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黒流星のハンター〜魔法がありふれた世界で、召喚者は石を投げる〜  作者: 鮫野鯨
第一章 召喚、異世界最初の日
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第28話 『ソルクティス』攻略戦

「チッ、結局こうなるのか.....」


 黎翔が喜び飛び跳ねる様を見て、泰輔は不満げに舌打ちをした。


「やはり団長には敵わんな!なははは!!」

「歯向かおうとしたこと自体間違いだったんですよぉ.....小生、大逆罪で消されませんよね.....?」

「ごめんなさい、鳴花のせいで.....」

「気にしとらんわい。鳴花は悪くないからのぉ」


 投票で敗れた『花被片騎士』たちは、各々自由に会話していた。


(.....ワンチャン文句言われるかも、と思ったけど.....案外アッサリ終わったな)


 もう一悶着ある、そんな予感がしていた黎翔だったが、少し拍子抜けするほどスッパリ諦めてしまった。


(俺的には好都合だし。ま、いっか)


 満足な結果が得られ、ご機嫌な黎翔だった。


「さて、と。それじゃ、黎翔の入団手続きをしなきゃだね」


 ぱん、と手を叩きながら、聖は話を変えた。


(入団手続きねぇ.....こういうの大抵面倒なんだよなぁ)


 この面倒事を避けようと少しだけ考えた後、


(ま、丸投げでいいかぁ)


 あらゆる情報を一気にぶち込まれ、疲れきった彼の脳は簡単に思考を放棄した。


「よし!任せたぜ、聖!」

「いや、少しくらい協力する意思見せたらどうかな?キミの身分を登録するんだけど.....」

「俺はなんも分からんからな。任せた」

「ふてぶてしい所の騒ぎじゃないねぇ」


 潔い黎翔の態度を見て、聖はやれやれと呆れ顔を浮かべる。が、


「ま、仕方ないからやっておいてあげるよ」

「あざーす!」


 聖は、案外サラッとそのまま引き受けた。黎翔は更にご機嫌な様子で返事をする。


「あ、ちなみに.....錯羅、他の議題は?」

「とっくに終わっていますので、お構いなく」

「そうか。いつもありがとう」

「お安い御用です」


 聖が思い出したように聞き、錯羅は機械のような無機質な声で返答する。その様を見ていると、聖よりも錯羅の方がシゴデキなんだろうな、と誰でも察することができるだろう。


「じゃ、僕は黎翔の身分登録に行くけど.....黎翔の方は、しばらくは御織に任せてしまっていいかな?そのうちしっかりとした訓練に参加してもらうつもりだけど」

「おけ〜」


 御織は軽く返事をした。


(御織、ほんとに俺のこと面倒見てくれるんだな)


 こんな美少女が.....と若干の喜びと同時に、不安を抱える。また意識飛んだりしないかな、と。


「『花被片騎士』のみんなは今まで通りの任務に戻ってね」

「分かっています、団長」

「お任せを」

「それじゃ、そういうことだから今日は解散で。みんな、お疲れ様」

「お疲れ様です」


 こうして、幾度もの波乱を起こし、黎翔の精神をすり減らした『花被片騎士総合会合』は.....


 最後だけはしめやかに、幕を閉じた。


──────────────────


「いや〜、何とかなって良かったねぇ」

「あぁ.....ホントに何とかだったな.....」


 会合終了後、黎翔と御織はゆっくりと話しながら歩いていた。というのも、


『アタシがこの世界でのお家まで案内したげる!』


 と御織が言ってくれたため、その好意に甘えていたのだ。


(ま、土地勘とかゼロだし。案内無かったら詰んでたから助かったな)


 黎翔は、短時間で大量に摂取してしまった情報を軽く整理しつつ、御織について歩いていた。のだが.....


「......................」


 情報整理に脳の大半を動員させている上、疲れが加わり、黎翔は超省エネモードに移行していた。


 全身脱力し、表情筋はデロンデロンに、瞳もほとんど開いていない。


 そんな黎翔を気遣い、御織が話しかける。


「疲れてるとこ悪いけど、お家はまだ先だよ〜。頑張って歩いてねっ!」

「おーけー」

「夕飯何がいい?」

「肉」

「シンプルだねぇ」


 ほとんど脳を使わず、適当に言葉を交わす。

 その無気力な表情と、だらんと垂れ下がった両腕を見て、御織は若干呆れるように笑った。


「もぅ、しっかりしなよ〜!そんなバカみたいな顔しちゃってさ〜」

「頭使うのめんどくさい.....」

「ま〜色々あったし、分からんでもないけどさ〜.....」


 どことなく不満気な御織。どうやら、まだ何か言いたいことがあるようだ。


「そんなんじゃ、アタシを救うなんて夢のまた夢だよ?」

「それは.......まぁ、そうだな......」

「認めちゃったよ.....」


 痛いところを突かれ、フィッと目をそらす。顔を見てないはずなのに、何故か御織のジトッとした視線がハッキリ感じられる気がした。


「.....でもさ、黎翔」

「?」


 御織は、少しだけ声色を柔らかくした。


「アタシ、嬉しかったよ。アタシのことを救う、なんて言ってくれて」

「え?」


 チラリと御織の方を見ると、御織は寂しそうな瞳で遠くを眺めていた。


「.....ホンット、久しぶりに聞いたよ。そんな大それたセリフ」

「初めてじゃないのか?」

「うん。前にも1人、いたんだ。夢物語を語るバカがね」


 過去を見つめる彼女は、なぜかとても大人びているように感じられた。その瞳には、悲しみが宿っているように感じた。


 そのまま、無言でしばらく歩いた後───御織は突然ピタリと歩みを止める。

 どうした、と聞く前に、御織は口を開いた。


「.....アタシはね、世界で一番強いんだよ」

「そうだろうな」

「だからね、アタシを救うってことは、世界最強にならなきゃいけないの」

「......まぁ、そうだな」


 世界最強になる.....その言葉を聞いて、改めて自身の目指す場所の高さを自覚する。

 そんな黎翔に対し、御織は.....


「そのために、アタシは黎翔を殺す気で鍛えるよ。今この瞬間から、ね」

「.....え?」


 声色も表情もそのまま、恐ろしいセリフを言い放った。

 その直後だった。


 ゴーン、ゴーン、ゴーン........


「.....!?なんだ?鐘.....?」


 不意に、辺りに鐘の音が鳴り響く。

 どこから鳴っているのかも分からない。ただ、不気味でならないその音が脳に響く度、嫌な予感だけが黎翔の中に蓄積される。


(ていうか、これ前も聞いたことあるような.....確か.....っ!!そうだ、あの時.....!!)


 そう、この鐘の音は過去に聞いたことがあった。


 星恋と御織と、騎士団本部に行く前に話していた時.....その時も、突然どこからともなく鐘の音が鳴り響いていた。あの時と、音質も全く同じだ。


 黎翔は、もう一つ大事なことを思い出す。


(待てよ、確かあの時、鐘の音が鳴った直後.....『ソルクティス』が始まった......)


 ゾッとするような、猛烈な悪寒を感じる。


 嫌な予感は命中する。黎翔がよく知る、この世の理の一つ。


 ここまで綺麗にフラグが立った状態で、嫌な予感を回避することなど......


 不可能である。


 ブワッ─────


「っ!?空が.....!!」


 突然、上空に黒い太陽が出現する。同時に、紫色の光が空全体を覆っていく。


(間違いない.....『ソルクティス』だ!)


 咄嗟に御織の方を見る。

 御織は、焦る黎翔と対照的に、静かに黎翔を見つめて立っていた。


「おい、御織!どうすんだ───」

「黎翔、チュートリアルって説明だけじゃ物足りないと思わない?」

「は?なんの話?」


 意味不明なその発言に、黎翔は疑問を呈する。が、直後、


「!?お前待て、まさか.....!!」


 発言の意図を恐らく察してしまい、更に焦りが募る。


「やっぱさ、チュートリアルってのは実際試してみるコンテンツであるべきだと思うの。じゃないと知識が身につかないし、座学だけじゃ実際の感覚も掴めないからね!」


 その発言は、実質的に黎翔の予想を裏打ちするものとなってしまった。


(終わった、絶対聞き入れてもらえねーやつだ.....)


 雰囲気で、御織が本気なことを悟った黎翔は、半ば諦めるような表情を浮かべた。

 御織は、ニヤリと笑って宣言する。


「さーて、そんじゃ始めますか───チュートリアル実践編、『ソルクティス』攻略.....開始だよ!!」


 黎翔にとって、最初の戦いが幕を開けた。

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