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黒流星のハンター〜魔法がありふれた世界で、召喚者は石を投げる〜  作者: 鮫野鯨
第一章 召喚、異世界最初の日
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第2話 天才美少女との出会い

「ん〜?反応薄いな、生きてるよね?あ、言語違う感じかな?」


 目の前に立つ少女は、未だ状況を理解出来ていない黎翔(れいと)を置き去りに、忙しなく言葉を紡ぐ。


 その子は比較的小柄で、とても可愛い少女だった。


 優しい桃色の、ブリーチのかかった長い髪は、ふんわりと風に浮いている。

 それとは対照的に、苛烈な炎のようなルビーレッドの透き通る大きな瞳は、黎翔の姿を鏡のように映し出している。


 ほのかに紅い健康的で綺麗な肌だ。黎翔の少し日焼けした肌に比べると随分白く見える。


 彼女が浮かべる眩い笑顔はとても可愛らしかった。どこかあどけなさを感じるその笑顔は、人の庇護欲をかき立てる。


 身長は152センチといったところだろう。腕も脚も胴も華奢で、とてもじゃないがあの怪物を殺せるとは思えないような、小さな身体だ。


 袖や首元、スカートの端など、至る所にレースが施された白い服が、彼女の可愛らしさを引き立ている。思わず見蕩れてしまいそうな程だった。


「ハロー、ハーワイユー?アーイムハッピー!」


 彼女の可愛さと、それに見合わぬ現状に追いつけずボーッとしていると、小学生並の英語を自慢げな笑顔で披露された。

 我に返り、さすがに返事しないといけないと悟る。


「あの、すみません、あなたは……」

「ん?わぉ!日本人じゃ〜ん!アタシの英語を披露するまでもなかったね!にはは!」


 若干震える小さな声で質問しようとすると、彼女は質問し終える前にそう言った。


「キミ、変わった服……というか、軽装だねぇ。Tシャツ一枚に、下もそんなパジャマみたいなズボン穿いて。このご時世にそんな軽装で外出歩くおバカさん、そうそういないよ〜?」

「え?あ………」


 そう言われて、黎翔は自分の服装がものすごくダサいことに気付く。


 普段父の手伝いをする時、動きやすく汚れてもいい適当な服を着て作業する。その時の服のままなせいで、今の服装は超適当なのだ。


(は、恥ずい……!変なやつって思われたよな、絶対。着替えてぇ……けど……)


 恥ずかしいが、持ち金ゼロな上知らない場所にいる以上、どうすることも出来ない。黎翔は、羞恥心で爆散しそうなのに我慢する他ない現状を嘆いた。


「てか、キミもしかして……」


 彼女は、一瞬何かを考えるような仕草を取る。そして……


「手出して」

「え?」

「ほら、早く!」

「え、あ、はい……」


 彼女の勢いに押され、意味も分からぬまま右手を彼女に差し出す。


「ん、では失礼」

「なにをする気で───っ!?!?」


 彼女は俺が差し出した右手の指と指の間に、彼女の左手の指を入れて握り締める。

 そう、俗に言う恋人繋ぎをしてきたのだ。


(な、なななななななな!?)


 黎翔は困惑し、顔を真っ赤にする。




 蒼井黎翔は、女性耐性がない。


 猟師という野生に最も近い場所に身を置いていた彼の人生で関わってきた女性の数はめっぽう少なく、触れるどころか会話すらほとんどしていない。


 しかし、彼も年齢的には18歳、男子高校生。思春期真っ盛りであり、女性に対して興味を持つお年頃だ。


 そんな女性耐性ゼロの思春期シャイボーイたる黎翔が、突然可憐な少女に恋人繋ぎされようものならば……


「はわ、はわわわわわわわわわわわわわ……」

「ん?どうしたボーイ、そんなバグった機械みたいな───」

「ぐぇっ」


 パタッ


「うぇっ!?なんでぇ!?」


 ───卒倒は不可避。当然の結果であろう。

 結局、黎翔はそのまま30分程意識を失ったままだった。


──────────────────


「いやぁ〜!ぶっ倒れた時は焦ったぜ!」

「す、すみません……」

「いいんだよボーイ!アタシが事前に伝えるべきだったからね!」


 30分後、少女に叩き起こされ座り込む黎翔は、ようやく冷静さを取り戻していた。

 少女は可愛らしくしゃがみ、黎翔に目線を合わせる。


「で、さっきのは何だったんですか?」

「ちょーっと特殊な儀式的なヤツだよ!簡単に言うと……あ〜、簡単には説明出来ないカモ」

「そ、そうですか……」


 少女は、コロコロと声のトーンと表情を変えながら、楽しそうに話す。対照的に、黎翔は淡白な反応を返す。


「ん〜、どこから話そうかなぁ」

「えっと、まずは貴方が誰か聞きたいんですけど……」

「あぁ!ごめんごめん、そいえば言ってなかったね」


 完全に忘れられていた最初の質問を再び返す。

 彼女は「コホン」とわざとらしく咳払いをして、なぜか立ち上がって話し始める。


「アタシは暁御織あかつきみお、齢17歳にして世界最強と呼ばれし天才美少女なり!」


 右手を掲げ、左手を腰に置き、凛々しい笑顔でそう宣言した。


「世界最強……ですか?」

「そう!最強!かの有名な『峯明塔(ふみょうとう)ソルクティス』を終わらせた英雄とはアタシのこと!」

「え、えと……そ、そうですか……」

「……反応薄くない?寂しいんだけど〜」


 元気いっぱいに話す少女───御織とは裏腹に、黎翔は全く話についていけなかった。そのせいで、どうしても返事が薄くなってしまう。


「アタシのことはまぁいいや。御織って呼んで、ミ、オ。あと敬語もいいから」

「わ、わかりま……じゃない、分かった」

「うむ、よろしい」


 敬語使っちゃいそうだな……と思いつつ、頑張ってタメで話そうとする。


「次はキミの自己紹介の番だよ?ほら、早く早く」

「俺は蒼井黎翔です、じゃない。蒼井黎翔、18歳だ。猟師見習いをしてる」

「黎翔ね、オッケー!よろしく、黎翔」

「よ、よろしく……?」


 ぎこちなく握手しつつ、疑問を抱く。


(俺、年上だよな?なんでタメ??敬語使われても困るからいいけどさ、ちょっとくらい悩んでもよくない??)


 とくだらないことを考えつつ、再び彼女に質問を投げかける。


「なぁ、ここはどこなんだ?俺、さっきまで山で猪捌く作業中だったんだけど……」

「え、なにそれ楽しそう!その話、詳しく!」

「え、俺の質問は??」


 あまりにも自由な彼女の発言に、素の反応がこぼれる。

 それに対し、彼女は目を輝かせてこちらに詰め寄ってきた。


「ねぇねぇ、教えてよ〜!どんな感じで捌くの?3枚降ろし?」

「それは魚じゃ……はぁ、まあいいか。話すから俺の質問にも答えてくれよ?」

「オッケー!」


 仕方なく順番に説明する。途中何度も余計な質問されたりしたせいで30分近くかかってしまったが。


「いっやぁ〜!なかなか面白い話聞けたよ!今どきそんなしょっぱい仕事してる人いないからさ〜」

「しょっぱいって言うな!」


 30分の会話のうちに、黎翔はすっかり御織と打ち解けていた。緊張感もほぐれ、いつの間にか普通の友人のような印象に変わっている。


「まぁいい。で、次はそっちの説明してくれよ。ここはどこなんだ?」

「うぃうぃっ!」


 敬礼しつつ、軽く返事をし……再び彼女は口を開く。


「恐らくだが。ここは、キミの元いた世界の大体1000年後の世界だね!」

「1000年後……」


(1000年……1000年後、1000年後?1000年後……)


 しれっと、爽やかにそう告げられた言葉を、黎翔は脳内に繰り返し再生する。その意味を、理解出来なくて。


(1000年後???)


 1分近い硬直の末、ようやくその言葉の意味を理解する。


「1000年後!?!?は!?1000年後!?!?」

「そーだよ。1000年後〜」


 心から漏れ出た驚愕の言葉に対し、軽々しい返事を返される。


(おい、なんの冗談だよ!?なんで、急に!?え、は?なんのドッキリ?意味わかんねぇ!!)


 動揺し、言葉が出なくなる。

 脳の中がぐちゃぐちゃになり、未だに思考が全く追いつかない黎翔を置いて、御織は更に情報を追加する。


「んでキミは、この世界における上層部の人達に召喚されたの!奴隷として、ね!」

「は?????」


 またも爽やかに、とんでもない情報が追加される。


(奴隷!?なんで俺が!?嘘だろ、なんだよそれ!!)


 元々あった絶望が、より深くなるのを感じる。


(…………あぁ、終わった)


 あまりの絶望に思わず天を仰ぎ、悟る。


(俺、さっき死んだ方がマシだったかもな……)


 そんな考えに脳を支配されつつ、苦笑いをこぼした。

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