秘密 1
「さて、じゃあミルのお父さんに報告しに行くか」
「今から行くのか?」
「あぁ、じゃないと明日の結婚式に間に合わないからな」
「え?それって私たちも出られるの?」
楓とルーナたちの結婚が決まってから数分が経った頃、観客たちも楓たち本人も少し落ち着いたところで楓がルーナたちにバルバトスのところへと向かうことを提案した。
が、ルーナたちは明日に控えた結婚式には出られるとは思っていなかったのか自分たちも結婚式に出られることがわかった時には驚いた様子で楓に確認をとった。
普通に考えて結婚式が明日に迫っている中、後二人も追加で色々用意するなんて不可能に近いことなのだが今回の主催者がバルバトスなので多少の無理を言っても大丈夫だろうと楓はそこまで心配していなかった。
「それよりも、日向たちに知らせないとな」
「ん?何を?」
「…お前、絶対に俺たちのこと見てただろ?」
楓がちょうど日向たちに会いたいなとそう呟くと楓の後ろに転移魔法の魔法陣が現れてそこから楓が先ほど名前を呼んだ人物が現れた。
あまりの都合の良さに楓はため息交じりにそんなことを言うが、楓たちのことを見ていたのならば色々説明する手間が省けたので楓は気持ちを切り替えて明日の結婚式について日向と話し合うことにした。
「まぁね。みんな二人が楓くんのお嫁さんになるのおめでとうって言っているから問題はないよ。それよりも、今から二人の分のウェデングドレスとか準備しないといけないんでしょ?私たちもついていくよ」
「助かる。俺はちょっとミルのお父さんに用事があったからルーナたちのことは頼んでいいか?」
「うん。ルーナたちもそれでいいよね?」
「ほ、本当に明日の結婚式に出られるのか?」
ルーナ達は楓と日向の会話を聞いても今だに信じられないのか、再度確認するように楓達に大丈夫なのか確認をとった。
「大丈夫じゃないかな?ルーナたちだって楓くんと一緒に結婚式に出たいでしょ?」
「そ、それはもちろん」
ルーナは当然だと言わんばかりにほとんど反射で日向の質問に答える。
ヒストリアも横で大きく首を縦に振っていたのでそちらもルーナと同じ感想なのだろう。
なぜだか、二人の様子を見て無性に嬉しくなった楓だが、ここでにやけてしまうと絶対にまだ楓達の様子を見ている観客達にボロカスに言われてしまうため頑張って顔の筋肉に力を入れて無表情を装った。
だが、観客達は騙せても日向達を騙すことはできなかったのか、楓の様子を見て三人とも少し頬を緩めて穏やかな笑顔で楓のことを見ていた。
「じゃ、そのために頑張らないとね!時間もないしこのまま王城に先に向かおうか。ミル達はナビが転移してくれるだろうからね。楓くんは後のこと頼むね」
「了解。じゃあな、ルーナ、ヒストリア。可愛くなってこい」
「あぁ、じゃあ、また後で」
「可愛くなってくるね?」
ルーナとヒストリアは最後に楓の頰に軽くキスをしてから日向の元へと向かった。
あまりにも急な行動だったために楓はリアクションを取ることができずに無言のままルーナ達のことを眺めるだけとなったが楓も、もちろんルーナ達も若干頰が赤に染まっていたのでどちらも先ほどのキスで何も感じなかったと言うわけではないだろう。
「あ!ズルイ!私も!」
そんなルーナ達のキスを見ていた日向は自分も!と言って楓の頰…ではなく唇に自分の唇を持っていき、しっかりとキスをしてからルーナ達と一緒に王城の方へと転移して言った。
流石、し慣れているというか普段からキスなどのそういうやりとりは多いので日向はほとんど抵抗なく楓にキスをしていた。
最後には少し悔しそうにしているルーナとヒストリアの顔が見えたがどうせこれから嫌という程できることなので楓はそのまま特に何もせず日向達が転移する様子を手を振りながら見送るのだった。
「さて、俺もミルのお父さんに会いに行くか…っと、その前にアル達にも報告しとかないと…」
「ん?呼んだ?」
楓が最後まで言う前にアルとルシフェルは面白そうな顔をしながら闘技場まで転移してきた。
アル達が来たことによって女性ファンが大きく湧いたのは当然のことだろう。なにせ、楓は世界でもトップクラスの美女を今日で七人も囲っているのに対してアル達はまだ一人もそう言う噂は立っていない。
普通に考えて一般の女性ならば、そんな自分よりもめちゃくちゃ可愛いお嫁さんが多い楓よりも、アルやルシフェルの方が結婚相手としては都合が良く、必然的に人気が上がって行くのだ。
そうはいっても、楓は楓で普通に人気があるのだが、今はアル達が急にやって来たことによってそれ以上の盛り上がりを見せたのだ。
「はて、俺はお前達に転移魔法を教えた覚えはないが?」
「教わってなくても使えるようにならないとね。楓に頼りっぱなしって言うのも情けないでしょ?」
「だな。我も魔眼をもう少し有効活用できるように現在試行錯誤中だ。そのうち一泡吹かせてやるから覚悟しておけよ?」
楓の素朴な疑問にアルとルシフェルはそう自慢げに答える。
こういうところはさすがドラゴンや魔王と言ったところか向上心が半端ない。楓としても、仲間が強くなってくれるのならば自分の出番が少なくて済む場面が多くなってくるので非常に喜ばしいことである。
「ってことはアル達も俺の試合を見てたな?」
「バッチリ楓が負けるところまで見てたよ」
「なら話が早いな。二人とも気づいただろ?」
「最初は驚いたけどね。まぁ、二人がいまの地位を降りたいと言うのもしょうがないんじゃないかな。時間の問題だっただろうしね」
「我としては今まで何回か模擬戦をしてきたカエデがなぜ気づかなかったのか疑問に思うがな」
「しょうがないだろ。今回はきっとルーナ達も全力で戦ったんだろう。だからわかったんだ。そもそも、…だと予想できるか?そんなこと全く考えてなかったから俺も詳しく二人のこと見てなかったんだよ」
「ってことは確認しに行くのかい?」
「あぁ、きっとミルのお父さんは知ってて2人を起用している。ちょっと事情を聞いてくるから後のこと頼むわ」
「「了解」」
アルとルシフェルは声を揃えて返事をする。
楓は2人に後のことを頼むと、日向達にバレないように転移魔法を使用してバルバトスの元へと向かうのであった。




