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魔女騒動以来、俺の生活に劇的な変化は、まあある訳ないか。
外出も出来ないというか、外に出たいともう言えなくなったし。
あんなことがあったのに、また街に出たいなんて、さすがに言えないだろう。
そんな時だった。
「狩り?」
「どうですか、殿下?」
「反対です」
リズが間髪入れずに反対してきた。
僕が返事をする前に。
「私は反対です!」
いや、そんなに強調しなくても。
でも気になるから、リズに質問してみた。
「ええっと、リズは何で狩りに反対なの?」
ルスがたじろいているから、俺が聞くしかないようだからだ。
「危ないからでございますわ」
危ないって、狩りはその危険を除去する目的でするんじゃないのかな?
危ないって言ったら、乗馬の練習だって危ないだろうし。
それにもしかしたら、この世界の貴族のたしなみとして、狩りをするのかもしれない。
そうだとすると、ちょっと残酷なような気がする。
だって、目的が狩猟ではなく、趣味なんだから。
そう思うと、何だか嫌な気がする。
「殿下に必要な経験だ」
おお!ルスが立ち直ったようだ。
「必要なのは認めますけど、この地は辺境です。中央とは訳が違いますわ!」
立ち直ったと思ったら、もう怯んでいる。
「リズ」
「はい、何でございましょうか、おぼっちゃま」
本当に、よく態度を変えられるね。
感心するよ。
でもね、一瞬だけど眉がピクリと動いたのを、俺は見逃さなかったよ。
クワバラクワバラ。
「何事も経験だと思うよ。だから、許して、リズ」
とりあえず、何かあったらリズの手を取る俺だった。
普通なら、セクハラだろうけどね。
でもリズの手って、少しひんやりしているんだよなあ。
冷え性かな?
すると、意外な反応があった。
「そんな!そんな!そんな!」
どうして、絶句するんだ?
「おぼっちゃまに、おぼっちゃまにお許しをするなんて、リズには、リズには、恐れ多くてとても出来ませんわ!」
リズは俺の手を振り払い、顔を覆ってしまった。
ええっとさ、何のお話し?
「ああ、そうですわ!」
リズは手を叩き、何かを思いついたようだ。
ホント、ころころ変わるね。
女心と秋の空って言うけど、リズの方がすごいと思うな。
それで、何を思いついたんだろう?
「司祭さまをお呼びいたしましょう」
「え?何で?」
「おぼっちゃまの告解です。リズごときが、おぼっちゃまの告解を伺っていいはずはございませんわ!」
こっかい?
国会?
ああ、告解か。
俺、そんなこと言ったかな?
「リズ」
「ああ、おぼっちゃまは本当にご成長なさりましたわ!」
「ねえ、リズ?」
「自ら告解をしたいなんて、リズは、リズは、涙が出るほど感激いたしましたわ!」
本当に泣いていやがるよ、この人。
「さあ、おぼっちゃま!」
「え?」
「準備いたしましょう!」
「な、なにを?」
「そうですわね、まず何からしたら」
するとマリーさんがリズに近付き、余計なことではなく、リズに助言をした。
「まずは、身を清めないといけません」
「ああ、そうでしたわね。湯浴みの用意をお願いね」
「かしこまりました」
マリーさんはスカートを軽く摘まみ上げながら頭を下げ、早足で浴室に向かった。
その後ろを、少女メイドが同じようにして走っていた。
その健気な姿を見送ると、俺は盛大にため息を吐いた。
「リズ?」
「少々、お待ちくださいませ。リズが完璧に、おぼっちゃまのお身体をお清めいたしますので」
肝腎のルスはと言うと、いつの間にか姿を消していた。
逃げたか。
仕方が無い、狩りは諦めよう。
今はその、告解対策だ。
面倒だな。
というか、何をどうすれば狩りの話から、告解になるんだ?
狩りの前に、その告解をしないとダメなのか?
やはり、宗教は分からん。
俺はこうして、あの絶望的なまでにぬるいお湯に浸かることになった。
まだ、日が高いのに。
お清めを済ませた俺は礼拝堂に赴き、わざわざ屋敷までやってきた司祭さまの前で、いわゆる告解をする羽目になった。
幸いだったのは、俺と同席しようとしたリズを、司祭さまが礼拝堂から追い出してくれたことだろう。
リズは抗議したけど、信徒による告解に聖職者以外の同席は認められませんよと司祭さまにたしなめられると、リズは諦めたようだ。
その時のリズの後姿は、ちょっと可哀そうだったけど。
時折後ろを振り向く姿は、ちょっと胸が痛くなった。
いや、同情は禁物だ。
でも俺は、何を告解すればいいんだ?
適当にでっち上げるか。
どうせ、色々とやらかしているし。
ネタはいくらでもある。
罰が当たるかな?




