お風呂上がり
「お疲れ様〜。大変だったみたいだね」
「た、耐え切ったぞ。俺は、やり切った!」
「うん、すごいね」
アルは楓のことを見て微笑みながら褒める。
先ほどまで日向達と一緒に露天風呂へと入っていた楓であったが、流石にもうまずいと全員の体を洗い終えると同時に露天風呂から退却し、アル達が休憩しているところまで避難してきた。
あと十秒でもあの場にいようものならきっと楓は爆発していただろうが、ステータス∞を駆使してなんとか耐えきることに成功した。
「なんとも無駄な力の使い方だな。向こうが了承しているのなら、そのまま襲えばいいのに」
「なんか、男としてあそこで襲うのは違うなと思ったんだよ」
楓の話を聞いてルシフェルまでもが呆れた様子でそんなことを言っているが、楓のささやかなプライドがそれを許さなかった。
すでに何回も体を重ねている仲でも、最低限の礼儀というものは必要だと楓は考えている。たとえ日向達がいつでもどこででも自分の体を好きにしていいと言ってく
れたとしても楓はそれを破るつもりはなかった。
「だから、そういうのは簡単にすることじゃないんだと思う。まぁ、いまさらな気もするけどな」
「そうだね。でも、カエデのそういうところはカッコいいと思うよ? きっと彼女達もカエデのそういうところに惹かれたんだろうね」
「だろうな。普通、強大な力を得たものは欲望に流されやすいからな。我やアル、セバスもそこそこのレベルの力を得ているがカエデはそれ以上だ。きっと、我らとは見えている世界が違うのだろうが、それでも自分勝手な行動をしないのは非常に好ましいところだと思うぞ」
アルもルシフェルも楓の気持ちを聞いて素直にすごいと賞賛する。
アルもルシフェルも強大な力を持っていながらも落ち着いているように見えるが、それは何百、何千年と生きてきたからであって二人にも傲慢だった時期はあった。
特にドラゴンや魔族は好戦的な者も多いため他に力を持っていながらも傲慢で生意気な者は非常に多く、二人はそんな者達の行く末を見ているため学習しているが、楓はそうではない。
楓は最初から真面目で、少しメンタルが弱く、自重をすることが出来ないところがあるが、それでも一応は常識的な範囲で収まる?範囲でしか暴れていない。それも半分お遊びみたいなもので本気ではない。
勇者達を見ていても分かる通り、人が急に強大な力を持つと普通はあぁなってしまうが故に二人は楓のことを褒めたのだが、当の本人は当たり前のことだと言いながらコーヒーを口に運んでいった。
「ふー、いいお湯だったね!」
「えぇ、また入りたいですね」
「ですね。ご主人様に体を洗っていただいたおかげか、すごく体の疲れが取れましたしね」
「そうね。カエデ、体を洗うのとっても上手だったわね」
「マスターは爆発寸前でしたけどね」
「私たちの体で興奮してくれたのか?なんだか、嬉しいな」
「だね。ダーリン可愛かった」
風呂から出てきた日向たちは全員満足そうにしながらタオルで髪の毛を拭いていた。
ちなみに、メイドたちはというと現在夕食の準備をしてくれているので、露天風呂は破壊せずにそのまま残しておいてある。後でアウラたちにもゆっくりと入ってもらうつもりである。
日向たちが露天風呂から出てきたこともあって一気に楓たちの周りは賑やかになり、日向や今回の元凶であるナビがアルやルシフェルたちにいかに楓がテンパっていたかを説明し出して、楓は終始ずっと顔を真っ赤にしていた。
それに何が恥ずかしいかというと、それを聞いていたのがアルとルシフェルだけでなくセバスやアウラたちメイド陣にも聞こえており、ニコニコと微笑ましそうに楓たちを眺めていたのが楓の精神をガリガリと削っていった。
「お前ら……いつか絶対にやり返してやる」
「だって、楓くんが私たちをいじめようとしてるよ?」
「安心してください。もし旦那様がその気ならあの場で色々とイタズラされていたでしょうから」
「それもそうだね。って、そのイタズラなら私大歓迎なんだけどな?」
「わ、私もよ。さっきはああいったけど、楓はもう少し獣になった方がいいわ」
ルミナは若干顔を赤くしながらも楓に向かってしっかりとそう言い切る。
女性の方から獣になっていいと言われてしまい、楓は一瞬でさっきの言葉を撤回したくなってしまったが、それでもこれからも節度のある夫婦生活を送っていきたいと切実に思うのであった。




