帰宅 1
「よし、準備もできたし行くか」
「「「「おー!」」」」
楓の出発の合図とともに日向たちの元気のいい返事が帰ってくる。
昨日は爆発寸前だった楓も流石に一日も経てば鎮まり、逆に昨日のおかげで疲労が何処かに飛んで行ったと思えるほどには回復していた。
もう野営もかなりの数をこなしているため皆慣れた手つきで準備を終わらせ、昨日はすぐに就寝し、今朝は日が昇ると同時に全員目覚めていた。非常に健康にいい生活習慣に楓も日向たちも大満足である。
そんなわけで『無限の伝説』のメンバーは朝から全員元気がよく、だいたい九時ごろになる頃には全員の準備が完了して、ルーナたちがいた村へと出発することが出来た。
「ルーナ、この先でいいんだよな?」
「あぁ、しばらく進むと村らしきものが見えてくるはずだ」
「りょーかい。大丈夫だとは思うが、全員警戒は怠らないようにな。魔物の反応があったら適時対応していく感じで頼む」
楓はルーナから村への行き方を教えてもらいながら全員に指示を出して森の中に入っていく。
日向たちはこういった森の中の探索も慣れているためそこまで心配はしないが、マリーやメイド陣は圧倒的に経験値が足りていないため万が一がある。まぁ、万が一があったところで楓がなんとかしてしまうのだが……
それでも楓としては全部頼られるのも本人たちのためにならないと考え、今回はメイドやマリーたちを一番外側で警戒させている。
「ご主人様、右から敵が来ます!」
「サリーの得意武器はミルと同じく弓だったよな。ここからいけるか?」
「はい。ミル様よりかは数段実力は落ちますが、それでもこの距離なら撃てます」
「そうか、なら頼む」
「かしこまりました」
楓たちから見て右側を警戒していたメイドの一人であるサリーはミルと同じく弓を主要武器としている後方支援型で、その分他のメイドたちよりも索敵に優れている。
そのおかげで今回もサリーはメイドの中で一番最初に気づくことが出来たのだ。
楓に頼まれたサリーはとても嬉しそうにしながら気合十分といった様子で以前楓からもらった弓を構え、魔物がやってくるであろう方向を鋭く見据えて走りながら矢を飛ばした。
ミルは当然のことサリーもすでにジッと止まって矢を放つ必要はなく、走りながらでも、飛びながらでも正確に相手の弱点を狙えるところまで上達していた。そのおかげで今回も移動中にパパッと倒すことが出来て、非常に時間短縮に役立った。
「流石だサリー。練習頑張ってるんだな」
「は、はい!ありがとうございます!」
サリーは魔物を倒すことが出来たことよりも主人である楓に頭を撫でられながら褒められたのが嬉しいのか栗色のストレート髪を揺らせながら嬉しそうに笑みを浮かべている。
ナビにささっと確認に行ってもらったところ、サリーが倒した魔物はレッドベアーのようだった。
レッドベアーはCランクパーティー推奨の魔物でソロならBランクくらいじゃないと逃げたほうがいいと言われている魔物で一般的にはそこそこ強いのだが、『無限の伝説』のメンバーでもあり、楓のメイドでもあるサリーからすればその程度、一撃で仕留めるのになんの苦労も必要なかった。
「さすがサリーです!私も頑張らないと!」
「ですね。負けてられません」
「私も頑張る!」
「次は私が殺る。そしてご主人様に褒められたい」
サリーが褒められている姿が羨ましいのかメイドたちは自分を鼓舞するようにそう言って気合いを入れていた。
楓はその姿を見て若干苦笑気味になりながらも、他の四人のメイドたちの頭も撫でる。
すると、他の四人も嬉しそうに笑顔になりながら、気持ち良さそうに目を細めて楓にされるがままにされていた。
メイドたちは五人とも少し楓たちよりも年下で12歳前後で召喚されているため、絵面的にはイケメンが幼女五人の頭を撫でている危ないのか危なくないのか非常に判断のつきにくい状況になっているのだが、当の本人たちは幸せそうなので全く問題ない。
ただ……
「あ、ずるい!私も撫でて!」
「私もお願いします」
「わかったって。みんな撫でるから、こっちに来てくれ」
メイドたちの頭を撫でていたら必然的に日向たちも羨ましがり、声に出したのは日向とミルだけであったが全員物欲しそうにしていたのは楓も気づいていたためまとめて十二人の頭を満足するまで撫でることにした。
当然、その場で足を止めることになり普通の冒険者なら森の中でずっと同じところに止まるなど正気の沙汰ではない行動であるが、楓が十二人の頭を撫でている最中、アルとルシフェル、そしてセバスが虫一匹楓たちの邪魔をさせないように見張りをしていたため特に大きな問題が起こることはなかった。
小さな問題があったとするならば、十二人全員が満足したのは楓が頭を撫で始めてから一時間ほど経ってしまったことだろうが、楓も全員の頭を撫でることが出来て幸せだし、日向たちも楓に頭を撫でてもらって幸せであり互いにWIN-WINだったのでよしとすることにしたのであった。




