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黒流星のハンター〜魔法がありふれた世界で、召喚者は石を投げる〜  作者: 鮫野鯨
第一章 召喚、異世界最初の日
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第10話 青天

「ふむ、楽勝だったな」

「だね〜。ま、アタシらが組みゃ当然だけど」


 『ボス』を一撃で焼き斬った星恋せいこは、涼しい顔でこちらに歩いてきた。それをアシストした御織みおも、星恋同様平常通りの様子で立っていた。


黎翔れいと〜、ちゃんと今の見てた───って、なにその変な顔?」


 星恋の一撃───『スキル・魔炎刀フレアブレード』を目にした黎翔は、その驚異的な破壊力に呆気に取られ、開いた口が塞がらなくなっていた。


「キミ、なかなかいい反応してくれるから面白いね!にはは!」

「驚くのは当然だろうが.....まぁ、自然現象みたいなものだと思ってくれればいい」

「いや、不自然の極みみたいな現象が起きてた気がするんだが?」


 星恋の意味の分からないアドバイスにツッコミを入れつつ、黎翔は情報処理のためにひたすら脳をフル稼働させていた。


(えーと、この世界には『魔法』の他に『スキル』ってのがあって、それは『マナ』を使って攻撃するから硬ったい『モンスター』も倒せて、それで『スキル』にはチャージタイム?的なのがあって.....あと『ステータス』ってのもあるんたっけか?あーもう、ややこしすぎる.....)


 流し込まれた大量の情報に混乱し、迷走し、考えるのに疲れ.....


(もう知らん!)


 挙句諦め、思考を放棄した。考えることをやめた黎翔の顔は、諦めた男とは思えぬほどに清々しいものだった。


「黎翔、お前に頼みがある」

「ん、なんだ?」


 そんな黎翔に対し、冷静になるのを見計らっていたかのようなちょうどいいタイミングで、星恋が話しかけてきた。


「私と共に『水仙騎士団』本部まで来てほしい」

「『水仙騎士団』.....?」


 黎翔は、またも出てきた新たな単語に顔をしかめる。もう何も考えたくない、そう思っていたタイミングでの情報追加に無意識に拒否反応を起こしていた。

 それを見た星恋は、少し申し訳なさそうな顔になり、声のトーンを落とす。


「すまない、急にこんな状況になって疲れているだろうし、混乱も収まってないだろう。だが、なるべく早くお前の身分を確保する必要がある。でなければ、私以外の上層部連中まで動きかねん」

「マジ??」


 星恋の声色からして本気なんだろうとは分かっていたが、信じたくない事実を聞かされ思わず聞き返してしまう。


「今回は私だったが、次は私より強く残酷なヤツが来るやもしれん。お前を守るために必要なプロセスなんだ。どうか理解してほしい」


 星恋は、そう言って黎翔に頭を下げた。


「ちょ、頭下げるのはやめてくれよ。俺のために言ってくれてるのはよく分かってるからさ」


 それを見た黎翔は、すぐさま頭を上げてもらおうと取り繕う。


(ここまで誠意ある対応されて断るとか、大恥だからな)


 どこか申し訳なさを感じつつ、黎翔は返事を伝える。


「星恋、俺の方からお願いするよ。『水仙騎士団』が何かは知らないけど、俺のことを守ってくれるなら.....俺は100%従う。だから、『水仙騎士団』に連れて行ってくれ。お願いします」


 頭を上げた星恋に、今度は黎翔が頭を下げて頼み込む。誠意のお返しだ。


「信じてくれて助かったよ。では案内しよう」

「よろしくな」


 星恋が黎翔のお願いを承諾し、黎翔は顔を上げる。そのまま星恋が歩くのについて行こうと歩き出し.....


「あ、御織はどうすんだ?」


 この場にいるもう1人の恩人の存在を思い出し、振り返って質問する。


「アタシはパース。行ったら面倒くさそうだし」

「だろうな。言うと思っていた」


 軽いノリで返事をする御織に対し、星恋はため息半分に呆れ顔でそう呟いた。


「てなわけでここで一旦お別れかな。じゃ、2人ともまたね〜」

「あぁ。助けてくれてありがとな、御織。この恩はいつか必ず返すよ」

「おっ、言ったな?言質取ったからね?楽しみにしてるよ、にはは!」


 そうして黎翔と御織は、笑顔で別れた。


──────────────────


「.....さ〜て、と」


 至る所に窪みができ、巨大な『ボス』が暴れて更地になった道路上に一人残された少女は、ぐいーっと背伸びする。


「.....ようやく世界が動き出す音が聞こえた」


 薄らと笑みを浮かべ、天高く輝く太陽に手を伸ばしながら呟く。

 指の合間から差し込む陽光が、いつもより美しく見えた。思わずその光を凝視する。


「あの光を.....アタシはいつまで守れるかな」


 憂いを孕んだその声は、誰の耳にも届かず消える。心の内に抱える不安から生じる弱音は、なんの意味もなく陽の下に溶ける。

 だが、彼女にとってはそれでもよかった。たとえ誰も聞いていなくとも......


「太陽は、いつでもアタシを見てるもんね」


 平和の象徴であるその光を、惜しむように眺めながら、少女は僅かに微笑んだ。

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