔は、御織の言葉に瞬時に反応する。


「奴隷じゃない!?俺、奴隷じゃないんですか!?」

「ビックリしたなぁ!急に大声出して!」

「あ、すまん」


 反射で大声を出してしまったことを反省しつつ、御織の返事を待つ。


「まぁ許そうではないか。で、話戻すけど.....キミの言う通り、キミはもう奴隷じゃないよ。アタシがさっきキミのおてて握ったのは隷属契約外すためだったのさ!ホントはキミの素性確かめるのも兼ねてたんだがね!」


 御織は、ふんぞり返りながら「ドヤァ!」という効果音が聞こえそうなほどのドヤ顔を決める。


 黎翔は黎翔で、突如差し込んだ希望の光に目を輝かせている。


「うぉー!すげぇ、すごいですよ御織様!永遠の感謝を!!」

「まぁな!アタシは世界最強だから、これくらい当然なのだよ!にはは!!あ、でも敬語と様はやめてくれよ〜?」


 ついさっきまでのお通夜モードから一転、パーティかのように2人して騒ぐ。

 が、黎翔はすぐにある疑問が浮かび、正気に戻る。


「いや待て待て待てぃ!今まで聞き流してたけど、召喚とか奴隷とか隷属契約とか!なんだよそれ、なんの話だよ!?1000年後ってのも意味わかんねぇし!!」


 今まで色々ありすぎて久しく忘れていた、現在起きているあらゆる超常現象に対する疑問を思い出し、勢いよく聞きたいことを羅列する。


「ま、そういう反応になるよね〜、そりゃ。うーん話すのめんどくさいなぁ〜」

「そこ渋られるの一番困るんだが」


 目を逸らして説明を拒否しようとする御織に黎翔は詰め寄る。


「マジ、一番大事だから!この質問が!!」

「え〜.....でもなぁ、 話すと長くなるしな〜」

「そこをなんとか!」


 パン、と手を合わせてお願いするポーズをとる。


「......はぁ、まぁ説明してやるか。この天才美少女に感謝したまえよ、ボーイ」

「やった!ありがとな!」


 なんとか説得出来た喜びからそう呟く。別に大して感謝してる訳では無いが。


「じゃあまずは.....」


 と御織が話し始めた時.....


「見つけたぞ!『8128』だ!」

「っ!?」


 会話を遮る、男の声が聞こえた。


 黎翔が声の方を振り向くと、そこには黒い軍服を着た男たちが20人ほど立っていた。


「わぉ、もう来たのね。なかなか早いじゃん」

「えっと、御織さんの知り合いですか?あれ」

「いんや、知らない人」


 ケロッとした様子で、御織はそう言う。


「キミ、さっき上層部に召喚されたって言ったでしょ?」

「そうだな」

「実はね、アタシ事前に聞いてたの。召喚ミスで座標がズレたから探してこいーって言ってるの」

「........え?」


 その言葉を聞いた黎翔は、唐突に嫌な予感に襲われる。


(え、じゃあもしかしてアイツらって.....)


「彼らは上層部の飼い犬だね!キミを追ってきたみたい。捕まったら隷属契約再開だよ、にはは!!」

「にはは、じゃねぇよ!!」


 黎翔は突如訪れた未曾有の危機に、パニックに陥りかける。


(どうする!?逃げるか、逃げるしかないよな!でもなんか強そうな人いっぱいいるし、逃げきれんのか?第一、御織のヤツもどうしたらいいか分かんねぇし.....)


 アワアワと、その場で次の行動を考え込む。焦りで上手く回らない脳を必死に働かせて。


「にしてもキミで召喚者は8128人目みたいだねぇ。あのタヌキ共がそんなに呼んでたとは、驚きだよ」

「今そんなんどうでもいいだろ!!」


 黎翔が焦り散らかしている中、悠然とそんなことを呟く御織に無性に腹が立つ。 

 が、彼女は色々恩人なので、あまり口には出来ないが。


「なぁ、俺逃げ切れると思うか?」

「んーや、無理だね。アイツらとキミとでは『ステータス』に差がありすぎるし」

「す、すてーたす?」


 御織が使った意味不明な言葉に悩まされつつも、まぁ多分無理なんだということだけは悟ることが出来た。


「じゃあ結局隷属するしかねぇのかよ.....」


 希望を抱いた傍から打ち砕かれ、黎翔は完全に元気を失ってしまった。その場に座り込み、足掻くことを諦める。


「キミぃ、諦めるには早いぜ?」

「........え?」


 そんな黎翔に対し、御織は眩しい笑顔を見せ、強い声色でそう言う。


「いや〜、こりゃ渡りに船だね。話す手間が省けたよ」


 御織はゆっくりと立ち上がり、黎翔の前まで歩く。


「なにをする気なんだ?」

「決まってるだろ?キミを守ったげるのさ!」


 黎翔は、無茶たと思った。

 御織はまだ17歳の女の子。対して向こうは20人もの屈強な男達。

 勝てるはずがない。そう思った。


 だからこそ.....


(恩人を.....俺より歳下の女の子を、むざむざ死なせてたまるかよ)


 黎翔は、覚悟を決める。


「ダメだ、お前にそんな無謀なことさせる訳には行かない」


 黎翔はサッと立ち上がり、御織の肩に手を置いて止める。


「アイツらの狙いは俺なんだろ?だったら俺がアイツらに捕まってやる。だから、お前はここを離れろ」


 自分の目の前で恩人に死なれるくらいなら.....と決意を固め、御織にそう諭す。

 ........が。


「わぉ!いい覚悟だね。心配してくれたのも嬉しいよ?でも......大丈夫、心配いらないよ」

「え?」


 御織は、肩に置かれた黎翔の手を退け、男達の方へ一歩一歩歩き出す。


「おい!やめ───」

「キミに見せてやろう。この世界がどんな世界なのか。そして─────」


 御織は不敵な笑みを浮かべ、こちらを振り返る。


「アタシが、何故最強だと呼ばれているのか、その所以の一端をね!」

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