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黒流星のハンター〜魔法がありふれた世界で、召喚者は石を投げる〜  作者: 鮫野鯨
第一章 召喚、異世界最初の日
24/67

第24話 蒼井黎翔の『ステータス』

 足元から溢れた光は、すぐに収まった。

 同時に魔法陣も消え、床はただの無機質なコンクリートの灰色だけが広がる。


「.....え、終わった?」


 魔法が終わった───はずなのに、黎翔の身体には全く変化が感じられなかった。


「終了だよ。お疲れ様、黎翔」

「黎翔、身体に問題とかない?」


 聖は労いの言葉をかけ、御織は即座に心配そうに駆け寄ってきた。


「大丈夫。というか、大丈夫すぎる」

「そっかそっか、そりゃ良かったよ」


 安心したように明るく御織はそう言った。


「え、なんか何も変化無いんだけど.....」


 不安になって聞くと、聖が笑いながら答えてくれた。


「安心して。どんな人でもそうだから」

「おぉ、よかった」


 自分がおかしいわけではないと分かり、少し安堵する。

 同時に.....


(.....もう、後には退けない)


 本当に自分の存在が、1000年前から抹消されてしまったのだと判明し.....若干の後悔を感じた。が、


(なんか.....逆に吹っ切れた気がするな。肩の荷が下りたっつーか)


 元の時代に戻る───黎翔が抱える一つの目的が消滅したことで、視界が晴れたような澄み渡った気分でもあった。


「それじゃ、お楽しみの『ステータス』確認タイムと行こうじゃん?」

「だね」


 黎翔が一人考え事をしていると、聖と御織がそう言った。


「どうやって確認するんだ?」

「簡単だよ!『ステータスウィンドウ・オープン』って祈れば出て来るから!」

「原理が謎すぎるが、まぁ分かった」


 黎翔は難しいことは考えず、言われた通りに


(『ステータスウィンドウ・オープン』)


 と心の中で念じる。

 次の瞬間───


 ヴン


「のわぁ!?」


 目の前に、青く薄い板のようなものが出現する。

 縦長の長方形の板には、文字やら数字やらが規則正しく並んでいた。黎翔には、パッと見では理解出来そうになかった。


「見えた?」

「あ、あぁ」


 困惑しながら、肯定する。


「じゃあ.....えっとね、それの上の方に『ID』っていう欄ない?」

「えっと.....」


 そう言われて一番上を見ると、右端に確かに『ID』という文字と、それに続く長い数字の羅列があった。


「あったぞ。『137438691328』って書いてある」

「なげ.....聖、覚えた?」

「もちろんだよ」

「さすが。絶妙にキモいね」

「悪口だねぇ」


 数字を伝えると、聖が手のひらの上に小さな魔法陣を出現させ、御織に罵倒されても手を止めることなく何かを念じていた。

 数秒後.....


 キィン───


 手の中の魔法陣が消え、一枚の名刺くらいのサイズの板が出現する。


「なんだ?それ」

「詳細は省くけど.....簡単に言えば、これは黎翔専用の『ステータスカード』。キミの『ステータス』の全てが記載されているとても大事なものだ」

「おぉ.....!!」


 黎翔は、ついに自分の『ステータス』が分かるという事実に心を踊らせる。


「さて、それじゃ確認しようか」

「おう、そうだな」

「アタシも見る見る〜!」


 3人で、聖の手の中にある小さなカードを覗き込む。

 そこに書いてあった内容は.....


──────────────────

蒼井黎翔 ID: 137438691328

Lv.1

POW:57 DEX:32 DEF:68

INT:0 MP:0 RES:0  Total:158

──────────────────


 .....この通りだった。


(御織にチュートリアルで聞いたのと同じ内容だな)


 さっき御織から習った内容を思い出し、それぞれの英語が指し示す意味を思い出す。

 そして.....気付く。


(.....下3つって、全部魔法関連だよな?綺麗に0なんだけど.....)


 御織が言っていたことが事実なら、多分そうだよな.....と思考し、疑問に思う。

 どことなく、嫌な予感がした。


(.....分からん、まだ分からんから。一旦2人に聞こう、そうしよう)


 すぐに隣にいる2人に質問する。


「なぁ、なんで魔法系の『ステータス』全部0なんだ?そういうもんなのか?」


 恐る恐るそう聞くと.....二人はしばらく顔を見合わせた後、少し気まずそうに答えた。


「えぇ〜っとですねぇ.....本来、他の『ステータス』は0のことがたま〜にあるんですよ。赤ちゃんとか、おじいちゃんとか」

「だが.....魔法系の『ステータス』は、万人がある程度持ち合わせているはずなんだ。産まれたての赤ちゃんも、僅かにINTを備えているくらいだし」


 それを聞き、猛烈に嫌な予感が増大した。


「....えっと、それってつまり.....」

「まだハッキリとは言えない。言えないが.....」

「黎翔、もしかしたら魔法使えないかも.....」


 .....嫌な予感は的中する。いつもどんな時も、それだけは変わらない。

 そして、当然のように今回も的中してしまった。


(そんなことある?)


 黎翔は、最早絶望を通り越して放心状態にあった。何も考えたくなかった。

 それを見て、御織は必死に慰めようとする。


「ま、まだ分かんない!もしかしたら使えるかもだしさ、ね?もし今すぐ魔法使えなくても、頑張ったら使えるようになるはずだからっ!」

「そ、そうだよ黎翔。まだ落ち込むには早い。だから、その.....うん。元気出してくれないかな?」


 必死に励ます御織と、若干憐れみの視線を向ける聖に慰められ、黎翔は余計悲しくなった。

 そして、その悲しみは徐々に怒りに転ずる。


「こ.......」

「「こ??」」

「こんな理不尽.....許せるかよおおぉぉぉぉっ!!」


 バチィン!


 ヤケクソで、聖の手にあった紙切れを全力で叩き落とす。


「もうダメだ。俺は死ぬんだ.....」


 直後、またも悲しみが込み上げ、その場に座り込む。


「れ、黎翔.....」


 それを見て、御織までもが憐れみの視線を向けてきた。黎翔は死にたくなり、更に小さくなる。


「なんだか可哀想になってきたね.....」

「珍しくアタシも同意かも.....」


 聖は、そう言いながら、叩き落とされた紙切れを拾い上げ.....

 途中で、何故か固まった。


「?どした、聖?」


 それを見た御織も、紙切れを覗き込む。直後、


「えぇっ!?」


 という大きい声が聞こえてきた。


「なんだよ、うるせぇな.....」


 と黎翔は呟きつつ、ノソノソと立ち上がって聖の手元の紙切れを覗き込む。


 二人が見ていたのは、どうやら裏面のようだった。さっきとは別の内容が書かれていた。


(なになに.....?)


 そこには、いくつかの文字が樹形図のようなものと一緒に書いてあった。その文字は.....


「えっと、『職業:狩猟者』?」


 『職業』という知らない単語に、黎翔は困惑する。

 チラリと二人を見ると、またも顔を見合わせていた。が、今回はさっきの気まずそうな空気感とは違い.....


 驚いて固まっている、そんな様子だった。


「なぁ、これなんなん───」


 なんなんだ、と言い切る前に、声を被せられる。


「「黎翔!キミ、多分相当強いよ!!」」

「え??」


 二人して声を揃えてそう言われ、黎翔は余計に困惑することになった。

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