魔王召喚
「我を召喚したのは貴様か?」
楓の召喚魔法が終わると、そこには見るからに魔王といった姿の男がいた。
髪の色は楓と同じ白色。額には二本の角が存在しているがそれ以外は人間と変わった所はない。
魔王というだけあって、かなりがっしりしている。身長は180センチは優にありそうだ。
見た目はアルより少し歳上だ。どうせ見た目だけだろうが…
楓が異世界の魔王を召喚した事によって楓達の周りには不穏な空気が流れていた。
というか魔王が意図的に楓に向けて威嚇を放っていた。
「俺は楓。よろしく頼む」
そう言って楓は魔王に向かって握手を求める。
「貴様、我は魔王だぞ?」
「知ってる。だから召喚したんだ」
魔王は何か楓に向かって攻撃を仕掛けたらしいが、楓は全く効いた様子はない。
「ふ、ふはははっ。まさか我の魔眼が一切効かないとは。いいだろう。我の名はルシフェル。よろしく頼む」
ルシフェルはそう言って楓の手を握る。
「ほ、本当に魔王を召喚した!?」
ルミナは楓達の話を半信半疑で聞いていた為、本当に魔王が出て来て戸惑っている。
「それにしてもこの世界は化け物だらけなのか?この中で我の力は精々3番目。そこの男も只者ではなかろう。
それにここにいる女が全員で我に立ち向かってきたら我は勝ち目がなさそうだ」
「多分そんな事ないよ。ここがおかしいだけだ。僕はアル。伝説龍だ。よろしくね」
アルはそう言って楓と同じ様にルシフェルに握手を求める。
「な!?カエデはドラゴン迄使役しているのか!?カエデは一体何者なのだ?」
ルシフェルはアルと握手をしながらも驚き楓の方を見る。
「その辺は中で話そう。ほらルミナもいつまでも口を開けてないで中に入るぞ」
楓はルミナが未だに固まっていたのを見て苦笑いをしながらそう言って中に入って行く。
『意外と物分かりのいい魔王ですね』
だな、しょっぱなから暴れられたら面倒だったが意外と状況判断能力が高いらしい。
瞬時に自分の立場を理解して力関係も理解していたからな。
楓は隣で不思議そうにしているルシフェルを連れながらそんな事を考えていた。
楓はいきなり暴れられたら困る為、クランハウスや庭に強力な結界を張って暴れられても何とか出来る様に準備をしていたがそうはならなかった。
力を持っている魔王だけあって意外と冷静だ。
一度、楓達は会議室に戻りエリスに紅茶を入れてもらって今は楓、日向、ミル、ルミナ、アル、ルシフェル、エリスの七人でテーブルを囲い互いに情報を交換している。
「ふむ、そういう訳か」
「協力してくれるか?嫌なら元の世界に返してやるが…」
「いや、こちらからお願いしたい。元の世界では皆我の機嫌を伺うばかりで正直退屈しておったのだ。ここでは我も一人の仲間としてやっていけそうだからな」
「違うよ!家族だよ!」
ルシフェルが楓の仲間になりたいと言ったが日向がそれを遮って自分たちは家族だと言った。
「そうか、家族か。悪くないな。ではカエデ達の家族としてよろしく頼む」
ルシフェルはどこか嬉しそうにそう言ってみんなの前で挨拶を済ますのであった。
「それより、ルシフェルは意外と冷静だったが魔王ってのは意外と穏やかな性格の持ち主なのか?この世界でも全く魔族が攻めてこないし」
「いや、言ってはなんだが我は特別な方だろう。我の世界の歴代の魔王もかなり好戦的だったと聞く。今頃我が姿を消したのをいい事に魔王の座を奪い合っている事だろう」
「っていう事はこの世界の魔族達ももしかして?」
ミルはルシフェルにそう予想立てて質問する。
最初の印象が良かったお陰か誰一人としてルシフェルを拒む者はいなかった。
ルミナも驚いてはいるものの反対している訳ではなさそうだ。
「多分だが今は領土拡大よりも先に魔王の座を奪いあっているのではないか?」
ルシフェルは今の魔族の事をそう結論付けた。
魔王がそういうのだから間違いないのだろうが、もしこの世界の魔王が決まった時は面倒臭い事になりそうだと楓は心の中で思った。
「それより、ここにいる女は皆楓の妻か?カエデもやるな」
「もって事はルシフェルもか?」
「あぁ、一人いたが既に天へと旅立った」
「すまない」
楓は悲しそうにルシフェルへと謝った。もし、日向達がいなくなったら100パーセント発狂するだろう。
愛する者がいなくなる悲しみは想像しただけでも辛いのが分かる。
「謝る必要はない。我は生涯妻だけを愛すると決めてるからな。楓の妻にちょっかいはかける心配はない」
最後にルシフェルは笑いながらおちょけてこの話は終わった。
「それで、ルシフェルの力ってなんだ?出会い頭俺に何かした様だったが…」
「我は魔眼の王と呼ばれていてな。自分で言うのもなんだがかなりの魔眼を持っている。基本的にどこでも戦えるぞ」
「魔眼か…新しいな」
話はルシフェルの魔眼の話になる。
ルシフェルも自分の魔眼にはかなり自信があるのか自慢げに魔眼について語っていた。
「楓くん、それでメイドさんの護衛は?」
「あ」
「どうかしたか?」
楓とルシフェルが魔眼の話に熱中していると日向が横から本来の目的を楓に確認する。
楓はルシフェルとの話に熱中しすぎて忘れていたのか先程のルミナと同じ様に素っ頓狂な声を上げる。
「そ、そうだった。ルシフェルさっき話したんだが昨日の話でな」
「そう言う事か。我に護衛のアテがあるか聞きたかったのだな。こいつならどうだ。セバス」
ルシフェルはそう言って名前を呼ぶと後ろから影がモワモワと出て来てその中から執事らしき人物が一人出てくる。
「ご主人様。どうかされましたか?」
「ここにいるのは我の新たな家族だ。セバスにもここで働いてもらおうと思ってな」
「なんと、ご主人様に私以外で話せる者が出来るとは。感謝いたします。私の名前はセバスです」
セバスと名乗った男性は見た目は60歳前後でこれまた白髪だが全く弱そうに見えない。
「楓です。よろしくお願いします。それでお願いなのですが…」
楓は再度メイドの護衛についてセバスに相談してみる。
「それなら私にお任せください。エリス様以外のメイドに影のものを付けましょう。カエデ様のメイドに何かあれば私がすぐに駆けつけられるのでご安心ください」
「セバスはこう見えても我の次に強いのでな。エリスと同じ位だな」
「それは頼もしいな。セバス、よろしくな」
「お任せ下さい」
ルシフェルが太鼓判を押すので大丈夫だろうと楓は安心して任せる事にした。
その後は、セバスを含めた全員で親睦会と言う名目で楓が昼食を全員分用意したのだがこれにはルシフェルも、そしてセバスでさえ涙を流して食べていたのであった。




