デート 1
「これより、第一回楓くんと誰がデートをするのか会議を始めます」
「「「「お願いします」」」」
「何やってるんだ?」
先ほど、楓は蓮と素晴らしい兄弟愛を披露して、憂いも完全になくなってウハウハ状態だったのだが日向たちは楓の部屋に戻ってきた瞬間一気に険しい顔つきになり5人がおもむろに椅子に座るといきなり日向がそんなことを宣言し始めた。
ちなみに楓は今全員分の紅茶を入れている途中である。
いつもはエリスかミルあたりが率先してやってくれることなのだが今は会議に参加しておりそれどころではなさそうだったので楓が6人分の紅茶を入れる羽目になっているのである。
当然の様に抜けて行ったアルとルシフェルには楓もそこ迄驚く事ではなかった。
きっと、今頃2人でホテルの中で日本で買ったお酒を飲んで楽しんでいる事だろう。先程楓の耳にそう言う2人の言葉が聞こえたので間違いない。
「楓くん!良い所に来た!今日は誰とデートしたい?」
「い、いきなりだな。んー、全員としt…」
「人数が多いと独り占め出来ないのでダメです」
楓が意見を言おうとすると最後迄言う前にミルに却下された。
それも、このミルの意見は全員同じ様でミル以外の4人も肯定する様に首を縦に振っている。楓としては誰とデートしても絶対に楽しいと確信出来るし楓は本心から5人全員と行きたいと思っているのだがそう簡単にはいかない様である。
まぁ、こんな可愛い子5人を連れて街なんて歩いたらいくら認識阻害がかかっていようとも問題なのは確かなので楓もここは素直に日向達の会議の結果に委ねる事にした。
「はーい。私は昨日祝結婚を果たしたナビに1日だけ譲ってあげるのがいいと思いまーす。私達は前に1人ずつデートしてるんだしナビも1日位カエデを独り占めする機会があっていいと思うの。明日からは公平に会議をするとして今日はナビに譲ってあげましょう?」
ルミナは手をあげてそんな事を言うのであった。
ナビは一人びっくりした様な顔をしてルミナの意見を聞いていたが他の3人はそうでもなく、むしろそれが当然だと言った様子である。
「い、いいのですか?」
「むしろ、当然の権利ですね。何なら1泊2人で過ごして来てはどうですか?私達はもうカエデ様にして貰ってますがナビはまだでしょう?」
「そうですね。ナビも旦那様と最後まで楽しんでくるといいです。私達は今日だけは我慢します。ね?」
ミルは最後に楓を含める全員に確認をとった。誰も反対意見はないようで今日1日は楓とナビのデートと言う事になった。
「あ、ありがとうございます」
「みんな一緒に楓くんの奧さんになったんだから遠慮はいらないよ!」
ナビが、感極まったのか涙を浮かべながら他の4人にお礼を言っていたが日向が遠慮はいらないからとナビを抱きしめる。
この時だけ、楓も思わず涙が少し出そうになったがグッと堪えて少しだけ笑みをこぼすのであった。
「ささ、そうと決まればナビのコーディネートをしないと!ほら、楓くんは下で待ってて!」
「了解、ナビ俺は下で待ってるから」
「はい、みなさんお願いしますね」
楓はこれからナビの服装決めをすると言う事で部屋を退出し1階のリビングでナビが終わるのを待つのであった。
「ナビとデートか…今更だが結構緊張するな。」
何せ、楓が異世界に転移してから一番世話になったと言っても過言でない相手である。楓の心の中の事も殆ど把握されているだろうしナビ相手には楓も隠し事は出来ない。
異世界に転移して最初は楓も自分に世界を滅ぼしかねない力が手に入ったりクラスメイトがクズなのばっかりだったりで軽くパニックになっていたのもナビには知られている。
昨日、ナビが蓮や春菜に啖呵を切って楓を守ってくれたのも楓のトラウマを人一倍ナビが分かっていたからだ。そう思うと楓も少し恥ずかしくなってくる。
「何せ、最初はスキルだったからなぁ」
「ナビさんの事?」
「お、蓮か。あぁ、ナビって最初俺のスキルの一部で俺のサポートをしてくれたりこの力を制御してくれたりしていたんだ。その時は多分ナビも自我はなかったんだろうけどナビも成長したんだと思う。そのうち自我を持つ様になって、俺の事を好きになってくれてさ」
「兄貴も幸せ者だな。はい、コーヒー」
「サンキュー」
蓮は楓の分のインスタントコーヒーを作ると楓の前に座る。
楓もナビの着替えが日向達のせいで時間が掛かる事が分かっていたのでしばらく蓮と話そうと話を続ける。
「それより、春菜は?」
「彼女は…その、兄貴を苦しめるって言ったら喜んで彼女役を引き受けてくれたんだ。ごめん」
「もう気にしてないよ。それより良かった。蓮があいつに搾り取られてなくて」
「それは、兄貴の時に知っていたからね。彼女には一文たりともお金を払ってないよ。昨日、あの後春菜さんから本当に付き合わない?ってメールが来ていたけど丁重に断っておいたよ」
「それが賢明だな。俺達男では女子には敵わないからな」
楓はそう言ってコーヒーを飲みながら少し笑う。春菜の事は悪い意味で敵わなかったが日向達にもいい意味で楓は敵いそうにないなと思っている。
1人相手でも勝てないのにそれが5倍だ。楓に戦闘面以外で勝ち目はない。
蓮も楓のその事に気が付いたのか一緒に笑ってコーヒーを飲む。
とても、昨日迄喧嘩?をしていた仲とは思えないがきっと兄弟とはこういうものを言うのだろう。
楓は蓮の笑顔を見ながらそんな事を思うのであった。




