第26話 特異職業
「えっと.....俺が『特異職業』所有者?」
何を言ってるんだコイツは、と困惑の意思を込め、聞き返す。
「本当だよ。ほら、これを見て」
聖は、『ステータスカード』の裏面を黎翔に見せてきた。
そこに書いてある内容を見ると、
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職業:狩猟者 階級:特異
スキル:『狩人の心得』、『狩猟者の勘』
ステータス補正:物理特化
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.....こう書いてあった。
(階級が特異.....って、まさかマジで!?)
目を見開き、聖の方を見る。聖は無言で頷き、口にもしていない黎翔の思考を肯定した。
「マジか.....」
「その気持ちはよく分かるよ。僕も驚いたもの」
「アタシもビックリしたよ〜!偏った『ステータス』で変だとは思ってたけどさ、まさか『特異職業』だとは思わなかったし!」
聖との会話に、突然御織も加わってくる。その様子から、本当に珍しいことなんだと理解できた。
「ちなみに、俺の職業.....『狩猟者』って強いのか?」
「まだ何とも。『特異職業』である以上前例が無い上、モンスター戦で生かしにくい物理にステータス補正がかかってる。というか、魔法系のステータスが軒並み0の人自体見たことないからさ」
「そうか.....」
聖が首を傾げながらそう言ったため、黎翔は分かるわけないな、と理解した。
「ちなみにこのステータス補正ってのは.....」
「文字通りだよ。成長しやすいステータスを示していてね、職業ごとに少しずつ異なるんだ」
「なるほど、それで俺のステータスがあんな偏り方を.....って、あれ?待てよ?」
黎翔は、ここに来てある事実に気づく。
「ステータスって成長するのか!?」
「もちろんだよ。『レベル』と共にね」
「レベル.....」
黎翔は『ステータスカード』を裏返し、ステータス欄を見る。
そこには、確かに『Lv.1』と書かれていた。
「ほんとだ、気づかなかった.....てことは、レベル上げたら魔法ステータスが上がることも?」
黎翔は、希望に目を輝かせながらそう聞く。が、
「望み薄、かな。ステータス補正の関係上、もう一生伸びないことを覚悟した方がいい」
「そんなぁ.....」
聖に軽く否定され、肩を落として落胆した。
「そう落ち込むことは無い。これは、黎翔がそれだけ特殊な証拠なんだよ。本来なら職業って、レベルが20を超えないと獲得できないんだ。キミはレベル1なのに職業を持ってる、史上初の人材さ!」
「え、そなの?」
「そーそー!黎翔は多分めちゃんこスゴいんだよ!」
聖と御織から一斉に褒められ、黎翔は再び希望に目を輝かせる。
「きっとしばらくは苦労する。でも、レベルを上げてスキルを手に入れれば、きっとすごく強くなれるはずだよ」
「うおおぉぉ......!なんか面白くなってきた!」
「アタシも、ちょっと楽しみになってきたな〜!」
黎翔の将来への期待に胸をふくらませながら、楽しげに3人は会話する。
.....が、それを遮る者が現れる。
「団長、そういうわけにはいきません」
「小生は反対ですよ」
「.........む?」
その声に振り向く。
すると、部屋の入口に、御織の攻撃で伸びていた頼と厳吏が立っていた。
「.....というと?」
「簡単な話ですよ。ソイツ、『RES』0なんですよね?」
「あぁ、そうだ───っ!なるほど、そういうことか」
厳吏と聖が短く会話を交わすと、聖は突然難しい表情になった。
「え、なに?怖いんだけど」
黎翔がそう聞くと、聖ではなく頼が答えた。
「実はな黎翔、『RES』が低いと『ソルクティス』に入れないのだ」
「え、は?なんで?」
「『ソルクティス』内部は、濃厚なマナで満たされている。もし『RES』が低いと、『ソルクティス』に入っただけで死んでしまうのだ」
「ウソだろ!?」
新たな事実を知らされ、黎翔はまたも絶望する。
(え、俺の『RES』の数値『0』だけど?絶対無理じゃん!!)
どうすれば.....と頭を抱える。隣では、聖も何かを考え込んでいた。
「そういうことだから、黎翔。すまんがやはり君の身体は実験に使───」
「それは愚策もいいとこだと思うけど?」
「「っ!?」」
避けられないバッドエンドを突きつけられた時、不意に御織が口を開いた。
「む?それはどういうことだ?」
「仮に黎翔が『ソルクティス』のマナに耐えられない体質なら、もう死んでるよ。だって、彼は2回も『ソルクティス』に入ってるし、近くで『ボス』が死ぬのも経験してるんだよ?」
それを聞き、黎翔と聖は顔を上げる。
(確かに、召喚された場所は『ソルクティス』の中だったな。そのあと、もっかい巻き込まれたし)
納得の回答を得られ、二人で目を見合せ小さく頷く。
そしてその理論で納得したのは聖と黎翔だけではなく、
「ふむ、確かに。その可能性はあるな!いい着眼点だ、御織!」
言い出しっぺの頼も納得したようで、笑顔を浮かべながらそう言ってくれた。
が、
「だが、どのみち黎翔は実験に使用すべきだと俺は思いますよ、団長」
「!?」
彼の根本的な意見は変わらなかった。
「なんで......!」
「『RES』がゼロなのに『ソルクティス』内で生き残れる原理を解明すれば、今後の騎士団全体に利益をもたらす可能性がある。黎翔一人の活躍に留まらず、多くの民が活躍出来るようになるかもしれぬからです」
「小生も同意見です。それに、不安要素は早めに摘むべきなので」
「それは......!!」
黎翔は反論しようとしたが、適切な意見が見つからず途中で言い淀む。
さらに、それに同調する声が増える。
「ワシもソイツの実験運用に賛成じゃな」
「鳴花はオモチャにしたーい!」
「っ!泰輔、鳴花.....」
部屋の入口から、更に二人の『敵対者』が現れた。
「待って、もっとしっかり考えて決断しないと───」
「考えた結果がこれじゃ。いくら団長といえど、独裁は許されんと思うが?」
「おーもちゃ!おーもちゃ!」
聖が説得を試みるも、簡単に打ち砕かれてしまった。「くっ.....」と悔しそうに呟く聖を見て、
(意外と権限的には弱いのか?聖って.....)
と感じた。少し意外に思った。
「こういう時は多数決で決めるべきじゃないのか?団長の意思じゃのうて」
「その通りです。我々『花被片騎士』の存在意義は、権力分散を目的とするだけでなく、あなたの監視役でもあるのですから」
泰輔と頼のその言葉を聞き、黎翔は理解した。
(『花被片騎士』は、強い騎士の集まりじゃない。権力分立を担当する、『政治組織』なんだ)
ようやく、現状圧倒的に自身の立場が不利な状況であると理解し、一気に青ざめる。
「団長、宣言を」
「..........っ」
頼に言い寄られ、聖はしばらく無言で抵抗を続けた。黎翔を守るために。
だが......
「.....これより、蒼井黎翔の処遇を決める投票を行う」
「っ!!」
苦し紛れに、聖はそう宣言した。




