結婚式 1
日向たちが、ルーナとヒストリアの秘密を知り7人で仲良くウェデングドレスを選んでいる頃楓はバルバトスから詳しい話を聞いていたのだが、バルバトスもルーナたちが天狐族だと言うこと以外は詳しく知らないようで、そこから先のことは本人に聞いてくれと言われたので楓とバルバトスはその後、少しだけ話をしてからすぐに解散ということになった。
バルバトスも明日の楓たちの結婚式の最終確認等で忙しいらしく、本来なら楓と話をする時間すら取れなかったのだが、そこは無理矢理空けたらしく楓と別れてからは王だというのにも関わらず、日付が変わるまで色々頑張っていたようだ。
王都全体で見ても、明日からこの国の王族であるミルと英雄である楓、その他かなりの美女たちが結婚することでかなり盛り上がっており、どれだけこの結婚式が注目されているかが良くわかる状態となっている。
楓たちの学院祭の方の出し物のこともあってか、住民たちは楓たちのことをかなり慕っており、住民たちが非公式でだが前夜祭なるものを開催して夜になっても王都はかなり賑やかだった。
ルーナとヒストリアについてだが、事情を聞くのは結婚式が終わってからということで結婚式前夜はお互いの愛情を深めるために8人で色々話をしたり、結婚式のことなど想像して楽しんでいた。
その際に、ルーナとヒストリアの天狐族の姿を見た楓は案の定自制心が崩壊し耳や尻尾をモフモフしまくったが、ルーナたちの限界が来たところで他の妻5人による強制連続キスによって楓の意識も元に戻りプチハプニングもすぐに解決した。
なお、ルーナとヒストリアには天狐族の姿で結婚式に出てもらうことになり、その準備をするために楓は王城をもう一往復することになったが楓からすれば公的にモフモフが認められることを考えれば全く苦ではなかった。
そのせいでバルバトスの仕事が増え、王城では楓を呼ぶ叫び声が聞こえたとか聞こえてないとかでメイドたちが慌てていたが仕方のないことだと楓は割り切ることにした。
「よし、服装OK。注目される準備OK。日向たちを喜ばせる準備OK。今日は頑張るぞ、俺!」
そんな事があってから無事一夜があけた結婚式当日、楓は自分の部屋でとりあえず私服姿で鏡の前に立つと少し緊張した面持ちで気合いを入れる。
なんだかんだ言って楓も人生で初めての結婚式だ。
楽しみじゃないわけがないし、緊張しないわけもない。
なので、自分の部屋にある鏡に向かって一人で気合いを入れていたわけなのだがそれを邪魔する二人がやってきた。
「おはようカエデ」
「やはり、緊張しているようだな」
「なんで同じ家に住んでるのに転移魔法を使って入ってくるんだよ……」
楓は二人の姿を見て苦笑い混じりにそう言ってため息をつく。
そうは言いつつも二人用にテーブルと椅子、そして軽く飲み物を用意してゆっくり話をできる状態を作っているので、本心ではそこまで嫌がってはいないのだろう。
二人もそれに気づいたのか、いい笑みを浮かべて椅子に座って各々飲み物を一口飲む。
「で、どうしたんだ?」
「今日はカエデたちの結婚式じゃん?」
「そうだな」
「僕たちも家族じゃん?」
「そうだな」
「と、いうことで僕たち二人からカエデにささやかなサプライズがあります!」
アルはもったいぶったような言い方で楓にそう言うとルシフェルと目配せをして二人同時に席を立った。
「カエデ、結婚おめでとう。多分、今日君と一緒にいられる時間はそこまで多くないだろうから今君に伝えさせてもらうね。それじゃあルシフェル、せーの!」
アルがルシフェルに合図を出すと、二人して魔力を込めて何やら魔法を発動させようとしている。
二人ともかなり辛そうな表情を見るに相当魔力を消費しているのだろう。これが、攻撃魔法とかだったら多分この国くらいだったら一瞬で消し炭になりそうである。
まぁ、万一暴発しても楓一人でなんとかできるので楓は黙って二人のことを見ることにした。
「カエデよ。我を、この世界へと誘ってくれて、本当にありがとう。カエデのおかげで、我は今こうしてこの世界で楽しく生活する事ができている。本当にありがとう。そして、結婚おめでとう」
「カエデ、さっきも言ったけど結婚おめでとう。僕と迷宮の最下層で出会ったとき、僕を一緒に外へと連れ出してくれてありがとう。あれからもう半年くらい経つけど、すでにたくさんの思い出を作る事ができた。これから僕たちのすることは、普通の人たちがするようなことではない。ただ、君に感謝の気持ちを伝える時に、どうしたらいいか僕たちなりに必死に考えて出した答えなんだ。どうか、受け取ってくれると嬉しいな」
ルシフェルとアルはそれぞれ楓の感謝の気持ちを伝えるとそのままさらに魔力を込めて一つの魔法を発動する。
「「魂の契約」」
「……⁉︎」
「これから僕たちは、どんな未来が待ち受けていようとも、君の力になることを誓うよ」
「我らの魂、カエデに託したぞ。これからもよろしくな」
二人は笑顔で楓に向かってそう言う。
魂の契約とは簡単に言うと奴隷魔法の強力版みたいな感じで、生涯契約主の意を違えないものでまずこんな魔法を使う馬鹿はいないし、まず発動するのに莫大な魔力が必要なため普通なら発動しないのだが、二人は何と言ってもドラゴンと魔王だ。
そのくらい簡単なことなのだろう。
「いいのか?これで、俺から離れられなくなるぞ」
「いいよ。僕はこの命果てるまで君に従うことを誓ったからね」
「我もだ。魔王は一度決めたことは絶対に違えん。これからもよろしくな」
「おう。……って、二人とも目に涙を浮かべてるんじゃねぇよ」
「泣いている君に言われたくないね」
「これは嬉し涙だ。俺は、幸せ者だ」
「「それはこっちのセリフだ(よ)」」
「絶対に後悔させないからな。これからも、仲間として、家族として一緒に笑うんだからな!」
楓がそう言うと、アルもルシフェルも目に涙を浮かべながらも非常に、そう伝説龍が、魔王がするどの笑顔よりも輝く笑顔をその顔に浮かべるのであった。




