結婚式 6
「ちょーっと待ったぁ!」
勇者の代表である須藤が楓の言葉を聞いてそれを否定するような声でそう声を張り上げた。
全く空気を読まずに楓に向かって自分が正義だみたいな顔をしているのを楓は一種の才能だなと呆れるのを通り越して尊敬すら覚えるほどである。
案の定、勇者以外の周りの人たちや楓の後ろで先ほどまで嬉し涙を流していた日向たちは殺気なんて可愛らしく思えてしまうようなドス黒いオーラを出して今にも勇者を殲滅してしまいそうな感じで、楓は思わずため息をつきたくなった。
「なんだ? せっかくみんないい感じだったのに水を差すなよ」
「なんだではないだろ!僕は君と日向さん達の結婚に異議を申し立てたい!」
「はぁ……とりあえず話だけ聞いてやる。っと、その前に勇者であるお前たちに一つだけ条件をつけさせてもらう。絶対に周りの人たちを巻き込むな。もし、他の人たちに危害を加えるようであれば、俺はお前たちと同じクラスメイトであったとしても、容赦なく殺す」
楓は真剣に須藤に向かってそう言い切った。
国民は楓のその真剣な表情と、国民を思いやる気持ちに先ほどと同じように凄まじい歓声が起こるが、勇者たちはそれが気に入らなかったのか須藤を始め何人かは舌打ちをして楓のことをにらんだ。
「なに偽善者ぶってるんだい?君は、日向さんたちを無理やり自分のものにしておきながら……」
「まだ言ってるのか?お前この前のことで反省はしなかったのかよ。お前のせいでうちの可愛い可愛い日向が泣いたんだぞ」
「嘘だ!あんなの芝居に決まっている!なぁみんな!」
「「「おぉぉぉ!!!」」」
「もうやだこいつら……」
勇者たちは勝手に盛り上がって楓を悪者のように扱う。
それを見ていた他の人たちは今にも殴りかかりそうな感じで拳をぎゅっと強く握りしめていたが、この場でいまの勇者たちに敵うものは楓たちとあとごく一部の人間だけなので他の人たちはなにもできないまま楓と須藤たちの話を聞くだけであった。
ちなみに、現在の様子もスクリーンで全国民に生中継で見てもらっているためどちらが悪者なのかは一目瞭然である。
「それで、お前たちはなにを要求するんだ?」
「僕たちは君との決闘を申し込む!思えば君は、日向さんや他の人に戦わせているものの君自身ではなにもしていない!そんなずる賢い奴に、日向さんを、そして他の美人な女の子たちを一緒にいさせるわけにはいかない!」
「ねぇ、カエデ。あいつら殺していいわよね?」
とうとう日向たちも我慢の限界にきたのか、ルミナが代表してどこに隠し持っていたのかアイテムボックスの中から自分の剣を取り出してそんなことを言っている。
楓が気がつくと他の妻たちも同じように自分たちの武器を取り出して目が殺気で据わっていた。
「ちょっと待とうか!今回は俺がなんとかするから。落ち着こう。な?」
「今ここで私たちにねっとりとしたキスしてくれたら考えないでもないわ」
「ハードルが高いんじゃないかなぁ⁉︎ これ生中継だぞ?俺に死ねと?」
「いや、なの?」
楓に渋られてルミナは本気なのかワザとなのかはわからないが目をウルウルさせて泣きそうな表情をする。
そんなことをされては楓も断るに断れない。
「嫌じゃありません。喜んで皆さんとキスをさせて頂きます!」
「「「「「「「やったぁ」」」」」」」
「君たちこの状況を楽しんでるよね?俺、めっちゃ大変なんだけどなぁ⁉︎」
楓は心の底からそう叫ぶが日向たちはこれからねっとりとしたキスをされることを喜び、国民たちも先ほど生で見られなかったキスシーンをもう一度見られることに喜び、逆に勇者たちは楓を親の仇にもそこまでの殺気は送らないだろうと言うほど殺気をバンバン出して不快感を表した。
が、楓は今は勇者たちに構っている余裕などなく日向たち一人一人と公然の場でマジモンのねっとりとしたキスをしていく。
その瞬間、国民からは興奮するような叫び声が、勇者たち(特に男)からは精神が破壊されんほど悲痛な面持ちで泣き崩れている者もいた。
「もうお婿にいけない……」
「大丈夫だよ楓くん!私たちが一生ついていくから!」
一方で羞恥プレイを強要された楓は顔を真っ赤っかにして恥ずかしがり今すぐにでも穴に埋まりたい気持ちになるが、その気持ちを勇者にヘイトを向けることにした。
「お前らのせいでひどいことになったじゃないか!」
「うるさい!お前なんて死んでしまえ!」
「「「そうだそうだ!」」」
「もういいわかった。そこまで言うんだったら決闘でもなんでも受けてやるよ。万に一つもないが、そっちが勝ったらどうするんだ?」
楓は勇者にもうなにを言っても無駄なことを悟るとさっさと片付けて結婚式を続けようと勇者たちの要求を飲み決闘を行うことにした。
「もし僕たちが勝ったら今すぐ日向さんたち全員を僕たちに渡してもらう。日向さんは僕と結婚してもらうし、他の六人もここの誰かと結婚してもらうことにする」
「お前、自分でなにを言ってるのかわかっているのか?そんなことしてるから日向たちから嫌われるんだぞ」
思いの外気持ち悪い欲望全開の要望に楓は全身に寒気がしたのか体をさすりながら本気で須藤たちを心配するような目でみる。
楓がちらっと後ろを見るとバルバトスは座っている椅子の手すりがバキッとわれていたし、日向たちも気持ち悪かったのか楓と同じように体をさすり、こう言うのに免疫のないミル、ルミナ、そして意外にもルーナも目に涙を浮かべて泣いていた。
それを見た瞬間、以前と同じようにプチンと楓の中で何かが切れた音がした。
「いいだろう。だが、もし俺が勝ったらお前らは一生俺の目の前に姿を見せるな。そして、この国から出ていけ。いいですよね?」
「構わん。勇者たちは少し図にのりすぎた。いくらシュトガルの迷宮で最高記録を出したからと言って貴様らみたいな外道をこの国に入れるわけにはいかん。あぁ、教会に頼ろうとしても無駄だぞ?私は今決断した。教会が我らの敵になろうとも、貴様らは絶対国外追放だ。覚悟しておけ」
バルバトスのその言葉を聞いた国民はまたまた盛り上がり、「さすが王様だ!」とか「稀代の賢王だ!」とか言ってバルバトスを賞賛する声で溢れかえった。
「ふんっ!いいだろう。それで、場所とルールはどうするんだ?」
「ここは人が多い。異界を創るからそこで勝負しよう。以前と同じ攻城戦だ。俺は一人、お前ら勇者は全員でだ。あぁ、ズルはしないから安心しろ。ミルのおとうさ……国王様に頼んで絶対中立の宮廷魔術師に頼んで不正を見てもらうから」
「なめるなよ雑魚が。まぁ、いいだろう。調子に乗りすぎたことを後悔するんだな!」
「みなさん!そう言うわけで、勇者と決闘することになりました。いい余興になると思いますので、みなさんお楽しみください」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
「はっ!所詮あいつは雑魚でしかないんだ!俺たちの力見せてやるぞ!そして、みんなで美女を楽しむぞ!」
「「おぉぉぉぉ!」」
楓はそう言うと異界をささっと創り勇者たちより先に異界の方へと入っていくのであった。
もちろん、異界での楓対勇者の試合もスクリーンでバッチリ全国民に見てもらうので楓は最後に異界に行く前に余興だと言って入って行くが勇者たちはそれが気に入らないのか最後に捨て台詞をはいてみんなで気持ち悪い気合を入れて勇者たちも異界の方へと入って行くのであった。




