秘密 2
「こんにちは」
「カエデか。さっきは驚いたよ。まさか、ルーナ達までカエデと結婚するとは思ってなかったからね。まぁ、明日には間に合わせてみせるが……」
「ありがとうございます」
楓はニッコリほほ笑んでバルバトスに礼を言った。
今、バルバトスの私室には楓とバルバトス以外誰もいないので既に2人とも空気が重いのは感じ取っているが2人ともその話はまだせず、あたり感触のない話をする。
きっと、今バルバトスの部屋に力を持たないメイドや平民が入ってくると空気だけでビビり上がり失禁してしまうだろうが、この部屋は既に楓の結界で楓達以外人を入れなくしてあるので、これからする話を誰かに聞かれることはまずないだろう。
「それで、わざわざカエデがやって来たと言うことは何か私に聞きたいことがあると思っておいていいのかね?」
「はい。ルーナとヒストリアを妻にするに当たって、あなたには聞いておきたいことがあるので」
ここでも、楓の笑みは崩れない。
それに、いつもはバルバトスのことをミルのお父さんと言っているのに対して今は本人を目の前にしてあなたと言っている。
これだけで、既に楓がいつもの優しい楓ではないということがわかる。これに、バルバトスも覚悟を決めたようなため息をついている。
「君も、2人のことを知ってしまったということか」
「はい。さっき、ルーナ達と模擬戦をし終わった後に確認させていただきました。模擬戦の時に、ふと疑問に思ったことがあったので」
「そうか……だが、不思議だな。君なら彼女達に初めてあった時や魔物殲滅戦の時などいつでも彼女達のことを調べようと思えば調べられたと思うのだが?」
「しようと思えば簡単にできましたよ。鑑定スキルを使えば。でも、無闇矢鱈に鑑定スキルを使ってもいいことはないと以前ナビに忠告されていたので、あまり他人のことを鑑定することはしませんでした」
そう、楓は以前……と言ってもナビがまだスキルとして楓の中にいた頃に一度だけ鑑定スキルについて忠告を受けたことがあったのだ。
普通の人の鑑定スキルであるならば本当に表面上の、それこそレベルや人の名前、レベルが高くてもステータスくらいしか鑑定できないのだが楓の鑑定スキルのレベルは言わずもがな∞だ。
どうしても、それ以上のものがたくさん見えてしまうのだ。
例を上げるのならば、犯罪歴や性格、女性でいうならばプロポーションなど、別に知る必要のないものまで楓の頭の中に表示されるのだ。
まぁ、すべて表示しないようにしようと思えば表示されないし、今日まで楓はステータス以上のことを見たことはなかった。
「それで、今日カエデはルーナ達と久しぶりに模擬戦をして、今回たまたま彼女達の異変に気付き、鑑定スキルで鑑定した結果たまたま彼女達の秘密を知ってしまったということか」
「はい。っと、その前にあなたは彼女達についてどこまで知っているのですか?」
「そうだね。彼女達が『獣人』ということ。それと、『神に魅入られた種族』だと言うことだ……!?」
バルバトスが全てを言い終わると同時に、楓は今まで作っていた笑みをなくし、無表情になると同時にバルバトスに向かって殺気を放ち、ストレージから取り出したナイフをバルバトスの首に持っていった。
少しでも楓がナイフを引けばバルバトスの命が失われると言う状態で楓はナイフを止めるが、もしこの状況を他の騎士達が見たら敵わないと知っていても楓に向かって攻撃していただろう。
幸い、この部屋には先ほど言ったように結界が張ってあり、誰もこの部屋には入れないのでそう言った問題はない。
「なぜそこまで知っておきながら、2人に役職という枷を作ってこの国に止めたんだ!もしこのことが教会にでも知られたら彼女たちは迫害されるだけでは済まないんだぞ!最悪、彼女たちは汚い教会の人間に散々犯された挙句、民衆の前に晒されて火あぶりにされていた可能性もあるんだぞ!なのに何故!彼女たちをこの国に止めたんだ!」
楓は明らかに怒気を含めた様子でバルバトスにそう問い詰める。
これがまだ彼女たちと結婚してない、彼女たちのことを好きになっていない状態ならば楓も冷静にバルバトスの話を聞けただろう。
だが、結婚してしまった。彼女たちを好きになってしまったのだ。
「カエデ、少し落ち着け。いつもの君らしくないぞ。何故、この国に止めたのか?そんなの簡単だ。この国が一番『安全』だからだ。他の国ならば、もし彼女たちが獣人だと、神に魅入られた種族だと知った瞬間に教会に破格の値段で売りつけるだろう。だが、この国の、それも騎士団長に宮廷魔術師長という立場なら私が表立って彼女たちのことを守ることが出来る」
「それで、彼女たちに役職を与えたと?」
「あぁ、まぁ最初は一介の騎士、宮廷魔術師として頑張ってもらうつもりだったのだが、2人の努力の成果が実りいまの地位にいるわけだ。あぁ、安心してくれ。この国でも彼女たちの秘密を知っているのは私しかいない。最初は驚いたが、私は生憎とそういう差別を嫌う人間でね。彼女たちを匿う選択をしたのだよ」
バルバトスはさすが国王といったところか楓の圧力に臆しながらもしっかりと楓に事情を説明する。
が、バルバトスが全て話終えた頃には楓のその圧力も全て取り払われいつもの少しダルそうな雰囲気に戻っていた。
「っと、茶番はこの辺でいいのかな?」
「すべてが茶番っていうわけではないですがそうですね。確認したかったことは確認できましたので大丈夫です。でも、よかったです。ミルのお父さんの首をはねる事なくて」
「そこは本気だったのか!?」
「冗談ですよ。さすがにミルのお父さんを殺すのはなしです。場合によっては軽蔑はしましたが……」
「なんだろう、そっちの方が怖いよ」
バルバトスは苦笑いをしながらそう答える。
まぁ、今回は色々と事情がありそうなので楓は軽蔑したりすることはなかったのだが、これから詳しい事情を聞こうと楓はバルバトスに促されるまま椅子に座り自分の分とバルバトスの分の紅茶を用意するのであった。




