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黒流星のハンター〜魔法がありふれた世界で、召喚者は石を投げる〜  作者: 鮫野鯨
第一章 召喚、異世界最初の日
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第11話 水仙騎士団

「.....で、『水仙騎士団』てなに?」


 黎翔れいとは、隣を歩く星恋せいこにずっと聞きたかった質問を投げかける。


「ふむ、そうだな.....」


 そう問われた星恋は、手を顎に当てて考える仕草をする。そしてすぐに黎翔の方に顔を向け、口を開く。


「簡単に言えば、現日本政府だな」

「.....え?政府?」


 黎翔は、星恋の口から出た言葉に一瞬硬直する。


「1000年の間に色々あったらしい。元の政権が崩壊し、国内が不安定になっていたのを統一したのが初代『水仙騎士団長』とのことだ。以来、日本の政治は全て『水仙騎士団』が行っている」

「マジかよ.....」


 「政権崩壊」という衝撃の単語を聞き、黎翔は絶句する。

 それを見兼ねた星恋は、すぐさま話を切り上げる。


「その辺りの話は.....恐らく後々話すことになるだろう。今はとにかく早く本部に向かうぞ」

「分かった」


 黎翔も星恋の意図を察し、考えるのをやめてついて行くことにした。


(今一番大事なのは、過去じゃなくて今の俺の命だからな)


 自分を守ってくれるであろう星恋を信じよう、と決心し、黎翔は遅れないようについて行った。


──────────────────


「ん?なんだ、あのでかい建物」


 歩き始めてから五分ほどした頃、黎翔は前方に巨大なタワーがそびえ立っているのを見つけた。


 澄み渡る青空を貫く勢いの白い塔は、まだかなり距離があるありそうなのに凄まじい迫力だった。


「あれが『水仙騎士団』本部だ」

「あれが!?!?」


 黎翔は、自分が今から向かう場所がとんでもない場所だと気づき、さらに驚く。


「お前にはこれから、『水仙騎士団』の上層部───『花被片騎士かひへんきし』の会合に出席してもらう」

「なんか凄そうだな.....」


 星恋の発言でさらに驚きが加算され、黎翔は少しだけ身震いした。無意識に寒気のする腕を掴む。


「私はお前の味方だが.....他の『花被片騎士』の連中の大半は、お前を隷属させるか実験に使うかのどちらかで考えている。下手なことはするな」

「マジかよ.....」


 自身の置かれている最悪の状況を改めて理解し、その緊張と圧迫感で少し吐き気がした。


 そのまま何も話すことなく、10歩近く歩いた時.....


 黎翔は、ふと足を止めた。


「待て、星恋」

「ん?なんだ?時間が無いのだが」


 黎翔に呼ばれ、星恋は少し不機嫌そうに足を止める。

 そんな星恋のことはお構いなしに、黎翔は足を止めて質問する。


「お前.....もしかして、その『花被片騎士』とかいうやつなのか?」


 黎翔は、時間差で気づいた。さっき彼女が「私以外の『花被片騎士』は」と言ったことに。


 星恋は、「今更か」とため息をつきながら返す。


「ああ、そうだ。言っただろう?筆頭騎士だと」

「上層部とは聞いてねぇよ!!!」


 星恋の返事に被せるように、黎翔は大声でそう叫ぶ。

 そのまま初めてモンスターと出くわした時のように大きく取り乱し、星恋に詰め寄る。


「おま───いや、あなたがそんな偉い人なら早く言ってくださいよ!俺、めっちゃ適当に喋ってたし.....!!これで死刑とかないよな?俺、重罪に問われたりしないよな!?」

「落ち着け。あと、敬語が下手すぎるぞ」


 ウンザリしたような態度で、星恋は答える。冷静なツッコミを混じえながら。


「私に敬語はいい。他の連中ならいざ知らず、私は既にお前を認めているからな」

「そ、そうなのか?」


 自身の身の安全を確認した安心感の後に、急に褒められたことによって困惑する。


(俺、なんかしたか?)


 と記憶を漁るも、特段思い当たる節がなく、黎翔は余計混乱しそうになった。結局、


(まいっか!)


 とやはり諦めてしまう黎翔だった。


「む、もう時間がないな。急ぐぞ」

「了解!」


 腕時計を確認した星恋に急かされ、小走りで目の前の塔へ走った。


──────────────────


「で.........デッッッッッカ.....!!」


 それから15分ほど移動した後、2人は塔の下にたどり着いた。

 下から見上げると、頂上が見えないほど高かった。キラキラとガラスが光を反射し、眩く輝くその塔は、蜃気楼かと見紛うほどだった。


「入るぞ。私の後ろについてこい」

「分かった」


 星恋に連れられ、黎翔は塔の中に足を踏み入れる。

 ガラス張りの自動ドアの先に広がっていた光景は.....


「広.....めっちゃキレイ!!」


 青く輝く、とても広々とした空間だった。


 その空間には、いくつものカウンターが並び、多くの人がその前に集まっていた。


 各所に液晶パネルが提げられ、カウンターには何個ものパソコンが並んでいる。カウンターの向こう側に立っている職員らしき女性たちは、柔らかな笑顔で次々と訪れる人々への対応を行っていた。


 空間の各所に飾られている観葉植物は、訪れた人々の気分を落ち着かせるのに一役買っていた。液晶パネルに映し出される物々しい雰囲気のニュースらしき番組も、行き交う人々の音にかき消され、比較的緩やかな雰囲気の場所となっていた。


「ここは.....」

「県庁的な場所だと考えろ。私たちが用があるのはここではない」


 星恋は華麗に黎翔の興奮を無視し、スタスタと空間の端へと歩き出す。

 黎翔は少し残念がりながらも、すぐについて行く。


「このエレベーターに乗って上に向かう」


 複数の曲がり角を抜け、外からの光も入らない奥地.....

 星恋が向かった先には、ひっそりとひとつのエレベーターが存在していた。


 二人でエレベーターに乗り込み、星恋が操作を行う。番号の書かれたパネルを使って複雑な操作を手際よくこなした後、エレベーターは動き出した。


 ウィーーーーーーーーーン......


 無言のまま、エレベーターは上に向かう。

 エレベーターの中はとても質素で、真っ白な壁しか存在しなかった。黎翔は、明らかに普通じゃないと感じた。




 そのまま3分近くエレベーターは上に向かい続けた。星恋に色々聞きたいことがあったのだが.....


「はぁ......」


 どこかピリついた雰囲気を醸し出す星恋に声をかける勇気がわかず、結局無言のまま時が流れた。

 そして......


 ガタン

 チーン

 ウィーン


 音を立ててエレベーターが止まり、到着の合図を鳴らす。そして扉が開く。


(き、緊張してきた.....)


 扉が開いた瞬間、どっと緊張が押し寄せる。手が僅かに震え、冷や汗がダラダラと吹き出す。


「.....行くぞ」


 星恋の冷たい声を聞き、黎翔も歩き出す。


(.....覚悟を決めるんだ)


 この先で、自身の人生がかかった戦いが幕を開ける。絶対に負けてはならない戦いが。


 勝利条件は、上層部───『花被片騎士』への説得による自由の確保。味方は星恋のみ、他は全員敵。そして当の本人である黎翔は、身元不明の召喚者......


 分の悪い賭けだ。そう思わざるを得なかった。

 それでも.....


(勝つ。俺は自由を手に入れる)


 黎翔はそう固く決心し、エレベーターの先へと歩を進めた。

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