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終末の魔女  作者: せいじ
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 あれから、特に変化はない。

 屋敷が襲われることもなく、いたって平穏だ。


 賊は全員捕らえましたから、これでもう安心ですと訓練相手の兵士に教えてもらった。


 女性が居たはずだけど、その人はどうなったのと聞いたけど、首を傾げるだけだった。


 となると、魔女は捕えていないということか。


 では、あの魔女はどうしたんだろう?


 誰に聞いても、首を傾げるだけだった。


 もちろん、ルスに聞いても曖昧で、リズに聞いてもはぐらかされるだけだった。


 まあ、子供に教えても仕方が無いと思われているのだろうか。


「リズ」

「はい、何でしょうか、おぼっちゃま?」

 授業を終え、教師が部屋を去った時を見計らって、リズに質問してみた。

 なんとなく、マリーさんやルスが居ない時がいいと、そう思ったから。

「リズって、なんであんなに強いの?」

「まあ!」

「え?」

 リズは頬を両手で挟み、何だか驚愕している風だった。

「おぼっちゃま」

「うん」

「リズは・・・」

「うん、リズは、何?」

「リズは」

「?」

「は、」

「は?」

「は、恥ずかしゅうございます!」

 首を左右に激しく振りながら、何だか身もだえしていた。

 顔や耳まで赤くなっていた。

 でも、何が恥ずかしいのだろうか?

「恥ずかしくないよ。だって、リズはカッコ良かったから」

「まあ!!!!」

「リズ?」

「リ、リズは!」

「うん」

「おぼっちゃまの前で」

「前で?」

「あんな、あのような!」

 だから、何なんだよ?

「あのようなはしたない姿をおぼっちゃまの前にお見せしてしまうなんて、リズは、リズは、リズは恥ずかしくて恥ずかしくて、もう死んでしまいますわ!」

「え?」

「もう!もう!」

 あ、これはまずいかも。

「もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もう!もうっ!!!・・・・・・・・・・・・・」

 うん?終わった?

「おぼっちゃまのえっち!」

「え、えええええええ?」

 リズは赤くなった顔を押さえながら、部屋の外に出て行ってしまった。

 俺は一人になった。

「失礼いたします」

「ああ、どうぞ」

 入れ替わりに入室してきたのは、マリーさんだった。

 こんな時まで、俺を一人にしてくれないのか。


 ふと、そう感じた。


 マリーさんは珍しく、少女メイドを伴っていた。

「お片づけをいたします」

「ああ、うん、お願いします」

 無言で片づけをするマリーさんと少女メイド。

 何となく、居たたまれなくなっている、俺。

 何か、言ってよ。

 無言って、結構辛いよ。

 片づけぐらい、手伝わせてよ。

 手持ち無沙汰って、結構辛いよ。

「申し訳ございません、殿下」

「え、な、何が?」


 心の声が漏れたのか?

 心を見透かされたような気持ちになった俺は、すっかり動揺してしまった。


「奥さまは体調が優れないご様子ですので、しばらくお席を外させていただきます」

「うん、そう。リズにはゆっくりするようにと伝えて」

「かしこまりました」

 荷物を持った少女メイドは、ぺこりと頭を下げると部屋から出て行った。

 少女メイドとは一言も話していないし、何なら名前すら知らない。

 というか、まだ子供だよね、あの子?

 児童福祉法に引っかからないかな?

 マリーさんはと言うと、いつもリズが立っている位置に立っていた。

「マリーさん?」

「マリーで結構でございます。何でしょうか、殿下?」

 圧がすごいんだけど。

 俺、何かした?

 ああ、リズを困らせたということかな?

 う~ん、どうしよう。

「先生、まだかな?」

「少々お待ちください」

「・・・・・・・・」 

 え?

 もしかして、それだけ?

 後どれぐらいで来るとか、それはないのかな?

 まあ、いい。

 ならいっそ、マリーさんに聞くか。

「マリーさん」

「マリーで結構でございます。何でしょうか、殿下?」

 すでに挫けそうになっている、俺。

「ええっと、リズって強いの?」

 何だ、その聞き方は?

 聞き方って、あるだろう。

 でも、マリーさんの反応は意外だった。

「はい!お強くていらっしゃいます!」

 ああ、そうだった。

 マリーさんって、リズ信者だったか。

 とても嬉しそうだ。

 リズとは違う意味で、頬が赤く染まっていた。

「どうして、リズはあんなに強いの?」

「もちろん、奥さまだからです!」

 まるで、当然と言わんばかりの態度だ。

 と言うか、答えになってないけど?


 う~ん、質問の仕方が悪かったのかな?

 でも、マリーさんはあの場に居なかったから、話がかみ合わないのかな?


「この前の魔女と戦った話、マリーさんは知ってる?」

「マリーで結構でございます。もちろん、承知いたしております。使用人の間では、知らぬ者はおりません」

 皆、知ってるんだ。

 暇なのかな?

 それとも、娯楽に飢えているのかな?

 一応、念のため確認しておくかな。

「じゃあ、リズが魔女と戦ったのは、知ってる?」

「?」

「ええっと、知らないの?」

「殿下と旦那さまが共闘して、魔女を退けたと伺っておりますけど?」

「え?何それ?」

「殿下が身を挺して、奥さまをお守りしたと、そう伺っております」

 ええっと、誰情報?

 フェイク?

「リズが僕を守ってくれたんだけど?」

「はい、伺っております」

 矛盾しているけど?

 どうも、話がかみ合わない。

「ええっとね」

 真実を話そうとしたら、教師が入室してきたので今は諦めることにした。

 でも、誰だそんな噂を撒いたのは?

 リズがどれだけ頑張ったのか、知りもしないで何なんだ?

 でも、前世でもよくあったなあ。


 仕事が出来る人の悪口を吹聴して回る人が居て、しかもそれに乗っかる人も居た。

 おまけに、人の功績を横取りするような、最低な奴。

 しかも、それに乗らなかったら、次の日には俺も悪く言われるようになる。

 上司から、同じ仲間なんだから仲良くしろと注意されたときは、面食らったけど。


 だから、リズの功績はきちんと知らしめないと。

 だって、俺は何もしていないんだから。


 一応、俺はリズの上司になるから・・・・・・・・なるよね?

 一応上司としては、部下の功績はきちんと賞しないといけないと思う。


 もっとも、俺は未だにこの屋敷に努める使用人たちのことを、まったく知らない。


 何なら、自分の立場も良く分かっていない。


 いや、この際自分は後回しだ。

 

 前世でも、今でもだ。


 でも、どうすればいいんだろうか?

 

 リズのあの調子じゃ、俺がリズを褒めた瞬間、彼女が何をするか、あるいは何をされるか分からない。


 いや、この際だからそれは我慢しよう。


 せいぜい、息が苦しくなる程度だ。


 よく、巨乳は凶器だと言われるけど、それは本当だった。


 本当に、命の危険がある。


 よく、絞め技は気持ちがいいと聞くが、苦しいだけだろうと思う。


 苦しいのは、やっぱり嫌だな。


 手加減してくれないかな。


 もしかして、あれで加減しているとか?




 死にはしないよね?

 




 今度死んだら、どの世界に行くんだろうか?

 

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