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黒流星のハンター〜魔法がありふれた世界で、召喚者は石を投げる〜  作者: 鮫野鯨
第一章 召喚、異世界最初の日
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第17話 儀式・中編

「間に合ったみたいでなによりだよ、黎翔れいと

「え.....いや、え.....?」


 黎翔は、颯爽と現れた御織みおを前に、困惑を極めていた。


(なんでいるんだよコイツ.....!?てか、間に合ったってなんだよ!?)


 混乱してその場に座り込んでいると.....そこに、近づいてくる人影があった。


「久しぶりだね.....御織。来てくれるとは思わなかった」


 白い髪をなびかせ、ゆっくりと歩み寄るその影の正体は───


「アタシだって来るつもり無かったよ?アンタの顔見たくなかったもん───ひじり


 『水仙騎士団』団長.....聖だ。


「そうかな?僕は君に会いたかったけどね。自由な魔女さん?」

「いやいや、アタシなんかがお目にかかるなんて失礼ですよ〜?悪魔さん?」


 互いに穏やかな声と態度で、しかし大量に棘と毒を含んだ言葉を投げつけ合う。


 笑顔で話している......はずなのに、黎翔には二人の間に火花が散っているようにしか見えなかった。


「あの、御織さん?」

「ん、なんだね?哀れな少年よ」

「哀れって.....まぁいいや。なんでここにいるんだ?さっき来ないって言ったのに.....」


 黎翔は、困惑一色という様子を全面に出しながら質問する。


「そりゃもちろん、黎翔を助けるためだよ!」


 えっへん、と薄い胸を張りながら自慢げにそう言われた。が......


「いや、何から助けるんだよ!今から大事な魔法を使ってもらうって時に.....どっちかっていうと邪魔されたんだが!?」


 黎翔は御織の態度に少しだけイラッとし、捲し立てるようにそう言った。

 そんな黎翔を見て.....御織は、涙を拭うような真似をしながら黎翔の肩に手を置き、


「うんうん、そうね、そう思うよね。可哀想に、あなたは騙されたんだわ.....」


 と言った。


(悪魔.....って、絶対団長のことだよな。何を騙したっていうんだよ.....?)


 チラリと聖を見ながら、黎翔はそう考える。

 聖は相変わらず優しく微笑んでいた。黎翔は、とても『悪魔』と呼ばれる所以を理解できなかった。


「説明してくれよ、どういうことなのか」

「もちろん。そのために来たんだから」


 御織は黎翔の方に体を向け、話し始める。


「君、さっきの魔法についてなにか聞かされてる?」

「あのでかい魔法陣のことか?」

「Yeah!」


 そう言われ、一瞬過去の会話を思い出す。そして、脳に浮かんだ言葉をそのまま伝える。


「『魔法を発動したら、自ずと感じられるようになるはず。今まで感じられなかった、この世界との繋がりが』.....って聞いた。それで『ステータス』が見えるようになるって」


 そう伝えると、御織は「予想通り」と言わんばかりにブンブンと頭を縦に振っていた。


「うーん、素晴らしい!嘘は言ってないね!相変わらず回りくどい弁舌が得意ですね〜、悪魔さんは」


 パチパチと拍手しながら、御織は嫌味たっぷりにそう言う。


「じゃあ答え合わせしよっか」

「.......?」


 御織は、少しだけ真面目な顔つきになり、話し始めた。その雰囲気を感じ取り、黎翔は黙って聞こうと決めた。


「あの魔法は.....『名前を呼ぶ魔法』なんだ」

「......え?え......名前を呼ぶ??」


 あまりに意味不明な名前の魔法に、思わず声が漏れる。


「それは、一体どういう.....」

「んーと.....一言で言うと、『この世界に認めてもらう魔法』ってとこかな」

「ますます分からん......」


 御織は「ん〜」と少し唸り声をあげた後、再び説明を再開する。


「今の君はね、『この世界に認められてない』んだ。実体と魂は存在してるけど、『世界』が君を認識出来てない」

「?????」

「言い換えると.....生まれて間もない赤ちゃんが、肉体と意識は存在するけど戸籍上には名前がない、みたいな。伝わるかな?」


 黎翔は少しだけ考えた後、御織に返事を返す。


「なんとなく。要は、『物理的にここに存在してる』が『神様はそれを知らない』んだろ?」

「おー!いい表現だね、それ!」


 パチン、と華奢な手でフィンガースナップを決めながら、御織は明るい声でそう言った。黎翔も少しだけ楽しい気分になる。


「で、『神様』に存在を認識してもらって初めて、『ステータス』やら『マナ』やら『魔法』やら、この世界にしかない概念に『触れる』ってことだろ?」

「いいね、冴え渡ってるよ!!」


 二人でポンポン会話が進み、どんどん楽しくなってきた。

 が.....ここで黎翔に疑問が生じる。


「ん、でも.....それって必要な事なんじゃねぇのか?『名前を呼ぶ魔法』使わないと、俺は雑魚のまんまってことだろ?魔法も使えねぇし」

「そうなんだけどね〜.....」


 御織は、少し嫌そうな顔をする。黎翔は首をかしげながら、御織の返事を待つ。


「この魔法はね、ひとつ大きなデメリットがあるんだ」

「デメリット.....?」


 深刻そうに話す御織を見て、黎翔は少しだけ緊張する。

 .....とてつもなく嫌な予感がしてならなかったから。


「この魔法のデメリットは.....『名前』を呼び出すこと。つまり.....元いた世界における君の存在を、完全に抹消してしまうことなんだ」

「.........は?」


 黎翔の嫌な予感は、最悪の形で的中した。

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