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黒流星のハンター〜魔法がありふれた世界で、召喚者は石を投げる〜  作者: 鮫野鯨
第一章 召喚、異世界最初の日
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第26話 特異職業

「えっと.....俺が『特異職業ユニークロール』所有者?」


 何を言ってるんだコイツは、と困惑の意思を込め、聞き返す。


「本当だよ。ほら、これを見て」


 聖は、『ステータスカード』の裏面を黎翔に見せてきた。

 そこに書いてある内容を見ると、


──────────────────

 職業:狩猟者ハンター 階級:特異

 スキル:『狩人の心得』、『狩猟者の勘』


 ステータス補正:物理特化

──────────────────


 .....こう書いてあった。


(階級が特異.....って、まさかマジで!?)


 目を見開き、聖の方を見る。聖は無言で頷き、口にもしていない黎翔の思考を肯定した。


「マジか.....」

「その気持ちはよく分かるよ。僕も驚いたもの」

「アタシもビックリしたよ〜!偏った『ステータス』で変だとは思ってたけどさ、まさか『特異職業』だとは思わなかったし!」


 聖との会話に、突然御織も加わってくる。その様子から、本当に珍しいことなんだと理解できた。


「ちなみに、俺の職業.....『狩猟者』って強いのか?」

「まだ何とも。『特異職業』である以上前例が無い上、モンスター戦で生かしにくい物理にステータス補正がかかってる。というか、魔法系のステータスが軒並み0の人自体見たことないからさ」

「そうか.....」


 聖が首を傾げながらそう言ったため、黎翔は分かるわけないな、と理解した。


「ちなみにこのステータス補正ってのは.....」

「文字通りだよ。成長しやすいステータスを示していてね、職業ごとに少しずつ異なるんだ」

「なるほど、それで俺のステータスがあんな偏り方を.....って、あれ?待てよ?」


 黎翔は、ここに来てある事実に気づく。


「ステータスって成長するのか!?」

「もちろんだよ。『レベル』と共にね」

「レベル.....」


 黎翔は『ステータスカード』を裏返し、ステータス欄を見る。

 そこには、確かに『Lv.1』と書かれていた。


「ほんとだ、気づかなかった.....てことは、レベル上げたら魔法ステータスが上がることも?」


 黎翔は、希望に目を輝かせながらそう聞く。が、


「望み薄、かな。ステータス補正の関係上、もう一生伸びないことを覚悟した方がいい」

「そんなぁ.....」


 聖に軽く否定され、肩を落として落胆した。


「そう落ち込むことは無い。これは、黎翔がそれだけ特殊な証拠なんだよ。本来なら職業って、レベルが20を超えないと獲得できないんだ。キミはレベル1なのに職業を持ってる、史上初の人材さ!」

「え、そなの?」

「そーそー!黎翔は多分めちゃんこスゴいんだよ!」


 聖と御織から一斉に褒められ、黎翔は再び希望に目を輝かせる。


「きっとしばらくは苦労する。でも、レベルを上げてスキルを手に入れれば、きっとすごく強くなれるはずだよ」

「うおおぉぉ......!なんか面白くなってきた!」

「アタシも、ちょっと楽しみになってきたな〜!」


 黎翔の将来への期待に胸をふくらませながら、楽しげに3人は会話する。

 .....が、それを遮る者が現れる。


「団長、そういうわけにはいきません」

「小生は反対ですよ」

「.........む?」


 その声に振り向く。

 すると、部屋の入口に、御織の攻撃で伸びていた頼と厳吏が立っていた。


「.....というと?」

「簡単な話ですよ。ソイツ、『RES』0なんですよね?」

「あぁ、そうだ───っ!なるほど、そういうことか」


 厳吏と聖が短く会話を交わすと、聖は突然難しい表情になった。


「え、なに?怖いんだけど」


 黎翔がそう聞くと、聖ではなく頼が答えた。


「実はな黎翔、『RES』が低いと『ソルクティス』に入れないのだ」

「え、は?なんで?」

「『ソルクティス』内部は、濃厚なマナで満たされている。もし『RES』が低いと、『ソルクティス』に入っただけで死んでしまうのだ」

「ウソだろ!?」


 新たな事実を知らされ、黎翔はまたも絶望する。


(え、俺の『RES』の数値『0』だけど?絶対無理じゃん!!)


 どうすれば.....と頭を抱える。隣では、聖も何かを考え込んでいた。


「そういうことだから、黎翔。すまんがやはり君の身体は実験に使───」

「それは愚策もいいとこだと思うけど?」

「「っ!?」」


 避けられないバッドエンドを突きつけられた時、不意に御織が口を開いた。


「む?それはどういうことだ?」

「仮に黎翔が『ソルクティス』のマナに耐えられない体質なら、もう死んでるよ。だって、彼は2回も『ソルクティス』に入ってるし、近くで『ボス』が死ぬのも経験してるんだよ?」


 それを聞き、黎翔と聖は顔を上げる。


(確かに、召喚された場所は『ソルクティス』の中だったな。そのあと、もっかい巻き込まれたし)


 納得の回答を得られ、二人で目を見合せ小さく頷く。

 そしてその理論で納得したのは聖と黎翔だけではなく、


「ふむ、確かに。その可能性はあるな!いい着眼点だ、御織!」


 言い出しっぺの頼も納得したようで、笑顔を浮かべながらそう言ってくれた。

 が、


「だが、どのみち黎翔は実験に使用すべきだと俺は思いますよ、団長」

「!?」


 彼の根本的な意見は変わらなかった。


「なんで......!」

「『RES』がゼロなのに『ソルクティス』内で生き残れる原理を解明すれば、今後の騎士団全体に利益をもたらす可能性がある。黎翔一人の活躍に留まらず、多くの民が活躍出来るようになるかもしれぬからです」

「小生も同意見です。それに、不安要素は早めに摘むべきなので」

「それは......!!」


 黎翔は反論しようとしたが、適切な意見が見つからず途中で言い淀む。

 さらに、それに同調する声が増える。


「ワシもソイツの実験運用に賛成じゃな」

「鳴花はオモチャにしたーい!」

「っ!泰輔、鳴花.....」


 部屋の入口から、更に二人の『敵対者』が現れた。


「待って、もっとしっかり考えて決断しないと───」

「考えた結果がこれじゃ。いくら団長といえど、独裁は許されんと思うが?」

「おーもちゃ!おーもちゃ!」


 聖が説得を試みるも、簡単に打ち砕かれてしまった。「くっ.....」と悔しそうに呟く聖を見て、


(意外と権限的には弱いのか?聖って.....)


 と感じた。少し意外に思った。


「こういう時は多数決で決めるべきじゃないのか?団長の意思じゃのうて」

「その通りです。我々『花被片騎士』の存在意義は、権力分散を目的とするだけでなく、あなたの監視役でもあるのですから」


 泰輔と頼のその言葉を聞き、黎翔は理解した。


(『花被片騎士』は、強い騎士の集まりじゃない。権力分立を担当する、『政治組織』なんだ)


 ようやく、現状圧倒的に自身の立場が不利な状況であると理解し、一気に青ざめる。


「団長、宣言を」

「..........っ」


 頼に言い寄られ、聖はしばらく無言で抵抗を続けた。黎翔を守るために。

 だが......


「.....これより、蒼井黎翔の処遇を決める投票を行う」

「っ!!」


 苦し紛れに、聖はそう宣言した。

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