勇者とは 4
「よぉ楠木。待ちくたびれたよ」
楓たちが勇者たちの元へとたどり着くと、勇者たちのリーダーであり過去に日向に告白して見事に玉砕したことのある須藤がとても嬉しそうに笑いながら楓たちのことを出迎えた。
当たり前だが、嬉しそうと言っても純粋に喜んでいるわけではなく、どうやっていたぶってやろうかななどと考えていそうな様子だった。
「須藤か。随分と禍々しいオーラを放ってるようだな」
「結婚式以来だな。チッ、また新しいのが増えてんな。本当に俺様をイライラさせるやつだ」
「ん? 私のこと? カー君の新しいお嫁さんになりました。ミリアって言いまーす! よろしく!」
どうやら須藤は楓にまた新しい妻ができたことが気に食わないのか舌打ちをしながら楓のことを睨み出した。
そこにミリアはワザとらしく入っていき、可愛く元気な笑みを浮かべて須藤たち勇者に自己紹介を始め出した。そんなミリアに後ろの方からナイフが飛んできたがミリアはなんでもないようにそのナイフを受け取ると適当に近くにいた帝国兵の頭に向かってそのナイフを投げ返した。
クリーンヒットである。
「ミリアはそちらのお仲間にもいると思うが魔王候補の一人だったやつなので適当な攻撃は無駄だぞ?」
「あの忌々しい魔王候補か。まぁいいぜ。ここにお前たちがきた時点で俺たちの勝ちは決まってるんだからよ!」
「自信満々だな? 何か秘策でも?」
「あぁ、連れてこい!」
須藤がそう言うと後ろの勇者たち数人が近くにあるテントの中へと戻っていき、しばらくするとなんの武器も持たない拘束された子供を数人須藤の前へと連れてきた。
子供達は全員10歳前後で勇者に乱雑に投げられてどこか擦りむいたのか痛そうにしていたが、泣くとさらに痛い目に合うのがわかっているからなのかなんとか歯を食いしばって泣かないように耐えていた。
「お前たちが一歩でも動こうものなら一人ずつこいつらを殺していく。それが嫌ならせいぜい俺たちにいたぶられてくれよ。まさかデスハイム王国の英雄様が子供達を見捨てるなんて真似するわけないよなぁ?」
須藤は泣きそうな顔をしている子供達を見て機嫌を取り戻したのか、楓たちに向かって好き放題言い始めた。
「最低……」
思わずと言った様子で日向がそう呟いた。
他の面々も口にはしていないものの須藤たち勇者を見る目がだんだんゴミを見るようなものへと変化していき、楓さえも武器を持つ手に力が入っていた。
「あぁ⁉︎ 佐倉か。はっ! だからあの時俺に大人しくついてきて腰振ってりゃいいものを! だが、もうゆるさねぇぞ? ここにいる男勇者全員で楽しんだ後は帝国兵の、最後には魔物どもの性欲のはけ口になってもらうから楽しみにしとけよ?」
「救われないね……」
「ウゼェな。ちょっと顔が可愛いからって俺たちを見下しやがって。いいよなぁ! お前は! それだけ顔が良かったら楠木にただ腰振ってるだけで守ってもらえるんだから! 俺たちの苦悩も知らないで、よくそんなことが言えるな!」
「お前たちに苦悩? へぇ、人の結婚式を邪魔したり味方を殺して楽しんでいるものの苦悩は色々とあるんだな」
「なんだと? お前、俺たちが人質を抱えてるのは知ってるよな? あぁ、わかった。どうせ殺せないとでも思ってるんだろ? はっ、今更子供を殺すのに俺たちが躊躇するとでも思ったかよ!」
須藤は楓たちが思っている以上に余裕ぶっているのが気に入らないのかだいぶ言葉が荒くなっており今にも子供達に自分の持っている剣を突き刺そうとしている。
他の勇者たちも後ろで須藤のことを見守りながら、楓たちのことを睨んでいた。
特に後ろからは汚い野次が飛んできており、楓的には今すぐにでも日向たちには耳を塞いで欲しいのだが本人たちはそんな言葉はもとより聞こえていないかのように気にしている様子がなかったため楓も特に何も言うことなく須藤の方に視線を戻した。
「諦めろ。お前たちはもう詰んでるんだよ。そんな人質程度で俺たちを止めようとしたのが間違いだったな」
「なっ⁉︎ お前、子供を見捨てるのか?」
楓の諦めたような口調を聞いて須藤が慌てた様子で楓のことを咎める。
力では楓に勝てないことは以前の攻城戦で痛いほど理解しているのでこうして搦め手で楓たちのことをいたぶってやろうと考えていた須藤たち勇者であったが、それが効かないとなると須藤たちに勝ち目はない。
そんな考えをしたのは須藤だけでなく他の勇者たちも同じようで皆一斉に慌てたように周りをキョロキョロと見始めた。
「須藤! 一人見せしめに殺してやれ! そうしたら楓たちも動きを止めるだろ!」
「そうよ! 須藤くん、やっちゃって! このままだと佐倉に復讐できないじゃない!」
「あぁ、わかってるよ! 残念だったな。これも全部目の前にいる男のせいだ。恨むなら、死んでからあいつを恨みな」
後ろの勇者たちに焚きつけられて須藤はちょうど目の前でうずくまっていた少女の髪を引っ張り無理やり立たせると、自分の剣をその少女の首に当ててそれだけ言うと思いっきり剣を振りかぶった。
「じゃあな!」
「お前がな」
その剣が振り下ろされ、後少しで少女の体と首がお別れしてしまうところで楓が一瞬で距離を詰めてそのまま須藤の首を刎ねた。
目の前に子供がいるためあまり刺激的にならないようにそのまま須藤の頭と体を楓のストレージの中にしまうと、楓は少女を抱きしめてポンポンと体を揺すって「もう大丈夫だ」と伝える。
「『無限の伝説』およびその協力者に告ぐ。これより、勇者の排除を始める。一人残らずここから逃がすな!」
「「「「「了解!」」」」」
須藤が一瞬で殺されてしまい、まだ頭が働いていない勇者たちのことをにらみながら楓は仲間たちに向かってそれだけ言うと自分も目の前にいるクズを片付けるために剣を振るうのであった。




